|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
ドリコム内藤社長「Web 2.0はソーシャルデータベース」
|
|
|
|
今回は、2月9日に上場を果たしたばかりのドリコムの内藤社長をお迎えして、お話を伺いました。特に、昨年12月12日に発表したWeb型RSSリーダーを中心とした新サービス「ドリコムRSS」に関する詳細を語っていただいています。U30(20代の若手経営者)の代表の一人としても注目を浴びる内藤氏が考えるWeb 2.0とはなにか、どうぞお読みください。
■ 子供の頃から起業を目指す
|
株式会社ドリコム 代表取締役社長の内藤裕紀氏
|
─まず、簡単な自己紹介をお願いできますか?
内藤氏
ドリコムの社長をしている内藤です。少し前までは京都大学経済学部の学生だったのですが、最近中退しました(笑)。小さい頃は発明家になりたいとずっと思ってましたが、いつからか事業家になることを夢見るようになりました。出身は東京なんですけど、発明とかイノベーションというイメージを、京都に対して強く持っていたので京大に入りました。入ってみると、特に変わったことは無かったんですけどね(笑)。
─京セラを始めとするベンチャーの成功例が結構ありますからね、京都には(笑)。学生ベンチャーとしてよく知られるドリコムですが、今の事業をやろうと思ったキッカケはなんですか?
内藤氏
うーん、起業したときにはWeb制作みたいな仕事でしたね。最初は関西の大手企業さんのネットまわりのコンサルや制作の仕事をいただくことができました。2002年に立命館大学の小柳先生とご一緒させていただいていた、検索エンジンというかデータマイニング関連のプロジェクトに助成金がおりて。それがキッカケで検索エンジンの開発という新しい事業の方向が見えてきました。
─ドリコムを昔から知る人間にとっては、ドリコム イコール「ニュースとブログ検索サービス」というイメージが強かったですけれど、今ではドリコム イコール ブログですね。
内藤氏
2003年にブログに投資することを決めました。最初はB2Cのドリコムブログを提供し始めました。その後、2004年から法人向けのブログの提供もスタートしたわけです。
■ ドリコムの事業モデル
─収益モデルについて教えていただけますか?
内藤氏
まずやっていることを並べてみると、一般個人向けのブログのASPサービス。法人向けのビジネスとして、CMS(コンテンツマネージメントシステム)やブログシステムの販売とASPサービス。その他、広告事業の一環として、サイバーエージェントさんとコンテンツマッチ広告(BlogClick)に対して検索マッチング技術を提供しています。これは広告収入のレベニューシェアという形ですね。
それから、ケータイ向けのサービスも実験的に始めましたし、サイボウズさんのまねではないんですけど、ドリコムテックというR&Dと良い技術への投資を行う子会社を立ち上げたりしています。
収益モデル、という面で分けると、大手向け、中小企業向け、そして一般個人向けの3つの市場に向けて、先ほど述べたようなサービスを提供しています。大手市場からの収益が多かったんですが、昨年の12月には中小企業市場からの売上が全体の30%に達しました。この傾向は続いていて、2006年度には全体の50%に達すると思います。
Web 2.0的な言い方をすると、売上もロングテール的な配分にしていきたいと考えています。ロングテールはヘッドとテールのボリュームの逆転現象です。ヘッドはメディアのスペースを売るというモデルで、ポータル的ですね。トラフィックいくらなのでいくら、といった感じで売上がPVベースで決まってきます。テールはユーザーのアクションに対する売上で、PVよりも広告配信技術によるものです。広告配信技術による売上の方法は、検索連動広告、コンテンツマッチ広告、そしてアフィリエイトの3つしかないと思っています。ドリコムは基本的にポータルビジネスではないですから、テール部分への集中をしていきたい。それも前者2つ、つまり検索連動広告とコンテンツマッチ広告の技術開発に投資していこうと考えています。
■ ドリコム流Web 2.0とは
─ロングテールという話が出たところで、Web 2.0に関する意見を伺います。内藤さんが考えるWeb 2.0とはいったいなんでしょう。
内藤氏
Web 2.0の定義は人によって多少違うことをいうと思うんですけど、僕がいつも大事なことと思っているのは、ソーシャルデータベースというキーワードです。このキーワードはAPIと、マイクロアド(小口広告)の2つによって成り立ちます。先ほどいった検索連動広告とコンテンツマッチ広告のように、ロングテールのテール部分に出す広告がマイクロアドです。
Web 1.0的なアプローチだと、データベースを自分で作って自分で使う。Web 2.0的なアプローチだと、他者に開放する。それがソーシャル、という意味に繋がります。AmazonはAPIを公開しているしマイクロアドの仕組みを提供しているけれど、データの完全な開放を伴っていないのでソーシャルデータベースではないと思います。
─CGM(コンシューマ・ジェネレイテッド・メディア)の考え方のように聞こえます。技術的なポイントではなく、態度もしくはアプローチが重要ということですね?
内藤氏
インターフェイスにAjaxを使うとか、ブログを使うからWeb 2.0だというようなことは関係ないですね。業界は関係なく、ドリコム流の考え方ですけど。
|
ドリコムRSS
|
─Web 2.0的であるとはっきり宣言したサービスをリリースしましたね?
