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富士通とマイクロソフト、エンタープライズ市場でのソリューションビジネスで協業


 富士通株式会社とマイクロソフト株式会社は3月26日、日本市場でのソリューションビジネスに関する協業を開始すると発表した。富士通にはWindowsソリューションに強い子会社・関連会社もあり、グループ全体では広く手掛けているが、今回は、本社が直接担当するような大企業が対象。グループ全体のリソースを有効に活用しつつ、主に、エンタープライズ市場において、マイクロソフトのミドルウェアビジネス拡大を目指す。

 具体的な取り組みとしては、2008年12月、富士通社内に、プロモーションなどの支援を行う「MSソリューション推進室」と、技術支援を担当する「MSミドルウェア技術センター」をそれぞれ設置。マイクロソフト側の富士通ビジネス本部と連携しながら、最適なソリューション展開を行える体制を整えた。現場レベルでも、商談獲得からシステム設計・構築、サポートといった各フェーズでジョイントチームを作り、共同で対処していくという。特に、サポートのジョイントチームではマイクロソフトに富士通のサポート要員が常駐することになるが、「当社のサーバーサポート部隊の中に他社の技術者が常駐するのは、日本では初めて」(マイクロソフトの執行役 ジャパングローバルパートナー統括本部担当 前田浩氏)だという。

 両社で共同展開するソリューションとしては例えば、「情報活用によるワークスタイル革新」「文書管理のコンプライアンス強化」「基幹システムの周辺BI」といったものが考えられるとのことで、顧客の課題にあった商品・サービスのパターンを開発・提案してく計画。富士通の経営執行役 マーケティング本部長 中山恵子氏は「これまでのエンタープライズビジネスではOracleが中心だったが、SQL Serverでの基幹システム構築にも力を入れるし、SQL ServerはBI的な機能もあり、情報活用の提案もできるだろう」と、具体的な例を説明した。また富士通では、SIのみならずサービスについても商品化を進めるとした。

 あわせて、こうした展開に必要なSEの体制も強化を図る。現在、マイクロソフト認定資格の保有者はOSを中心に約2000名(グループ企業を含む)存在するが、これを3年間でさらに2000名増やす予定で、「そのために、保有スキルに応じた育成プログラムの共同開発や、eラーニングの全社展開を行っていく」(中山氏)とのこと。同時に、Oracle Databaseなど他製品の資格保有者のマルチスキル化も推進していくとした。


富士通の経営執行役 マーケティング本部長 中山恵子氏
 なお、富士通がマイクロソフトと提携を拡大した背景には、いわゆるIAサーバー市場の広がりがある。富士通ではこれまで、基幹業務、ミッションクリティカルの分野ではUNIXソリューションを主に展開していたものの、IAサーバーがこうした分野でも採用されるケースが多くなってきている。こうしたIAサーバーとの組み合わせでは、Windowsプラットフォームは無視できない存在であり、富士通でもこの領域への取り組み強化が求められていたことから、今回の協業に踏み切ったという。

 中山氏はこれについて、「マイクロソフトのミドルウェアは、世間ではデファクトスタンダードになっているが、当社のSEはどちらかというと、マイクロソフトソリューションの提案をそれほど積極的にやってこなかった。これまで当社が入り込めていない領域を開拓することが狙いだ」と述べ、関連ミドルウェアを用いたソリューション領域で、3年間に500億円を売り上げたいという目標を示した。

 また、IAの状況についてはマイクロソフトの前田氏も、「x86ビジネスは昨今のテクノロジーの進展により大きなものになっている。今回の協業は時代の要請に応えるものだ」とコメント。「顧客が維持費用の低減にウエートを置いている中、当社ではグローバルに『Save Money』というキャンペーンを展開。具体的なソリューションも多数そろえているが、これにパートナーの得意技を加えて、富士通ならではの『Save Money』をやっていただこうと、話を進めている」とも述べた。


マイクロソフトの執行役 ジャパングローバルパートナー統括本部担当 前田浩氏
 マイクロソフト側ではこのように、あくまでも製品ありきだった協業から、ソリューション領域へ幅を広げることにより、顧客満足度を高めたい狙いがある。前述のように富士通の要員を受け入れてジョイントサポートの体制を作ったのもその一環。前田氏は「製品の協業はもう済んでいるので、SIの生々しいところに一歩踏み込んで協業を深めるのが今回の大きなポイントだ。当社の製品を基幹業務で使っていただくためにキーとなるのはサポートであり、この能力を飛躍的に上げるために、日々SIをしている富士通の要員と当社のサポートチームが1つになって進めていく」とした。

 また、パートナーとの単なる“取引”を、“取り組み”へ進化させることも目的とのこと。前田氏は、「本当のアライアンスは、各パートナーでそのベンダーの製品が事業として成り立たないと生まれない。事業が成り立つのであれば投資が可能になり、さらなるサポートの充実などにつながっていく。単なる“取引”であれば、これは実現しない」という点を指摘。その上で、「サポートビジネスは毎年ビジネスが累積するものであり、そこから得られる収益を投資に回していただければ、良い意味での循環につながる」と述べ、再投資が可能な“取り組み”に富士通との関係を進化させることで、パートナービジネスのいっそうの拡大につなげたい意向を示した。

 「当社はどちらかといえばB2Cで大きくなってきたが、2005年にSQL Serverのアーキテクチャが見直されてエンタープライズでも十分使えるようになった。またExchange Serverも、日本でナンバーワンであるが、米国の半分程度であり、まだまだ伸びる余地はある。これを伸ばすには、パートナービジネスを成功させるしかないだろう」(前田氏)。



URL
  富士通株式会社
  http://jp.fujitsu.com/
  マイクロソフト株式会社
  http://www.microsoft.com/japan/
  プレスリリース
  http://pr.fujitsu.com/jp/news/2009/03/26-1.html


( 石井 一志 )
2009/03/26 18:09

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