前回に引き続き、米国でWeb 2.0的と呼ばれる企業の担当者の声をお届けします。今回ご紹介するZimbraは、オープンソースのWeb型コラボレーションソフト「Zimbra Collaboration Suite(以下、ZCS)」を提供する注目のベンチャーです。
コラボレーションソフトというとグループウェアを思い出しますが、メール機能にカレンダーやアドレス管理機能を搭載したという感じで、どちらかというとOutlookに近い印象を受けます。実際にZimbraのデモを確認しましたが、Webブラウザのヘッダーが見えなければ、Outlookを動かしているのかと見間違うばかりの驚くべきWebアプリケーションでした。
ただしZCSは、Exchangeと同じ、企業内サーバーにインストールするサーバーソフトであり、社員が使うインターフェイスをOutlookに非常に近いものとしているわけです。
今回は、Zimbraで事業開発を担当しているアンディ・プラウム副社長にお話を伺いました。
■ 大企業にも対応するZCS
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Zimbra 事業開発担当副社長 アンディ・プラウム氏
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ZCSのシステムイメージ
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─本題に入る前に、簡単な自己紹介をお願いします。
プラウム氏
Zimbraの事業開発担当副社長をしてます。Zimbraは社員数が40~50名くらい。CEOのサティス・ダルマラジは元Sun Microsystems、CTOのスコット・ディーツェンは元BEAでCTOを務めた経験があり、経営陣はしっかりしています。
─最近、ZCSの新バージョンを発表したそうですね。
プラウム氏
はい、小川さん(筆者)はMacユーザーのようですが、あなたに適したサービスです(笑)。近々発売するZCSの新版(取材時はベータ2)は、Mac OS X Server上で動作します。カレンダー、コンタクト、メール機能などがMacで問題なく使えます。
─それはうれしいです。企業向けWebアプリケーションは、サーバーもクライアントもMacは無視されがちですから。Intel Macが発表されたことですし、そういったアプローチがもっと増えてほしいですね。
プラウム氏
Mac OS Xユーザーであれば、Apple標準のメールソフトである「Mail」や、カレンダーソフトの「iCal」、アドレス管理の「Address Book」経由でZCSのデータを使うことができます。もちろんOutlookからもできますが、Macの場合は、さらにに「iSync」というデータ同期ソフトにも対応するので、Mac市場には朗報だと思います。
─それはすごいですね。ZCSの機能についてもう少し詳しく教えてください。
プラウム氏
ZCSは、社内全体や部門間で予定や連絡先を共有することができるコラボレーションソフトです。Ajaxを使ってドラッグ&ドロップで項目を移動することもできます。Macだけではなく、Linuxサーバーにも対応するので、多くのお客様に使ってもらえるはずです。
─中小企業向けのサービスと思えばいいですか?
プラウム氏
ZCSにはバージョンが2つあって、中小企業向けのZCSと、大企業向けのZCS Network Edition(以下、ZCS NE)があります。ZCS NEは大企業でも使っていただけると思います。クラスタ化に対応し、Active Directoryもサポートします。Javaで構築されておりスケーラビリティは十分です。
─となると、グループウェア市場を狙うことになりますね。IBMのNotesやMicrosoftのExchangeと競合しますか?
プラウム氏
ZCSは、NotesやExchangeがあまり出てこない中小企業向けですが、ZCS NEはそうなりますね。
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ZCSのWebメール画面
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スケジュール管理画面
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■ Microsoftとの競合は避けられない
─ビジネスモデルはどうなってますか。
プラウム氏
ZCSは基本的にWebからのダウンロード販売をしています。また、パートナー企業と組んでホスティングサービスを行っており、SOHOや創業したてのベンチャーにも提供しています。
ZCS NEは、エンタープライズ市場向けに、販売パートナーにお願いして拡販に務めています。
─ZCSとZCS NEの販売層は、社員数でいうとどのくらいですか?
プラウム氏
500人を境に販売ターゲットが分かれてくると思います。ZCSのメインターゲットは、だいたい30~50名くらいの企業になりますが、ZCS NEは3000人くらいの企業がターゲットになりますね。サーバーをクラスタ化にすれば、数万ユーザーにも対応できます。
─ZCS NEの価格はいくらくらいですか?
プラウム氏
基本的には、1ユーザーあたり年間28ドルです。
─安いですね…。
プラウム氏
これから市場を奪っていかなければならない立場ですから。
─Zimbraという企業は、Web 2.0的な技術を駆使してMicrosoftに挑戦する企業と見られていますね。
プラウム氏
我々はそういうつもりはありませんが、企業として競争は避けられないと思います。
─ZCSは、Ajaxだけではなくタグなども効果的に使っていますね。
プラウム氏
はい。技術的には確かなものです。
─私はイントラネットにもWeb 2.0の余波が及ぶと思っていて、それを「イントラネット2.0」と呼んだりしています。Zimbraはそれを実現する一つの選択肢と思っていますので、ぜひ日本でもサービスを始めてください。
プラウム氏
実はそのつもりでいます。そのときは、よいパートナーを紹介してください(笑)。
─ありがとうございました。
■ Web 2.0技術でMicrosoftに対して真っ向から挑戦する企業たち
前回と今回の海外編では、ビジネスモデル的に確立しかけている2つの新興企業をご紹介しました。UpstartleのWritelyはインターネット経由でサービスを提供する、いかにもWeb 2.0的なモデル。Zimbraは、イントラネットへのサーバーソフトであり、完全な企業向けビジネスです。
しかし、両社ともAjaxをはじめとするWeb 2.0技術を応用して、今までになく優れたWebアプリケーションを提供しています。Microsoftに対して真っ向から挑戦した企業は、ことごとく倒産か吸収合併の憂き目に遭ってきたわけですが、Web 2.0というパラダイムシフトの中、どういった結果となるのか非常に楽しみです。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/01/26 23:59
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