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サーバー仮想化で損をしないライセンスの選び方
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サーバー仮想化により物理サーバーを統合すると、運用コストや消費電力の削減などが可能になることは前回紹介した。しかし、これだけを注目してもコスト面では不十分だ。サーバーを運用するには、OSやアプリケーションが必要であり、それらを利用すればライセンス料が発生するからだ。
今回は、サーバー仮想化で避けて通れないライセンスを紹介する。
■ 仮想マシンでも物理マシンと同等のライセンスが必要
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サーバー仮想化で集約しても、ライセンス料は個々に必要
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サーバー仮想化を実際に行ってみると、ついつい余分な仮想マシンを作りがちだ。もちろん、それがサーバー仮想化のメリットではあるが、お金がからんでくることを忘れがちになるものだ。
理解しておかなければいけないのが、サーバー仮想化時のソフトウェアのライセンス料は、物理マシンで利用していたときと同様に、仮想マシン単位で発生するということだ。というのも、ソフトウェアのライセンスは、物理マシンごとに1つのOSが動作することを前提としているため、仮想マシンの場合も、それぞれにライセンス料が必要になると考えられるからだ。オープンソースソフトウェアであれば話は違うが、商用ソフトウェアを使うのであれば、物理サーバーであろうが、仮想マシンであろうが、なんらかの費用は発生する。
とはいえ、これは原則であり、サーバー仮想化が定着しつつある現在、ソフトウェアベンダー各社も柔軟なライセンス体系を導入しつつある。以降、代表的なソフトウェアベンダーのライセンス体系をみてみる。
■ サーバーOSは割安になるエディション選びがポイント
まずは、Windows Server 2008などを提供しているマイクロソフトをみてみよう。
Windows Server 2008の場合、1つのライセンスで物理マシンと仮想マシンの実行をサポートしている。ただし、仮想マシンの実行可能数は、エディションごとで異なっている。
たとえば、Windows Server 2008 Standardの場合、1つのライセンスで物理マシン1台に加え、仮想マシン1台まで実行可能となっている。つまり、仮想マシン2台目以降は別途ライセンスが必要になるということだ。4台の仮想マシン上でWindows Server 2008 Standard環境を構築する場合は、4つのライセンス(仮想マシン×4)を用意しなければいけない。Windows Server 2008 StandardのOpen License価格(インプレスR&Dストアの場合)は8万8000円なので、合計35万2000円のライセンス料が発生する。
次に、Windows Server 2008 Enterpriseをみると、1つのライセンスで物理マシン1台に加え、仮想マシン4台まで実行可能となっている。このエディションを購入すれば、4台までの仮想マシンにインストールして実行できるということだ(4台を超える場合は、別途ライセンスが必要)。Windows Server 2008 EnterpriseのOpen License価格(インプレスR&Dストアの場合)は29万2623円。3台までならWindows Server 2008 Standardを選択した方がお得だが、4台の仮想マシンを実行するならWindows Server 2008 Enterpriseが割安になる。
さらに、Windows Server 2008 Datacenterの場合は、1つのライセンスで物理マシン1台に加え、仮想マシンは無制限に実行可能だ。Windows Server 2008 DatacenterのOpen License価格(インプレスR&Dストアの場合)は1プロセッサあたり29万8532円。ただし、Windows Server 2008 Datacenterは2プロセッサ以上のシステムでのみ利用可能なため、2Wayサーバーにおいて、9台以上の仮想マシンを実行するのであれば、Windows Server 2008 Datacenterがお得になる。実際、Datacenterエディションの販売数は、この1年で3倍に伸びたと同社は説明している。
【お詫びと訂正】初出時、Windows Server 2008 Datacenterをシングルプロセッサ環境で利用可能と記載しておりましたが、シングルプロセッサ環境では利用できません。お詫びして訂正します。
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実行可能な仮想マシン数 |
Windows Server 2008 Standard |
最大1つ |
Windows Server 2008 Enterprise |
最大4つ |
Windows Server 2008 Datacenter |
無制限 |
このライセンス体系は、同社のHyper-V環境はもちろん、VMwareやXenServerといった他のサーバー仮想化ソフトに対しても有効だ。
なお、Windows Server 2003やWindows 2000 Serverなどを物理マシンで実行している場合、Windows Server 2008のライセンスで提供されるダウングレード権を使って、仮想マシンで実行することも可能だ。この場合、Windows Server 2008のライセンス規定が有効になるので、2Wayシステムで9台以上のサーバーを仮想環境で統合する場合、Windows Server 2008 Datacenterを選択するといい。ただし、Windows Server 2008 Datacenterはプロセッサ数でライセンス料が決まるため、2つ以上のプロセッサで構成される物理マシンの場合、価格が変わることを理解しておいてほしい。
