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アスクドットジェーピー樋口副社長「Ask.jpはたのしさを提供する検索エンジン」
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本日のゲストは、Ask.jpを運営されている株式会社アスクドットジェーピー(以下、Ask.jp)の上席執行役員 技術・運用担当副社長の樋口将嘉氏です。Ask.jpは検索エンジン提供会社としては、財務的にも性能的にもGoogleやYahoo!に挑戦しうる、いまとなっては数少ない企業の一つです。
■ B2BからB2Cに事業主力をシフト
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上席執行役員 技術・運用担当副社長の樋口将嘉氏
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―本日はよろしくお願いいたします。まず自己紹介をお願いできますか?
樋口氏
Ask.jpの樋口と申します。元はいわゆるコンサルティングファームにおりました。システム構築などに強いコンサルであったので、最初はCOBOLのプログラミングを手がけました。そのあと、クライアント/サーバーが主流の時代には、C++、Javaなどを使った大規模業務系のシステムを手がけていました。それがだんだんとネット系のシステムに移っていきまして、Webサイトのコンセプト作りなどもやるようになったわけです。ネットだとシステムと事業モデルは不可分ですから、徐々に事業モデルや運営そのもののほうに興味が移るようになるのも、ある意味自然だという気がしています。そういう背景から、2001年にAsk.jpが設立されると同時にジョインすることになったわけです。だからAsk.jpに入ってからもう丸5年になります。
―Ask.jpは、もとはB2B的なサービスでしたよね?
樋口氏
ええ。B2Bですね。企業が自社のWebサイトに検索機能を付与したいというニーズは昔からあります。Ask.jpでは、そういうお客様に検索エンジンを提供しています。
―B2Cのサービスを始めたのは?
樋口氏
2004年4月から主力事業をB2Cにシフトしました。まずベータ版から始めて、2005年2月に正式サービスとして一般に検索サイトを公開しています。
―B2Cにシフトしたきっかけは?
樋口氏
アメリカ本国のAsk Jeeves(注:2月28日に IAC Search & Media に社名変更)では元々B2BとB2Cを両方やっていたんです。Ask.jpは日米50:50のジョイントベンチャーですが、最初はUS側の意向でB2Bに特化していました。最近はUS側もB2Cを中心に事業展開するようになったので、われわれも追随した形です。
■ Ask.jpのビジネスモデル
―現在の事業内容を教えてください。
樋口氏
B2Cの事業内容は、基本的にはユーザーに検索を利用していただいて、検索結果ページへの広告を見ていただくというモデルです。テキストマッチ広告ですが、実はGoogleのアドワーズを使っています(笑)。
―アドワーズですか(笑)。
樋口氏
アメリカでもそうしています(笑)。B2Cは広告収入100%です。
検索機能としては、Web検索、ブログ検索を中心に、地域情報検索などさまざまな検索を提供しています。
Ask.jpのWeb検索はTeomaというエンジンを使っていますが、クエリのキーワードを瞬時にクラスタ分類して、分類された中で各ページのオーソリティというか重要度を個別に分析できるようになっています。Web検索は、一般検索と言い換えてもいいとおもいますが、ユーザーがなぜそれを検索するのかという点が重要で、それにふさわしい結論に導くことができるようになっています。入力ワードの中で関連する言葉の群れからキーワードを抽出して、ページ群の関連性の近いところをリアルタイムでランキングするわけです。つまり、コンテンツ同士の話題の近さをランキングしていることになります。
ブログ検索では、個人単位での記事の検索ですね。一般検索とは更新頻度も記事の質も違う、レベル感の違いがでるわけですから、当然重要な情報にノイズが混在します。そこから必要な情報を抽出しなければならない。ブログ検索はSeesaブログにも採用されていますし、Jストリームのポッドキャストサービス Castellaにもポッドキャストの検索に利用してもらっています。
―ブログ検索の特長をもう少し教えてください。
樋口氏
ブログ検索では情報収集の速度と情報量が特長ですね。最速1分以内で最新情報を提供しています。ブログという数では把握してないですけど、現時点では、記事の数35万/日。1000万ページ/月というデータ量です。
■ Ask.jpはWeb 2.0?
