今回のゲストは、サムライワークス株式会社 取締役兼執行役員上級副社長の吉尾学氏です。サムライワークスはもともとWeb制作会社としてスタートした企業であり、その意味では典型的なWeb 2.0企業とは趣が異なるとおもわれる読者も多いかとおもいます。しかし、OSでもWebブラウザでもなくWebこそがプラットフォームであると考えることがWeb 2.0的である、としたときに、同社が最近推し進めている戦略もまたWeb 2.0的な要素が強いと考えます。しかも、既にビジネスとして成立していることは注目に値するでしょう。
■ Web制作会社のポジショニングを超えて
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取締役兼執行役員上級副社長の吉尾学氏
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―今日はよろしくお願いします。
吉尾氏
よろしくお願いいたします。
―簡単に自己紹介とサムライワークスの紹介をしていただけますか?
吉尾氏
はい。私自身は実はWebの業界の人間としては日が浅いんです(笑)。2000年の春にWeb制作会社のWebディレクターとして就職しまして、2年くらい修行した後に転職して今度はWebプロデューサーとしての業務に就いていました。そのあと、サムライワークスに入りまして、今では主にデスクトップエンジン、Webシステム、双方のインターフェイスとなるクリエイティブ面の統括をしています。
―サムライワークスの成り立ちは?
吉尾氏
2004年1月に創業されたベンチャーです。社長の新島をはじめとする4名のチームでWeb制作を事業とする会社を立ち上げたのが最初です。
―現在の事業内容を教えてください。
吉尾氏
ソリューション事業、メディア事業、コンシューマ事業の3つが大きな柱になっています。ソリューション事業には、DTSソリューション、Webソリューション、ビジネスソリューションの3つがあるのですが、DTSとはデスクトップツールシステムの略です。MacでいうところのWidget、といえば分かりますかね。
―デスクトップに常駐するミニアプリですね。Googleのサイドバーみたいな。
吉尾氏
はい。DTSを制作して、企業のプロモーションなどに使っていただくという事業がDTSソリューションです。
WebソリューションとはWeb制作全般なわけですが、DTSに対して何かを配信していくための基地のような存在として制作することがわれわれのソリューションの特徴ですね。あとは、ビジネスソリューションなんですが、DTSとWebを融合させて、それらをビジネスにしていくことです。
―もう少し詳しくDTSについて聞かせてください。つまり、サムライワークスのソリューション事業とは、顧客向けにWebサイトを制作し、そのサイトの情報をDTSに向けて配信させる、というソリューションの提供なわけですね?
吉尾氏
その通りですが、われわれがサイトを構築しない、つまり既にサイトをもたれているお客様に対してもDTSを提供していくこともあります。
―そのあたりはあとで詳しくお聞きしましょう。その他の事業はいかがですか?
吉尾氏
メディア事業はサムライアドネットワークというポータル事業とDTSをメディアとして開発し提供するビジネスです。というか、ソリューション事業によってできた成果物をメディアとして売っていくわけです。
コンシューマ事業はポータルサイトの運営などです。現時点のわれわれのビジネスとしては主力はソリューション事業になっています。
■ デスクトップツールシステムによるトラフィックをソリューションに
―競合相手としてはサイエントやアクセンチュアのようなWebコンサル企業になるのでしょうか?
吉尾氏
うーん、少し違いますね。確かにかぶるところはあるかもしれませんが。
―では違うとおもわれるところを教えてください。
吉尾氏
どこと比べてということではないのですが、Webサイトの構築、システマチックなモノを作るという意味ですが、例えばECのエンジンやSNSなどの構築をしたとして、それらをいくらプロモーションしても、人が集まらないんですね、最近では。だからわれわれはDTSからの情報配信によって、集客をしよう、と提案しています。広告やメルマガのような導線ではなく、DTSを利用した新しいトラフィックの導線の設計がメインのビジネスとなるわけです。
―なるほど。
吉尾氏
Webサイトに特化したツールを提供しても飽きがくるので、RSSティッカーのように、お客様が選んだ情報を見られるような窓口としての設計を心がけています。お客様側でRSSフィードを生成することができない場合もあるので、RSSフィードをジェネレートするようなツールを作ってセット販売することもあります。あるいは、サイト自体を構築しないお客様には、サムライRSSサーバー(ASP)で情報を提供します。サムライRSSサーバーとは、お客様の既存のWebサイトの情報をRSS化するサービスを行うものです。お客様には管理画面を提供して、好きな情報を入れることができるようにしています。DTSに広告を配信するためのADServerというサービスも用意していて、お客様と、代理店としてお手伝いいただいているオプトとサムライで売上をシェアすることもあります。ロイター様もこの手法をご利用いただいています。
―DTSが御社のビジネスの源泉になっているようですね。Googleがサイドバーで試みるであろう、Webサービスとミニアプリの連携の世界観を少しスモール化したような印象を受けます。
吉尾氏
ええ(笑)。
■ Web 2.0的ツールの開発を視野に
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Side-bar.jp
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―ユーザーにとってのDTSの入手方法は?
吉尾氏
弊社のSide-bar.jpというサイトでDTSを配布しています。またはお客様自身のサイトでDTSを配布します。DTSからブログの書き込みも、まだシーサーブログだけですが、できるようにしています。
―DTSは既製品なのでしょうか?
吉尾氏
いえ、原則すべてオーダーメイドです。お客様によって出したい情報が違いますし、サービスに特化したUIが必要ですから。
―だいたい、いくらくらいのものですか?
吉尾氏
通常は100万から200万円くらいの金額を提示させていただいています。DTS自体はデジタルノベルティみたいなもので、ユーザーに無料で配布するわけですから、お客様にしてみるとお金にはなりません。ですから、Webサイトとの連携をうまく作っていくことをわれわれのソリューションにしているし、それが差別ポイントになるとおもっています。
Web 2.0的な流れでいうと、プラットフォームとしてDTSがあって、コンポーネント的にお客様別の情報を提供していく感じです。
―ユーザーは複数のDTSをインストールすることはできますか? 何が聞きたいかというと、DTSを御社にオーダーする企業が増えて、たくさんの種類のDTS配布がなされたときに、ユーザーを奪い合うことにならないか、という意味です。
吉尾氏
複数のDTSを置くことはできます。でもそれでは使い勝手が悪いので、一つにまとめてツール化、プラットフォーム化したほうがいいと考えています。近いうちに、新しい概念のDTSを発表するつもりです。新DTSはWeb 2.0的である、といっても差し支えないとおもいますよ。
―最後に、今後の目標を教えてください。
吉尾氏
2007年IPO目指しているので、それが当面の目標でしょうか。それがゴールではないわけですが。
デスクトップでお客様がなにかすることを支援したい、ですね。Webサイトだけでは完結しない、Webブラウザやメーラーを開くというアクションを、デスクトップのツール、つまりDTSに置き換えてみたいとおもっています。デスクトップへの情報配信/受信のエンジンをサムライが提供していく、ということを最終的な目標に考えたいですね。
―分かりました。今日は長い時間ありがとうございました。期待しています。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/03/28 00:00
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