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リコー、第16次中期経営計画目標を為替の影響で修正

2009年度を世界展開元年としてIKON効果に期待

代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏
 株式会社リコーは3月13日、2010年度を最終年度として取り組んでいる第16次中期経営計画について、その進行状況や今後の方針などについて明らかにした。

 代表取締役社長執行役員の近藤史朗氏は、「2008年度は、世界的な経済環境の悪化と、構造改革効果の刈り取りの遅れにより、減収減益の見込みとなる。今後、狙いの事業拡大と構造改革の加速により、早期に収益改善を図る」とし、2010年度の目標としている連結売上高で2兆5000億円、営業利益で2500億円については、「為替見直し後で、売上高2兆3000億円、営業利益1700億円とした。下方修正ではなく、物差しをあわせたもの。無謀とも見えるかもしれないが、掲げた旗は降ろさない」と語った。

 当初計画では、1ドル105円、1ユーロ155円で算出しているが、為替の見直しで、1ドル90円、1ユーロ120円としている。

 また、「2009年度は世界展開の元年になる」として、昨年買収したIKONによる欧米での販売強化、米IBMとのソリューション分野におけるグローバルでの提携などの効果も業績回復に寄与するとの見通しを示した。


リコーグループの長期ビジョン 第16次中期経営計画の基本的な考え方

第16次中期経営計画の目標値 2010年度の業績目標値

5つの基本戦略
 2008年度からスタートしている第16次中期経営計画は、IPS(InfoPrint Solutions,Inc)の買収、Danka欧州の買収、開発拠点の統合など第15次中期経営計画で仕込んだ取り組みの刈り取りのほか、効率化の推進、さらなる成長を掲げ、「狙いの事業領域でトップになる」「環境経営を強化、加速する」「Ricoh Qualityを確立する」「新しい成長領域を創出する」「グローバルブランドを確立」といった5つの基本戦略に取り組んでいる。

 「狙いの事業領域でトップになる」としては、画像&ソリューション事業分野において、IKONの北米を中心にした400拠点以上の販売・サービス網を利用した販売基盤の強化、国内におけるOperius展開の加速や米IBMとのグローバルでの戦略的提携といったソリューション展開の強化、DPO(ドキュメント・プロセス・アウトソーシング)/BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)分野におけるグローバル展開におけるサービス事業の強化をあげ、PP(プロダクト・プリンティング)事業分野においてはRICOH Pro C900の市場投入、今年1月にサービス部門を含めた統合が完了したIPSなど、積極投資による市場拡大に取り組む。

 「IKONの買収によって、10~12月のシェアが23.4%から27.6%に増えるなど、早くも成果が出ている。また、Operiusでは、136社のパートナーと連携しており、Operius連携ソリューションは41モデルに拡大している。米IBMとの提携では、DSMS(ドキュメント・セキュリティ・アンド・マネジメント・サービス)を共同で展開するほか、IBMのTivoliと当社のMFPを連携させたサービス提供も行っている」(近藤社長)と成果を示した。

 また、RICOH Pro C900については、「こうした経済環境であるため、販売台数が急激に増えているわけではないが、カラーとモノクロ印刷が混在したジョブによってワークフローが大幅に改善したという声や、年賀状を1日4万3000枚出力したが、1枚の紙づまりがなかったなど、高画質、ワークフローの改善で高い評価を得ている」とした。

 さらに、「カラー連帳分野においては、他社は前年比5~10%の減少だが、当社のIPSは9%増となっている」と、好調ぶりを示した。


 「環境経営を強化、加速する」では、「感光体技術を太陽電池に利用できるのではないかといったように、リコーが持つコア技術が、環境に生かせることをあらためて認識している。ここをしっかりと加速してきたい」として、有機や無機の材料技術、メカトロや光学といった画像形成技術、生産プロセス技術、IT技術を、省資源、省エネ、創エネなどの分野に展開していく姿勢を見せた。

 「コピー機を売る会社ではあるが、ペーパーレスを促進するなど、ビジネスにはマイナスになっても、環境経営という観点から、CO2削減量見える化プロジェクトとして、お客さまへのお役立ち活動を開始している」とした。

 「Ricoh Qualityを確立する」では、市場調査会社の調べで、カラー複写機、MFPで、顧客満足度ナンバーワンを2年連続で獲得したこと、コンパクトデジタルカメラでも顧客満足度を獲得したことを示し、「選んで安心、使って満足、使い続けて感動という製品を出し続けていきたい。顧客満足度では、昨年は5冠だったものが、2冠となっており、その点では反省もある」などとした。

 「新しい成長領域を創出する」としては、PP事業においては、POD(プリント・オン・デマンド)、トランスプロモおよびDPO、BPOに力を注ぐほか、ソリューションサービス事業では、グリーンソリューションにおけるTCO削減と環境負荷削減の両立、ITソリューションではIT Keeperサービスの開始、さらにはITアウトソーシングの強化を掲げた。そのほか、リコーバリューによる新たな顧客価値創出として、ポイントカードなどに利用されている書き換え可能なリライタブルシートの「RECO-View」への取り組み、コンシューマ向けオンラインストレージサービスである「quanp」の利用促進、環境技術開発のほか、フォトニクス事業などのグループ協業による新事業展開を掲げた。

 「グローバルブランドを確立」では、IPSやIKONなどにより、グループ合計で11万人の社員規模になったこと、タイ新工場、東北、沼津での新プラント建設、日米欧のITシステムの統合などに取り組むほか、ニューヨークのタイムズスクエアのエコ看板設置や、全英女子オープンやLGPAリコーカップでのスポンサー活動などをあげた。


ドキュメントソリューション、ビジネスソリューションに注力することで新たな事業領域を拡大する
 近藤社長は、「自動車産業に例えれば、リコーは車を売り、ガソリンを売ってきた。だが、これからは運転の仕方を教え、運転を代行することまで提供することになる。ハードを捨てることはないが、『もの』から『こと』へとビジネス強化を図る。これまでのスタンドアロン機器、ネットワーク対応機器、プリンティングソリューションに加え、ドキュメントソリューション、ビジネスソリューションに力を注いでいく。これまで、これを示す図を、桜井ハウスと呼んできたが、最近は近藤ハウスと呼んでいる。4階、5階の部分を強化していく」とした。

 また、「当社は、人を切って収益を高めるということはしない。利益を作るリソースへと人員シフトを行い、効率をあげていく。その点では、人の再配置はやっていくことになる。経費削減の話をすると、そこを削減したら目標の数字を達成できないという人が多い。これまではそれが通用してきた。だが、私は、そのときには、ほかの人に頼むからというようにしている。これまでの慣例や、長年の慣れといったことを許さないカルチャーにしていきたいと考えている。世界規模で人員の再配置をやらないといけない時期にきている。ここ数年、事業領域の拡大に向けて、体制、インフラを拡張してきたが、グループ全体が十分にインテグレートされていないという課題がある。500億円のリソースを創出することを目指し、ITを活用した効率化、スリム化を進める一方、筋肉質な体質を目指す」とした。

 また、IKONに続く買収については、「今後も、事業戦略上、必要があれば、M&Aを考えている。だが近々、具体的にあるわけではない」(専務執行役員経理本部長の三浦善司氏)とした。



URL
  株式会社リコー
  http://www.ricoh.co.jp/

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( 大河原 克行 )
2009/03/13 13:11

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