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64ビットCPUはビジネスをどう変えるのか?!

最終回 -いよいよ普及が始まる-


 最初にインテルのItaniumを発売したのは、2001年のことになる。それから3年、「2004年はいよいよ本格的なx86ベースの64ビットサーバーの普及が本格化する年となる」と、インテル、日本AMD、サーバーベンダー、アプリケーションベンダーは口をそろえる。なぜ、2004年が64ビットサーバーの普及が本格化する年となるのか。


Intel「Itanium 2」 日本AMD「Opteron」

主要ソリューションはほぼ出そろう

 64ビットサーバーの普及が本格化する最大の要因となるのが、OS、主要アプリケーションが64ビット対応となり、ソリューションを構築できる環境が整った点にある。特にItaniumについては、インテルをはじめ、サーバーベンダー、アプリケーションベンダー各社が、「特殊なツール類を除けば、ソリューションを作り上げるのに必要なものはほぼ出そろった」と口をそろえる。

 これは、「インテルでは1998年頃から、1万台近いマシンをソフト開発のためにISVに提供するなど、かなり地道なソリューションをそろえるための活動を行ってきた。ようやく最近になってその成果が出て、主要なソリューションはほぼ64ビット対応となった」(インテル・プラットフォーム&ソリューションズマーケティング本部 エンタープライズソリューションズグループ・平野浩介統括部長)という発言からもわかる通り、地道な活動が実を結んだ結果である。

 32ビットサーバーに比べ、メモリ空間が大幅に大きくなる64ビットサーバーに適したソリューションとしては以下のような分野があげられる。

 (1)科学技術計算
 (2)データウェアハウス
 (3)大規模ERPシステム
 (4)暗号/復元ソリューション

いずれも、規模の大きなソリューションである。


新たな利用領域も見えてきた

富士写真フイルムでも利用されたNECのIA64サーバー「Express5800/1320Xd」
 しかし、それ以外にも、「現在では、そんな巨大なメモリ空間を何に使うのかという議論になるかもしれないが、実は現在のデータベースの使い方は、データをとる場面を制限しているという側面もある。例えば、RFIDのように色々な場面でデータをとっていくといった使い方になってくれば、メモリ利用は大幅に増えていくことになるだろう。その意味で、流通業、またデータウェアハウスといった用途では64ビット搭載サーバーが必要となる」(NEC・コンピュータ事業部製品技術部・高木均・技術マネージャー)という指摘もある。

 また、マイクロソフトでは、「64ビットは特別なものという意識を、ユーザーやISVに持ってもらいたくない。例えば、ファイルサーバーに64ビットサーバーを利用するという例があってもいいのではないか」(サーバープラットフォームビジネス本部Windows Server製品部・藤本浩司マネージャ)と、あえて64ビットサーバーの利用領域を限定しないことが普及のためには必要だと指摘する。

 現在、発表されている導入事例を見ると、カブドットコム証券のオンライントレーディングシステムのデータベースサーバー、富士写真フイルムの「SAP BW3.1」といったいかにも64ビットらしいものだが、導入企業が増えていけば、マイクロソフトの指摘通り、「こんな分野でも64ビットサーバーを利用するのか」という事例も増えていくだろう。そして、そういう事例が増えるのは、64ビットサーバーの普及が進んでいることを裏打ちするといえるだろう。


戦略異なるインテルとAMD

 さて、同じ64ビットといっても、インテルのItaniumと日本AMDのOpteronでは、マーケティング戦略が大きく異なっている。

 「インテルがItaniumで目指したのは、IA32サーバーの延長ビジネスではなく、UNIXサーバーと同じように付加価値の高いビジネスだろう」と言われるのに対し、日本AMDのOpteronは互換性を大きな強みとしている。

 今のところ、両社のCPUを採用しているサーバーベンダーとしては、インテルの方が圧倒的にサーバーベンダーの数が多く、64ビットのネイティブアプリケーションの対応状況としても多い。対してこれまでのAMDは、32ビットとの互換性という特徴を生かして、32ビットサーバーの延長としての導入が多かった。この状況が、サン・マイクロシステムズとの戦略的提携、米国での採用サーバーの増加、マイクロソフトが64ビットOSのベータ版の提供を開始するなど、ビジネスが増加する環境が整いつつあることで、どの程度変わっていくのか、今年度の64ビットサーバーを巡る焦点のひとつといえるだろう。

 こうした環境の変化により、「おそらく、あと1年後に64ビットサーバーの進ちょく状況を取材してもらえれば、状況は一変しているはず」と今回取材したCPUベンダー、サーバーベンダー、アプリケーションベンダーすべてが明言した。

 これまで、64ビットサーバーについては様子見をしてきた日本のユーザーだが、もはや様子見の段階は終わった。発表から長い時間を経て、64ビットサーバーはようやくエンタープライズソリューションの中に定着しようとしている。



( 三浦 優子 )
2004/02/12 00:00

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