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ネット企業のラボとソフトウェア企業のラボの違いとは-サイボウズ・ラボ奥一穂氏
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本日のゲストは、サイボウズ・ラボ株式会社の奥一穂氏です。サイボウズ・ラボはグループウェアベンダーとして知られるサイボウズのR&Dを担う、戦略的子会社です。
■ Palmscape開発者
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奥一穂氏
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―今日はよろしくお願い致します。まず簡単に自己紹介をお願いします。
奥氏
東大の理科I類に入りまして、そのころにインターネットに触れたのが最初です。1997年にPalm用のWebブラウザであるPalmscapeを作り、IPA未踏の認定を受けました。98年には開発を止めていたんですが、IBMからPHS内蔵のWorkPad(PalmからのOEM供給を受けたPDA)にWebブラウザを入れたいというアプローチがあったんです。そこで、本式に仕事としてやろうと思ったんですね。2000年の9月にCLIEが登場したこともありましたし。
―PDA用Webブラウザを商売にしたわけではないんですよね。
奥氏
ええ。ブラウザビジネスは儲からないので、無料で配ってコンテンツ配信サービスで儲けようと思ってました。具体的に言うと、Palmはオフライン前提だったので、コンテンツをパッケージ化して、電子雑誌のような感じのサービスができたらいいと。当時、凸版印刷と組んで、朝日新聞や読売新聞などのコンテンツを月額課金で配信していました。
―サイボウズ・ラボに入ったきっかけは?
奥氏
2005年8月に入社しました。きっかけは未踏でやっていた研究に興味を持ったラボの社長の畑さんからメールをもらったことです。自分としても、ビジネスに追われるよりも、ゆったりとした研究開発に魅力を感じていたこともあって入社しました。
―現在のタスクは?
奥氏
ビジネスのシードを探し出すのが仕事ですね。ラボとしては、人を集めるフェーズからモノ作りのフェーズにようやく入ってきたかなと思います。人数も10人弱になってきたし。
―ネット系の開発ですか、それともインストールベースでしょうか?
奥氏
ネットもソフトも両方です。長期的にはネットのモデルですが、短期的にはソフト開発も必要と思います。本社(サイボウズ)の市場の未開拓な部分もまかないます。作り方としては、技術者側からのアイデアをまず出していくスタンスなので、下請け的な動きはないです。プロジェクト単位で動いているものもあるが、誰かがアイデアを出して、進んでいきます。消えていくアイデアもあるし。
―最近の注目技術は?
奥氏
最近だと、キーワード抽出のアプリを作ろうという話がありましたね。
■ Web 2.0の典型的技術はCSI
―ここでWebビジネスのキーワードであるWeb 2.0についてお伺いします。どういう見方をしていますか?
奥氏
ビジネス面と技術面の両方がある、と思います。ビジネス的には、一言でいうとオープンデータですね。ソースコードがオープンになって、次はデータがオープンになるという流れです。ソフトもオープンにすることでよりよい形で使ってもらえるわけですが、データもよりよいデータになり、そしてオープンになっていきます。
そうすると、データのアグリゲーションやフィルタリングをやっていたプレイヤーの影響力が落ちていきます。
―プレイヤーを具体的にいうと?
奥氏
うーん…、新聞社や音楽レーベルなどがあげられますね。
―その中で影響力を持つのはどこでしょう?
奥氏
発信者達が総体的に力を失うかもしれません。フォークソノミーが代わりになるでしょう。そして、課金のレイヤーを握るところがつよいと思います。情報は必ずしもすべてが無料ではないわけですから。影響力を保てるサービスとしては、GoogleやPayPalなどでしょうね。Googleはコンテンツの囲い込みと検索エンジンによるフォークソノミーにおいて強大です。
―技術面での見方を教えてください。
奥氏
Web 1.0がなんだったかというと、すべての処理をサーバー側でやっていたこと、そしてすべてのデータがサーバー内にあったこと、と言えます。Web 2.0では、それがサーバーサイドとサーバー内で行われるようになっています。サーバーサイドとサーバー内でやっていたことを代行するのがAjaxだったりするわけです。
―サーバーサイドとサーバー内の違いは?
奥氏
サーバーが提供するサービスの側、という意味と、実際のサーバーの中、という違いです。
例えばAdSenseは、データの位置もサービスそのものも、サーバーの外にあります。Client Side Include、CSIというんですが、データの位置もサービスの位置も、ユーザー側に置くことができるサービスが、Web 2.0そのもののサービスであると考えます。
―AdSense以外で例をあげていただけますか? ペイメント(課金システム)や広告などの配信システム、あるいは認証サービスだけに当てはまりそうな感じもします。
奥氏
ブックマークレットという技術も近いですね。必ずしもすべてのサービスがそこまで先鋭的になる必要はないですし、CSIは全体的にはニッチにとどまるかもしれないですね。ブラウザサイドで特定サービスや技術に依存していないので、プログラマとしては面白い世界です。ロングテールはCSIの技術によって成り立ってきたと考えています。
■ ソフトウェア会社のラボとは
―開発者としてWeb 2.0的な風潮は好ましいことでしょうか?
奥氏
いやなことは、ターゲットマーケットを決めてからというマーケティング手法は成り立たないということで、プログラムを作るときには、ターゲットに合わせるよりもブロガーに合わせる必要がある、ということですね(苦笑)。ある意味論理的ではないのがいやです。
―なるほど(苦笑)。ブロガーに取り上げてもらえるようなサービスを作ることを優先しがちということですね。
奥氏
ええ。Web 2.0的サービスは、ブロガーに向けたサービスばかりな気がします。それはアリだけど、一般消費者に受け入れてもらうには他のアプローチが必要かもしれないとも思っています。
―気になるサービスは?
奥氏
Googleですかねえ。テクノラティはビジネスモデルをマーケティングデータ販売に逃げてうまかったと思います。
実のところ私はサービスよりもミドルウェアとかプロトコルに興味があります。特にWebサービス間の認証の研究をやりたいと思っています。AjaxやCSIはWebブラウザをいかにしてごまかすか、という点で実践的なんです。軽い作りこそがWeb 2.0的でしょう。
―ラボというと、Google Labsがありますが、意識しますか?
奥氏
いえ、しません。サイボウズ・ラボが特殊なのは、ソフト開発の会社のラボであるということです。他はみんなサービスの会社ですから。サイボウズはソフトの会社。そこが違います。
―確かに。
奥氏
具体的にはサービスなら、常に「いつサービスインできるの」と言われるけれど、ソフトはもっと長いスパンで考えていきます。だから、それに合わせた研究開発が必要で、中長期的なことを考えていかないといけないわけです。だから、相当カラーの違いがでます。
APIにしても、基礎的なサーバー内のAPIの開発になるし、データベースやフレームワークの技術であっても数年間にわたって使えるものを作ることを目指します。そういう人はサイボウズ・ラボに向いているでしょうね、他のラボよりも。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/05/16 00:00
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