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「サイボウズはイントラネット2.0にコミットする」サイボウズ札辻執行役員
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筆者は常々Web 2.0の影響はイントラネットに及び、イントラネット2.0と呼ぶべき大きな変革が今年起きると考えています。この考えは、オラクルやウチダスペクトラム、Googleなどが次々と参入を発表しているエンタープライズサーチや、最近急速に普及が進んでいる社内ブログや社内SNSなどの情報共有ツールの登場、あるいはAjaxで非常にリッチなインターフェイスを備えたWebグループウェアの出現などで、既に証明されていると思います。
独自規格で運用されていた社内ネットワークがWebの影響でイントラネットへと進化したときに、いち早くこの波に乗って大きなシェアを獲得した代表的な企業が、サイボウズです。いわばイントラネット1.0の覇者の一つであると言っていいでしょう。そのサイボウズが、果たしてイントラネット2.0にどのように適応していくのかは、非常に興味のあるところではないでしょうか。
今回のゲストは、サイボウズのプロダクト本部長として製品企画に携わっている、札辻秀樹氏です。
■ 元々エンタープライズ市場を狙ったサイボウズ
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サイボウズ株式会社 執行役員 プロダクト本部長の札辻秀樹氏
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―まずは自己紹介をお願い致します。
札辻氏
サイボウズのグループウェアの一つであるOfficeシリーズのアプライアンスサーバーを月額課金で貸し出すというビジネスを展開していた、サイボウズ・ネットワークスという子会社にまず入社しました。そこでCTOを務めていたんですが、ブロードバンドが普及する前で、市場自体がまだ熟しきっていなかったこともあり、時期尚早というわけで、サイボウズ本体に事業統合となり、それと同時に私もサイボウズに所属することになりました。入社当時はガルーンの前身であるOfficeエンタープライズという製品を担当しました。ガルーン1.xまでは現CEOである青野がプロダクトマネージャーを担当していましたが、ガルーン2からは私が引き継いでいます。
―現在の職責は?
札辻氏
プロダクト本部という、プロダクトマネージャーを束ねる部隊の責任者です。
―サイボウズの製品群をざっと紹介していただけますか。
札辻氏
エンタープライズ向けとSMB(中小企業)向けに大別しているんですが、エンタープライズ向けとしてはサイボウズ ガルーンというグループウェアを持っています。SMBには同じくグループウェアのOfficeシリーズ、Web型のデータベースであるデジエ、CRMツールであるメールワイズなどを販売しています。
―サイボウズはSMBを中心に事業構築していると考えている人は多いと思いますが、実際は違いますね。
札辻氏
ええ、違います。
というより、元々はエンタープライズ狙いの会社で、SMBとエンタープライズ両方をターゲットとして考えるようになったのは比較的最近です。
Office AGというグループウェアのバージョンまでは、大企業の部門狙いだったんですよ。企業全体に採用していただくのはなかなか大変なのは分かっていたので、部門導入していただくことをずっと念頭において事業を作っていました。その後、SMBにおける企業全体の統合的なグループウェアとしての使い方も多く見られ始めたことを受けて、Office 6というバージョンから、SMB全体への導入を最初から考えた製品作りをし始めたというのが本当のところです。
―ガルーンの位置づけを確認させてください。
札辻氏
ガルーンはエンタープライズ市場向けの統合型グループウェアです。
ここ数年はインフラが整備されてきたり、企業側のコンプライアンスの問題があって、これまでは企業内に分散していたサーバーを統合しようという動きが活発です。つまり、一つの企業には一つのグループウェア、という具合になりつつあるので、SMBにOffice 6を提供するように、大企業にはガルーンを提供しよう、というわけです。
■ イントラネット1.0の覇者は、2.0でも勝てるか
―サイボウズは社内ネットワークのWeb化、すなわちイントラネット1.0時代に生まれた代表的な企業であると思いますが、今後はWeb 2.0の影響を受けてイントラネット2.0と呼ぶべき環境変化が起きていくと思います。そこで、パラダイムシフトを狙う多くの挑戦者が次々と生まれると思いますが、その辺はどう考えますか?
札辻氏
当然われわれもWeb 2.0の影響については強く意識しています。例えばAjaxを活用したリッチなインターフェイスもいいし、共有ブックマークのようなものもいい。インターネットとイントラネットではユーザー体験に格差が出始めていますから、それを埋めるためにイントラにおいてもWeb 2.0的なアプローチは良いことだと思っています。
もちろん技術的には似て非なるところはあると思っていて、インターネットならRESTやJSON、XML-RPCあるいはAtomのようなライトなものが用いられやすいでしょうが、イントラだとSOAPやSOAといったアーキテクチャにまた人気が集まるかもしれません。Webでいうマッシュアップがイントラでも起きていくことは間違いないでしょうね。
―同感です。サイボウズとしてはイントラネット2.0にはどうコミットしていくのでしょうか。
札辻氏
まず大規模ユーザーがニーズを見せ始めたという見方をしています。だから、まずはエンタープライズ向けの商品であるガルーンのキャッチアップが優先となると思います。
―具体的には?