では、Linuxの場合はどうだろうか。
レッドハットの場合、最大2CPUをサポートする「Red Hat Enterprise Linux」は、ゲストOSとしてRed Hat Enterprise Linuxを4つまでサポート、CPU数無制限の「Red Hat Enterprise Linux Advanced Platform」では、ゲストOSとしてRed Hat Enterprise Linux Advanced Platformを無制限にサポートする。この範囲であれば、追加費用なしでRed Hat Enterprise Linuxを仮想マシン上で利用できる。なお、Red Hat Enterprise Linux上で別のOSを利用する場合は、別途利用するOSのライセンスが必要になる。また、VMware上でRed Hat Enterprise Linuxを利用する場合、実行する物理マシンのCPU数と仮想マシンの数に応じたサブスクリプションが必要だ。
【お詫びと訂正】初出時、すべてのゲストOSを対象と読める表現となっておりました。正しくは、Red Hat Enterprise LinuxがゲストOSの場合に限ります。
なお、2月にHyper-Vとの相互運用性の検証を行うことがアナウンスされているが、現時点でRed Hat Enterprise Linuxがサポートするのは同社のXenとVMwareに限られているので注意が必要だ。
ノベルの場合、SUSE Linux Enterprise Serverのサブスクリプションを1つ購入することで、同一物理サーバー上でゲストOSとしてSUSE Linux Enterprise Serverを無制限に利用可能となっている。先日発表されたSUSE Linux Enterprise 11では、マイクロソフトとの相互運用性も強化されており、Xenのほか、VMwareやHyper-Vに対応している。
■ マイクロソフトのサーバー製品の場合
マイクロソフトはサーバーOS以外にも、Exchange ServerやSQL Server、SharePoint Serverなど、各種サーバー用ソフトウェアも提供している。これらの仮想環境でのライセンスはどうなっているだろう。
SQL Serverのライセンスは、物理マシンに搭載されているプロセッサ数に応じた「プロセッサライセンス」とサーバー単位で適用される「サーバー/CALライセンス」の2つが用意されている。SQL Serverの場合も、Windows Serverと同様、エディションにより仮想化への対応状況が異なる。プロセッサライセンスの場合、Standardでは仮想マシンで割り当てられたプロセッサに応じて課金されるが、Enterpriseでは物理マシンに搭載されているプロセッサ数を上限とした課金となっている。サーバー/CALライセンスの場合、Standardは実行する仮想マシン分のライセンスが必要だが、Enterpriseは1ライセンスのみでOKだ。
Exchange ServerやSharePoint Serverの場合、企業内で複数実行することを前提としていないためか、仮想環境向けのライセンス体系は用意されていない。
なお、同社のサーバーアプリケーションの多くが、インストール後90日間は別の物理マシンへの移行を禁じていたが、仮想環境で利用する際の利便性を考慮し、制限が排除されている。これにより、仮想マシン上で同社のサーバーアプリケーションを実行している場合、必要に応じて物理マシン間で仮想マシンを移動させることが可能になっている。
■ オラクル製品の場合
オラクルの場合、物理マシンに搭載されているプロセッサ&コア数に応じて課金するProcessorライセンスと、使用するユーザー数に応じて課金するNamed User Plusライセンスの大きく2つのライセンスが用意されている。ここでは、Processorライセンスをベースにみてみる。
オラクルは、仮想化に対しSoft PartitioningとHard Partitioningの2つのポリシーを用意している。Soft Partitioningは、物理マシン上に搭載されているすべてのプロセッサ&コア数をライセンス対象とするもので、Hard Partioningは物理的に分割されたサーバーリソースに応じたライセンス体系となるもの。サーバー仮想化の場合、リソースを柔軟に変更できるということからSoft Partitioningが適用される。
そのため、たとえばクアッドコアプロセッサ×1の物理マシンにおいて、1つの仮想プロセッサを割り当てた仮想マシン上でオラクル製品を利用する場合でも、4コア分のライセンスが必要になる。逆に仮想マシンが利用する仮想プロセッサの合計が、物理マシンが持つプロセッサ&コア数を超えても、物理マシンに搭載されているプロセッサ&コア数分のライセンスで済むということだ。
■ シマンテック製品の場合
シマンテックのSymantec Backup Execの場合、仮想マシン向けのエージェント(VMware Virtual Infrastructure エージェント、Microsoft Virtual Servers エージェント)が製品側で用意されており、物理マシン単位で課金されるライセンス体系となっている。この場合、製品そのものが仮想環境に対応しているので、ライセンスも考慮されたものとなっている。
では同社のウイルス対策製品はどうだろう。Symantec Endpoint Protectionの場合、ノード数に応じたライセンス体系となっており、仮想マシンであるかどうかは区別されていない。そのため、仮想マシンの数だけカウントされることになる。
シマンテックのウイルス対策製品のように、仮想マシン単位で欠かせないソフトウェアなどは、早く仮想化を意識したライセンス体系を導入してもらえると利用する側のメリットは高まるだろう。また、仮想マシンの場合、安易に追加・削除しがちなので、ライセンスの管理が甘くなる面にも注意が必要になる。サーバー仮想化を行う際は、このあたりの管理も意識したほうがいいだろう。
( 福浦 一広 )
2009/03/30 00:00
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