―最近ではGoogleがWeb 2.0企業の代表のように語られることが多いですが、Ask.jpとしては今の状況をどう見ていますか?
樋口氏
そうですねえ…。Ask.jpは今のところWeb 2.0企業ではないかもしれませんね(笑)。
―そのココロは?(笑)
樋口氏
Web 2.0的企業というには3つの条件のどれかに当てはまる必要があるとおもうんですね。まず一番目はサービスのパーツをWeb 2.0の場に提供していること。例えばGoogle Map等です。次にそれらをアッセンブル=マッシュアップしていること。最後に、それらの結果としてかもしれませんがサービスとしてプラットフォーム化していることです。Ask.jpは、いまのところこの3つにあまり当てはまってはいないです。特に3番目のプラットフォーム化しているかということにはなってないですね。われわれはいまのところ、Web 1.0からWeb 2.0に向かっている企業、と言えるとはおもいます。
Web 2.0的ということは、詳細化・細分化していく流れともおもっています。全体を提供ではなく、一部分を提供する。だからこそ多様化した組み合わせを見せられるとおもうんです。企業間連携ではなく、マッシュアップが大事なわけです。RSSフィードなどもそうですね。僕はアッセンブルという言葉をよく使って説明しますが、組み合わせるだけではなく、それがビジネスエンティティ(一単位として扱われるデータのまとまり。実体と言ってもよい)になることが大事なんです。そのビジネスエンティティが外部とアッセンブルされて活用されると、それがWeb 2.0と呼ばれるんではないかと。
―なるほど。同感です。
樋口氏
ポータルは内部でアッセンブルしているサービスで、Web 2.0ぽくはないですね。人がコミュニケートする場を提供したり利用するわけで、プラットフォーム企業と言えます。Yahoo!は自身がコミュニティになっていこうとしている、従来型のプラットフォームビジネスを志向していますね。対してGoogleはWeb 2.0的なサービスのパーツをどんどん外部に向けて発信しています。ともに違うビジネスモデルですけど、現時点では両方ともビジネス的には成功しているので、最近は互いに意識し合って、似通った部分も持ち始めたとおもいます。プラットフォームとパーツの両方を兼ね備えるような形を志向してきているんではないでしょうか。
―Ask.jpはいかがです?
樋口氏
Ask.jpでも、いろいろと面白いサービスを発表し続けています。例えば「MyAsk」という共有ブックマークがあります。キーワードは共有、ですね。ユーザーを囲い込まないし、データを編集しない、というのがわれわれの方針で、ユーザーのインタラクション(双方向性)を大事にするつもりです。
先述したように、Web 2.0では、データのパーツの単位が小さくなる傾向にあって、データのフォーマットとしては結局XMLに行きつくとおもいます。Webという網の目の、クモの糸の一本一本がパーツ単位の連携を見せてくるはずです。
―タグやMicroformatsもその流れですね。
樋口氏
ええ、そういう単位の一つですね。タグ検索も面白いですよ。ただ、狭い意味でのタグではなく、もっとネットワーク的にアッセンブルされていかないとならないとおもいますけど…。
―Googleとの差別化をどのあたりに置いていこうと考えていますか?
樋口氏
Ask.jpを場としてたのしくしていきたいですね。検索にたのしさというと意味が分からないかもしれませんが、使い心地だとか、落ち着く場になるようにしたいです。Googleはクールさ、Ask.jpはウォーム(笑)。
―ウォーム、ですか(笑)。
樋口氏
Ask.jpを使うメリットをもっと示していかないといけないですね。ユーザーの皆さんがなにをしたいのかを考えて運用することを、よりいっそう心がけていきたいです。検索結果を見たユーザーが、それを正しいと感じるかが大事ですから。それと、Web検索とブログ検索については、Web検索が建前を探すとすると、ブログ検索は本音を探すみたいなところがあるとおもいます。きれいに整備された情報、正しい情報を読むことと、ブログに書かれた噂や個人的な意見を読むことは、目的が違うはずです。われわれはそういうニーズに、ちゃんと応えるサービスを提供していこうとおもっています。
―よく分かりました。今日は長い時間ありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/03/10 00:00
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