札辻氏
ガルーンの次のバージョンは2.1というのがあるんですけど、さらにその次に2.5というバージョンの開発を進めています。
中核となるのは、情報を必ず見つけられる仕組みですね。探し方には、「検索」「分類(タグ)」「人(SNS的)」「時間」の4つの観点があると思いますが、そうした要素に従って実装していきます。情報が行方不明にならないようにすることが大事ですね。
―APIの開発などはいかがでしょう?
札辻氏
XML-RPCかSOAPかは分からないが、データ連携を図れるようにしていきたいですね。共有コンポーネントなどは、どこまでできるかわかりませんが、社内メールなどを他のシステムに貼り付けたり、共有ブックマーク、ブックマークレットなどをグループウェアに連携していきたいです。
また、より緩い連携用としてRSS対応を強化します。ガルーン2.0ではRSSリーダーを搭載していますが、2.1ではRSSを生成する機能をつけていくつもりです。データ連携面では、インターネットサービスであるfeedpath、あるいはそのイントラ版(コードネーム、WOLF)などと連携したら面白いですよね。
―同感です。インターフェイス面ではいかがでしょう? Ajax利用のグループウェアもどんどん登場してくると思いますが。
札辻氏
サイボウズらしいUIを考えたいですね。ライトで自然な形。Ajaxの採用は徐々に進めていきたいと思っています。
■ SaaSも視野にいれていく
―イントラネット2.0時代に生まれてきたソフト、イントラブログや社内SNSをどのように迎え撃ちますか?
札辻氏
サイボウズとしては、情報共有のためのソリューションをどん欲に採用していきます。グループウェアを中核としながらも、会社としてはSNSやブログなども取り込んでいきたいですね。企業文化やサイズによって最適なツールは違うわけで、掲示板だと通達だけど、ブログなら意見交換になるかもしれません。だから、水平的な展開というか、エンタープライズの場合は統合よりも、ユーザーの選択に合わせて、さまざまなオプションを用意していったほうがいいでしょう。
―つまり、サイボウズもイントラブログを販売するという意味ですね。
札辻氏
そうです。最終形態は分かりませんが、どのみち情報共有といったときにはグループウェアは生き残ると思います。併用なのか、統合なのかは分かりませんが、グループウェアを核としつつ、お客様のニーズに合わせて新しい商品を投入します。イントラブログソリューションもサイボウズとしてはやるべきと考えています。
企業のシステムは画一的ではなく、自分たちの情報システムに何が大切なのかはユーザーの自由であるわけですから。
―SaaS(Software as a Service:企業ソフトのホスティングサービス。いわゆるASP)についてはどう考えていますか?
札辻氏
セールスフォース・ドットコム、シムデスクテクノロジーズ、ネットスイートなどさまざまなベンダーが登場しました。
サイボウズとしては、そういうSaaSの流れは必然と思いますね。効率化、最適化を考えるに、TCOの削減にSaaSは役立つわけです。費用対効果についてはSaaSのほうが良いケースはあるでしょう。セキュリティを問題視することはあるかもしれませんが、さまざまなソリューションが発展してきて、ネットの方が安全であるということもあるので、一概にどちらが安全とは言えません。
―サイボウズとしてもSaaSの分野に進出する可能性がある?
札辻氏
もちろんです。それがいつかは分かりませんが。世の中、企業システム部門にコンプライアンスが無ければ、ASPを利用して、サーバーを外に出していく方がいいこともありえるわけですから。全部が全部それに移行するわけではないですけどね。
―グループウェア市場はあまり大きくなっていく気がしません。イントラネット2.0によって市場は拡大しますか?
札辻氏
いや、市場は変化が無いでしょうね。グループウェアは全体で400億円市場といわれますが、ここ数年間その規模は変わっていません。Web 2.0によって市場は大きくなるかといえば、市場自体は直近では変わらないだろうと思っています。情報共有市場は、大きくならず、中身のパラダイムシフトが起きるだけではないか、と。
そのパラダイムシフトの中で生き残り、シェアを拡大できるのはサイボウズと考えています。
―Googleの影響は? 表計算やワープロまでも無料提供し始めています。
札辻氏
見方はいろいろあると思いますが、エンタープライズ市場に受け入れられるかどうかは分からないですね。研究機関や比較的小さい事業部が導入するケースはあるでしょう。SOX法や監査に耐えられるようなシステムをフリーソフトが作れるのか、となるとはなはだ疑問です。内部統制、監査などは、SaaSでも対応できるのか、最初は部門に導入されても、全体では使えないケースもあるだろうと考えてしまいます。セールスフォース・ドットコムなどはちゃんと考えているでしょうが。
Web 2.0的な仕組みは、技術は使えるが、クリアしなくてはならない問題は多いですよ。セキュリティ、SSO(シングルサインオン)、認証、アクセス権などなど。SaaSやGoogleのような無償サービスでは互いのシステムをシームレスに管理することができないでしょう。やがては、イントラネット2.0的な、メタデータで情報をやりとりするようなこともできるようになるでしょうが。
―分かりました。今後の事業拡大が楽しみです。ありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/06/09 00:00
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