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JAISTの構築事例に学ぶ“最先端”のNASシステム


情報科学センター教授の松澤照男氏

JAISTが構築した高速ファイルサーバーシステムの構成
 国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学(以下、JAIST)は4月8日、同校の情報環境システム「FRONTIER(FRONT Information EnviRonment)」の高速ファイルサーバーシステムの構成事例を発表した。

 情報科学センター教授の松澤照男氏は、「JAISTは1990年に設立した大学院大学で、トップレベルの先端研究を行うなど、教育重視の大学院となっている。出身学部や国籍を問わず、多様な学生を受け入れており、研究自体も国際的な活動を行っている。また、学校名にもあるように、先端的な科学技術を行う場として、情報環境の構築のサポートも行っている」と、先端的な研究を行うためのインフラ作りに力を入れていると紹介した。

 JAISTが今回構築した高速ファイルサーバーシステムは、デル株式会社のiSCSI SAN「Dell EqualLogic PS5000」を59台組み合わせたもの。NASヘッドとしてデルのPowerEdge 2950を、OSにはSolaris 10を、HAソフトウェアにはNECのCLUSTERPRO Xを採用している。

 特長は、カスタマイズ版のSambaを採用している点。NFSv4に対応したオープンソースソリューションテクノロジーの「Samba3.2 for Solaris10」を採用することで、CIFS/NFS間で透過的アクセス権限の設定が可能になっている。また、Kerberized NFSに対応しており、NFSアクセス時のセキュリティ向上も実現している。


情報科学センター助教の宇多仁氏

NASシステムに求めたもの
 情報科学センター助教の宇多仁氏は、「JAISTは1990年に設立された新しい大学ということもあり、研究室単位でシステムを管理するのではなく、ワープロから超並列計算機まですべてのリソースを集中管理している。このシステムには、日中だけでなく、深夜にもアクセスがあるので、24時間サービスを提供しつづけなければいけない。とはいえ、24時間体制でシステムを監視するわけにもいかないので、高可用性が重要」と、システム全体に求める要件を紹介。「高速ファイルサーバーシステムとして求めたのが、約1500ユーザーの同時利用が可能なこと、信頼性・高可用性を実現すること、安全性を確保すること、そしてマルチプロトコル・マルチOSに対応すること」と、これらの要件を満たすシステムとしてiSCSIを核としたNASシステムを構築したと述べた。

 「ファイルサーバーには、各ユーザーのホームディレクトリを用意しており、さまざまなOSから利用できるようにしている。そのため、WindowsやUNIX、Macなどさまざまな環境から一元的に利用できることが重要。また管理面でも単一のシステムとして動作することを求めていた。近年は既存製品をそのまま選択していたが、その中にはこの要件を満たす製品はなく、トライアルではあったがiSCSIベースのシステム構築にいたった」と、今回、カスタマイズ版Sambaで実現した透過的なアクセス権限の設定が導入のポイントになったと説明した。


EqualLogic採用により柔軟なボリューム構成を実現 OSSのSambaをベースに独自システムを構築 独自システムを採用したことでNFSv4に対応

高速ファイルサーバーシステムの動作イメージ バックアップ用ストレージシステムには非同期レプリケーションで実施 システム構成図

 宇多氏は、「今回、デルのiSCSIを採用したが、当初はパフォーマンスなどで不安はあった。しかし、JAISTでは、最先端の環境を目指すこと、ユーザーに犠牲をしいずにトライアルを行うこと、他の組織のシステム設計の参考となることを、方向性として持っているので、iSCSIでのシステム構築を評価することにした。実際に評価してみると、新技術でありながらも安定性での問題はないこともわかり、パフォーマンスも10万ops/secを超える性能を実現していることから、今回の導入となった」と経緯を説明した。


デル執行役員の郡信一郎氏
 JAISTにiSCSI SANを導入したデルの執行役員 郡信一郎氏は、「外付けストレージの市場は、容量ベースで毎年50%以上の増加をしている市場。その中で、iSCSI市場は急成長しており、市場規模も4年後には現在の10倍になる300億円規模になるとの予測も出ている。デルのEqualLogicは、国内市場において、売り上げ・台数ともにトップシェアを獲得している」と、iSCSI市場での強さを強調。「会社としては、公共機関に対して専任の営業・マーケティングを用意するなど、公共分野に積極的に取り組んでいる。JAISTさまのように、国内の大学・研究機関においてシステムとして導入していただいた事例は多数ある。今回の事例のように、サーバーだけでなく、ストレージという切り口でも積極的に展開していく」と、ストレージ分野から公共部門へのアプローチを強化する考えを示した。



URL
  国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学
  http://www.jaist.ac.jp/
  デル株式会社
  http://www.dell.com/jp/
  プレスリリース
  http://www1.jp.dell.com/content/topics/segtopic.aspx/pressoffice/2008/081022?c=jp&l=ja&s=corp


( 福浦 一広 )
2009/04/08 16:55

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