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LiveCycleで社内プロセスを見直しコスト改善を-米Adobe上級副社長

Open Screen Projectで将来は携帯電話でも利用可能に

 LiveCycleのビジネスが好調だ。ワールドワイドで3億ドル規模のビジネスにまで成長している。企業で普及が進んでいるPDFの活用手段として浸透しているという。また、Flash/Flexとの統合により、LiveCycleの利用シーンが広がっている。今回、LiveCycleの現状と今後について、来日した米Adobeビジネスプロダクティビティ部門担当 上級副社長兼ゼネラルマネージャーのロブ・ターコフ氏と、アドビシステムズ株式会社 代表取締役社長のクレイグ・ティーゲル氏に話を伺った。


米Adobeビジネスプロダクティビティ部門担当 上級副社長兼ゼネラルマネージャーのロブ・ターコフ氏(左)と、アドビシステムズ代表取締役社長のクレイグ・ティーゲル氏(右)
―LiveCycleですが、ワールドワイドおよび国内での最新動向を教えていただけますか。

ターコフ氏
 第1四半期の動きを見ていると、アドビのプロダクトの中でも一番明るいものといっていいでしょう。伸び率も前年比で20%を超えています。ワールドワイドでの売り上げは年間3億ドル規模にまで成長しています。EMCがDocumentumを買収したときの規模がこれくらいだったので、大手といえるレベルといえます。

ティーゲル氏
 厳しい経済環境にありますが、日本でも順調にビジネスは伸びています。内部プロセスを見直してビジネスコストを削減し、効率性を改善できる点が評価されていますね。PDFの認知率が企業で高まっていることも背景としてあります。今後は、PDFを作成だけでなく、もっといろいろなことで使えることを認知していただく必要があります。


―PDFだけでなく、FlashやFlexとの連携機能が強化されていますね。

ターコフ氏
 はい。LiveCycleはPDFによりビジネスのワークフローを自動化する製品として生まれました。その後、サーバー側でPDFを作成する機能を追加したり、DRM機能を追加したりと進化し、Flexとの連携により、AIRアプリケーションからも利用できるまでに進化しています。

 LiveCycle Data Servicesというフレームワークを利用することで、FlexやAIRなどで作成したRIAからLiveCycleのワークフローを利用できます。今後、AIRアプリケーションからのアクセスはますます増えていくことでしょう。


―AIRアプリケーションとの統合などをみると、LiveCycleがどの方向に今後進化するのか気になります。

ターコフ氏
 LiveCycleは、紙ベースのワークフローを電子化するという考えがベースとなった製品です。一般的な企業のビジネスプロセスで、紙文書のワークフローは欠かせないものです。これをPDF化し、電子フォームに進化させることで、ビジネスプロセスそのものを自動化できるようにするのがLiveCycleといっていいでしょう。

 たとえば、米国では税金の申告書としてForm 1040というものがあります。この申告書に必要事項を記入して提出するのですが、わかりにくいため誤記入が多く、その対応だけでも大変な作業になっていました。このForm 1040をPDF化し、LiveCycleと連携することで、入力フォーム上にガイド表示を行うなど、入力しやすい環境を整えることができました。なおかつ、一貫した形でデータを保存することができます。

 これは既存の紙文書をPDF化した例ですが、さらに発展させてAIRアプリケーションから直接入力するような使い方も可能です。

 重要なのは、LiveCycleは紙文書の単純な電子化から、PDFを使った入力フォーム、そしてAIRアプリケーションなど、これらすべてをサポートできるということです。今後、PDFの入力フォームとしての用途が増えるだけなのか、AIRアプリケーションといった使い方が増えるのかはわかりませんが、LiveCycleを使っていれば、どちらにも対応できるのです。

ティーゲル氏
 日本でのLiveCycleの使われ方をみていると、よりインタラクティブな要素が重視されていますね。特に、カスタマーサービスとして、満足度を高めるようなアプリケーションで利用されています。

 日本国内では、企業が抱える課題に共鳴するようなソリューションを提案していきたいですね。アドビとして、なにができるのかを示していくことが重要だと考えています。


―Acrobat単体でもフォーム機能は強化されています。LiveCycleを使わなくても、Acrobatだけで済んでしまうようにもおもえますが。

ターコフ氏
 Acrobatはワークグループレベルでの利用を想定して機能強化を図っています。PDFフォームの作成機能も、ビジネスプロセスを意識したものというよりデータセントリックなものです。ワークグループで完結する使い方ということです。

 これに対して、LiveCycleはエンタープライズレベルでの利用を想定したものです。ワークフローも構造型となっており、企業全体で使われることを意識しています。

 アドビとしては、PDF作成でとどまっている企業ユーザーが、PDFが持つ機能を使って、イノベーションにつながることを目指しています。そのためには、まずAcrobatを使っていただきたいですね。また、Flashと組み合わせることで、さらなる可能性が高まることも理解していただきたいです。


―日本の場合、携帯電話でもPDFやFlashが利用できます。携帯電話からでもLiveCycleは利用できるのでしょうか?

ターコフ氏
 残念ながら現時点では対応していません。Acrobat ReaderもFlashも携帯電話向けでは機能制限をしているからです。また、LiveCycleの今後の開発スケジュールにおいても直接フォローする予定はありません。

 その代わり、さまざまなデバイス上でRIAを体験できるようにするOpen Screen Projectを立ち上げていますので、こちらで対応できると考えています。Open Screen Projectの成果として、将来携帯電話でAIRが動作するようになれば、LiveCycleとの連携は可能になります。



URL
  アドビシステムズ株式会社
  http://www.adobe.com/jp/


( 福浦 一広 )
2009/04/03 14:42

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