1月26日、鳴り物入りでスタートした「FeedBurner.jp」。その運営会社であるGMOアドネットワークスの社長、井上祥士郎氏にお話を伺いました。
FeedBurner.jpは、ブロガーやニュースサイト、RSS対応したECショップなどの運営者に対してトラフィック測定をはじめとした集客支援機能や広告チャンネル・収入機会を無償で提供するサービス、米国FeedBurner.comのローカライズバージョンです。
■ GMOアドネットワークスはFeedBurner.jpの運営会社
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GMOアドネットワークス株式会社 代表取締役社長の井上祥士郎氏
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─まず、簡単な自己紹介をお願いできますか?
井上氏
えーと、私は北海道出身でして。学校は小樽商科大学、専攻は技術というよりもプロジェクト管理ですね。小樽の観光業界を盛り上げることを目的としたような学生のプロジェクトを手がけたりもしていました。Windows 3.1の時代に、Webとの出会いがあって、まずトランス・コスモスに入社したんですね。そこでサーバーのプロジェクトの企画販売などを担当しながら、技術的な要素も身につけていきました。ECのソフト販売のプロジェクトなどを通じて、実際のサイト構築もエンジニアと一緒にやるようになって。それが技術的なバックグラウンドですね。
―そのあとにGMOグループに入社された?
井上氏
いえ、その前にソフトバンクパブリッシングに入って、いろいろな子会社を立ち上げるプロジェクトに参画していました。外注先として、インフォテリアさんと一緒に仕事をすることが多かったんですが、そのころテキストベースでのデータ管理の便利さに目覚めまして。XMLを本格的に研究しだしたのもそのころですね。
その他、ソフトバンクパブリッシングでは雑誌のWeb化の事業推進に2年ほど取り組んでいましたが、Webと雑誌では作り方や過去のバックナンバーのようなデータの扱いが違うんですね。例えば定期刊行と不定期なものの発行や管理の内部フローはWebのそれとは大きく違うので、そういうフローをWebにどう落とし込んでいくかなどの仕事をしていました。
―紙メディアの管理フローをWebメディアの管理フローに落とし込むというのは、かなり難しそうですね。
井上氏
ええ。その後2004年8月、GMOホスティング&テクノロジーに入社したわけです。
―わりと最近ですね。
井上氏
ええ。GMOホスティング&テクノロジーではASPとホスティングをやりたかったわけなんですが、よく研究してみるとGMOグループにはホスティングにどうアプリを載せるかという事業はあるのですが、グループとしてメディア全体の広告を横断するようなサービスがなかったことに気づいたんです。で、GMOの社内公募の形で11月にGMOインターネットに移り、バリューコマースと一緒にGMOアフィリエイトを立ち上げることになりました。
―具体的にどういうビジネスを行うのですか?
井上氏
GMOグループには、3つのブログメディアがあります。ヤプログ、JUGEM(paperboy&co.)、AutoPage(ティーカップ・コミュニケーション)なんですが、そのシナジーを広告に生かす方法を模索しています。
―広告配信システムの提供ということですか?
井上氏
そうですね…。広告配信システム自体はバリューコマースのOEM提供を受けているわけですが。入稿の管理の仕組みなどは、メディアが多様化していくので、将来は自分で持つ方向を考えています。
―今回、GMOアフィリエイトとは別に、GMOアドネットワークスという会社を作られたわけですね。この会社の設立目的はなんでしょうか。
井上氏
GMOアドネットワークスは、1月26日にサービスインしたFeedBurner.jpの運営会社です。GMOアフィリエイトは、そのGMOアドネットワークスを管理しています。社長は私が兼任なんですが。
■ RSS広告の配信以外にもRSSフィードの利用状況も提供
―なるほど。井上さんが考える、ブログメディアに対する広告モデルをもう少し詳しく説明していただけますか?
井上氏
そうですね。まず各ブログメディアのRSSフィードに対してのRSS広告システムを提供するわけですが、GMOアフィリエイトにはFeed Me!というシステムがあります。Feed Me!はRSSフィードをクローリングして、解析する仕組みです。いわゆる形態素解析で、文脈を見て適切なジャンルに分けるバックエンドです。そして最終的にそれを加工して広告に配信するのがFeedBurnerの役目になります。FeedBurnerは管理するRSSフィードが多くなると500~1000円のレンジで課金していくことになります。
―FeedBurnerの基本的な機能はどのようなものですか。
井上氏
ユーザーへのレポート機能やRSSフィードの加工機能、ASP型のメディア機能を提供できるというところですね。RSS広告の配信機能もさることながら、われわれは一般のブロガーの方々に無料でFeedBurnerを使ってRSSフィードの利用状況などを提供できるというところが、他社さん(RSS広告社やPheedo)と違う点です。
―さきほど、元々の企画はGMOのブログメディアを横刺しにして広告を展開することとおっしゃってましたが、当面はビジネスモデルとしてはその方針は変わらないのですか?