内藤氏
ドリコムRSSのことですね。別にRSSだからWeb 2.0ということではなく、さっきもいったようにユーザーがデータを貯めていって、それを開放するというところがWeb 2.0的だと思っています。ドリコムRSSは、MyClipというブログのクリップサービスなどを使って、ユーザーがRSSをどんどん貯めていってくれています。
─ドリコムRSSはRSSを読むためのツール、つまりRSSリーダーではない?
内藤氏
なんと呼ぶべきかは悩むところですね。小川さんは逆にFeedpathをなんと呼んでいるんですか?
─うーん、難しい質問ですね(笑)。一緒になにか良い名称を考えましょうか。
内藤氏
そうですね(笑)。RSSリーダーというとどうしても閲覧しかしないように聞こえて妥当ではない気がしています。だから、ドリコムRSSも、RSSリーダーで一番というのではなく、どうやったら有用なRSSを貯めていけるか、そしてそれをユーザーに開放できるか、という一点にこだわっています。これがAPIに繋がっていくわけですね。今のところまだAPIの公開は実現できてはいないんですけど。Feedpathでは公開していますか?
─まだ準備中ですね。
内藤氏
APIを公開するのは、資料の準備が大変ですから、なかなかすぐにはできませんね。でも必須と思います。
現時点では、ドリコムRSSでは購読しているRSSをユーザーが公開する機能を用意しています。ちょうどDJのように公開するわけです。例えばライブドア関係のニュースは、ブロガーだけではなく多くの人の関心を集めているわけですが、ドリコムRSSのユーザーさんは、自分なりにまとめたニュースを配信して情報を開放しています。一種のスキマニュースみたいな感じです。
─なるほど。反応は良さそうですね。
内藤氏
まだ始まったばかりなので、徐々に広がっていけばいいと思っています。ドリコムRSSは元々8万人くらいのMyClip会員がいましたので、その会員をコアに広げていきたい。RSSリーダーもいろいろあるわけですけど、インターフェイスよりも、機能をきちんと開発していかないとならないですね。例えばRSSを簡単に追加することや、Feedpathなどのようにタグ機能を取り込んでいくこともしたいですね。
─RSSリーダーというカテゴリーの中だけで見られてしまうと、機能拡張がしづらいこともありますね。
内藤氏
僕たちもしばらく法人向けビジネス中心で、B2Cと離れていたので感覚を取り戻さないといけないと思っています。せっかくいいものを作ってもコンセプトをうまく伝えられないと、広がらないですから。
■ Web 2.0を意識して海外進出も
─Web 2.0を標ぼうする企業も相次いでいますが、今後の戦略や潜在的なコンペティターの話を聞かせてください。
内藤氏
Ajaxを使っていればWeb 2.0とか、RSSはイケてる、というようなことをいうのは間違っていますよね。もうちょっと先の視点で見たときには、やはりロングテールの視点が大事だと思っています。その意味では、Webの会社とは言い切れないですけどリクルートが面白いと思いますね。コンビニに置いてある雑誌は、取材して作ったコンテンツの雑誌と、広告そのものがコンテンツの雑誌の2種類があって、後者はWeb 2.0的であるとも思います。この視点で強いのはリクルートなんですね。非インターネットのサービサーがネットに入ってきたら、と思うと大きな脅威を感じます。
それと、Feedpathを見て改めて思いましたけど、サービスを多言語化することは大事ですよね。海外進出を考えたいです。日本にはどんどん来るのに、こちらからは出ない。いままでのドリコムは確実にビジネスを当てることを中心に考えていましたが、足腰もしっかりしてきたし、海外向けにはぶんぶんバットを振るみたいな事業や技術に投資をしていきたいですね。
─日本はIT輸入過多ですからね(笑)。
内藤氏
あとはやっぱりGoogleは気になりますね。コンテンツマッチの分野ではまともにぶつかるし。僕たちも個人メディアをのばしていきたいと思っています。今はソフト産業の転換期ですよね。Webブラウザ上ですべてができるようになってきたし、サービス同士の連携ができるようになってきた。見た目だけではなく、連携によって、データのやりとりは簡単で、コストも安くなってきた。大容量データ転送サービスのようなサービスもいらなくなると思います。ドリコムとしては、企業向けのWebサービスも画期的なモデルを造っていきたいし、海外向けには、よりオリジナルのサービスを作っていきたいと考えています。ソーシャルタギングのdel.icio.usとほぼ一緒の時期にMyClipを作ったんですけど、新しい体制を作って、サービス開発体制も短期間にして、世界に向けて進出したいですね。
─楽しみですね。ぜひIT輸出大国を目指しましょう。本日はありがとうございました。
内藤さんとはこれまでも何度かお話をさせていただいていますが、上場を果たした後も謙虚な態度を崩さない好青年です。ご自身でおっしゃられたように、これまでは後追いというかビジネス的に堅い路線をたどってきたドリコムが、今後「ぶんぶんとバットを振る」ような事業開発をしていくのであれば、ますますその輝きを増していくことでしょう。
|
小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/02/10 00:12
|
|
|
|
|