井上氏
はい。まずは各グループへのメディア機能の提供、配信機能を提供していくことを優先します。グループのメディア事業にはそれなりのトラフィックがありますから。既に試験的にはヤプログに提供していて、(コンテンツマッチのための)辞書機能の強化中です。FeedBurnerとの完全な連携を今は目指しています。徐々に他社メディアさんへの提供をスタートしていきたいですね。
■ GoogleはWeb上のPOSシステム
―Web 2.0に関してはどのような見解をもたれていますか?
井上氏
FBS(フィードビジネスシンジケーション)のカンファレンスでも言いましたが、特に重要なのはGoogleを広告ビジネス屋さんとしてみるのかどうか、ということです。GoogleはWeb 2.0の代表企業としてみられているし、同時にそのビジネスモデルは無料サービスプラス広告収益、とだけしか語られることがないですね。でもほんとはWeb上へのPOS(Point Of Sales)のシステムだと思うんですよ。
―POSとは、コンビニエンスストアなどで採用されている、販売管理システムですね。
井上氏
ええ。APIを提供したり、自前のデータベースを公開することを通してPOSをWeb上でやっている会社。それがGoogleだと思います。要するに、顧客の行動履歴をひたすら取って、マーケティングに生かしていくわけです。
―同感ですね。Google Baseはまさにそういうサービスですね。
井上氏
その通りです。ほかにも(有料トラフィック管理サービスの)Urchinを買収して無料提供(=Google Analitics)したり、出版社をやってみたりしているのは、結果的には検索のデータベースとくっつけて、ユーザーの行動履歴を分析するところに価値を見いだしているからだと思います。
Google Mapsをはじめ、さまざまなメディア的サービスを多角化して提供しだしたことは必然でしょう。検索とデータベースのひもづけでマーケティングをやろうという意図の現れです。いまは広告の収入が大きいので分かりやすいだけで、今後はマーケティング情報の販売などが強化されていくと思います。
つまり、Web 2.0=Googleはそういうところが本質なんだと思います。APIとか、MashupはWeb 2.0のキーワードですけど、情報を出す側と使う側を示しています。出す側はマーケティング的な機能を他社にリーチするためにAPIを使う。ダブルクリック社をWeb 1.0的とオライリーは言いましたが、同社がクッキーを使ってクライアントに負荷をかけていたのに対して、GoogleはAPIで、ユーザーがコミットして使っている。この差が大きく、だからこそWeb 1.0と2.0の違いの象徴になっています。
―なるほど。
井上氏
逆に、メディアの課題としてはAPIを使うだけではだめで、基盤システムが必要ですね。弊社ならトラッキング機能だったり広告配信システムなどがある。Mashupだけではだめですね。ビジネスとして基礎ベースがないといけない。
―そのあたりの見解はRSS広告社の田中さんがおっしゃっていたこととまったく同じですね。逆に質問ですが、GMOアドネットワークスあるいはGMOアフィリエイトではマーケティング情報の販売モデルはやりますか?
井上氏
やらないです。Google真っ向勝負はしない(笑)。
―FeedBurnerはWeb 2.0的サービスですか? そうだとするとその理由は?
井上氏
FeedBurnerはXMLベースだし、そもそもユーザーにMashupさせるツールです。そのものがWeb 2.0的であると思います。自社の広告配信とトラッキングレポートがコアであって、他のフィードとの加工や最適化をソリューションとして提供します。ユーザーからみると無料版でもいろいろな機能を楽しめるわけで、いかにもWeb 2.0的だと思っています。
―では、ほかにWeb 2.0的と思う企業は
井上氏
動きや会社のムードは、はてなダイアリーがそれらしいといえると思います。ただ、ビジネスモデルがどうかはわからないですね。ともあれユーザーからみたら評価は高いといえるでしょう。
―Web 2.0キーワードは?
井上氏
タギングですね。データのひも付け情報をどう持っていくかが課題だと思います。タギングするにあたって、対象になるのがキーワードかフレーズなのかは大事。行動履歴をはかる大事なポイントです。タグをつける対象を、ビジネス的に考えたときには興味が湧きます。形態素で解析したりすると、同時にどのワードの場合にクリックされているか、ユーザーの感度がいいのかをどうやってとるの? という仮題があって、広告主にとってはお金をどのワードに払うのかが問題になってきますね。
―Google Baseについてはどう考えますか? POS的であると思うんですが。
井上氏
脅威に思っていますよ。ビジネス面でどうなるかはわからないが、今後のGoogleのコアになると思います。
―最後にFeedBurnerにおける事業目標を教えていただけますか。
井上氏
まず売上は2006年に年商1億円を考えています。トラフィックについていえば米国で15万ユーザーがFeedBurnerを使ってフィードを配信していますので、日本でも今年中に追いつくつもりです。順調にいって5億円くらいの売上をマイルストーンにして、いかに速くそれを達成するか、今後頭を使っていきたいと思います。
―分かりました。今日はありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/02/01 09:00
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