本日のゲストは、ティッカー型RSSリーダーであるeクルーザーを中心に事業展開をしている、レッドクルーズ株式会社 代表取締役CEOの増田勇氏です。eクルーザーは既に130万ダウンロードされている人気RSSリーダーであり、この分野で事業化されている数少ない例の一つです。最近では、株式会社USENが運営するブロードバンド放送「GyaO」の番組予告の通知サービス「GyaO便利ツール」として提供されています。
■ 企業とユーザーの思いのギャップを埋めるために
|
代表取締役CEOの増田勇氏
|
―まずは自己紹介をお願いできますか?
増田氏
レッドクルーズのCEOをしております増田と申します。IBMのOBですが、ソフトウェア会社のマーケティング業務をはじめ、いろいろベンチャーを渡り歩いてきました。その後、ビデオリサーチさんと一緒に、ネット視聴率の調査や行動分析をする米国のベンチャー、レッドシェリフの日本支社長をしていたんですが、ネットレイティングスに買収されたことをきっかけに、自分の会社を興しました。それがレッドクルーズです。
―レッドクルーズの事業モデルを思いついたきっかけはなんでしょう?
増田氏
IBM時代にボストンに留学していたこともあり、ネットについてはもとから興味がありましたが、レッドシェリフで働いているうちに、企業と消費者の思いというか感覚にギャップがあることが気になって仕方なくなったんですね。企業側が一所懸命デスクトップツールなどを作って配布しても、すぐにユーザーには飽きられてしまうことが多かったわけです。これがなぜかというと、企業は提供する情報をクローズにして、囲い込みをしたいわけなんですが、ユーザーからするとそんなことは大きなお世話で、もっとオープンなツールが欲しいんです。ネットを海に例えてみると、欲しい情報にうまくたどりつけることが肝心で、ユーザーにとって確実かつ安全に情報にたどりつける、素晴らしい航海をしてもらえるようなナビゲーションツールを提供したいと考えました。それがeクルーザーです。
―創業したのはいつですか?
増田氏
2004年の7月です。社名のレッドはレッドシェリフを偲ぶ思いから(笑)、クルーズは今申し上げたようにネットの海を安全に航海できるサービスを作りたい、クルーズしてもらいたいというイメージからです。
2004年というとRSSがちょうど世の中に普及しはじめてきたときです。RSSはプルだけどプッシュにみえる、擬似的プッシュサービスですから、企業と消費者のバランスを保てるポジションにあると思いました。ユーザーと企業の間をとりもつためのインフラ、仕組みを作れると考えたわけです。
―現在の社員数は?
増田氏
取締役3名合わせて、8名です。少数精鋭でやってます。
―レッドクルーズの事業を一言で言うとどういうサービスだといえますか?
増田氏
一言で言うと、サービス提供会社なんですけど、消費者と企業を結びつけていくインフラを提供する会社で、バランス重視のサービス提供をしている感じです。企業とユーザーを、古いかもしれませんがWin-Winモデルでつないでいきたい、両者にとってよいサービスを提供したいと思っています。
■ ながら利用に向いているティッカー型RSSリーダー
―事業内容について、詳細にご紹介いただけますか?
増田氏
生成から配信から測定のトータルソリューションプロバイダーとして、以下のサービスを提供しています。
・eクルーザー:ハイブリット型のRSSリーダー
企業がRSSで情報配信をしてユーザーにお届けするためのツールであり、ユーザーからすると、さまざまなお得情報をチャネルとして受け取ることができるメディアでもあります。
・ログログシール:ブログに貼ってもらうブログパーツ
ユーザー同士の嗜好のつなぎを行うもので、足跡機能もついています。例えば化粧品についてのログログシールを個人のブログに貼っていただくと、化粧品に関するゆるやかなコミュニティを作ることができるようになります。
・調査/分析:ブログの分析、口コミ分析。RSSに関する分析サービス
コンサルに近いものですけど、スポンサーアウトしてくれている企業に対して分析結果などを提供するサービスです。
―eクルーザーはフリーに配布するんですよね。
増田氏
ええ。ログログシールもフリーです。eクルーザーは、レッドクルーズのHP、スポンサー企業のHPからのダウンロードで配布しています。企業から提供される情報をチャネル化してプリセットしています。
―企業側の利用金額はどのくらいでしょう?
増田氏
eクルーズの初期設定料+月額メンテ料、が事業収益です。毎月のメンテ料金はざっと、13万円程度からです。
―類似サービスとの違いは?
増田氏
インフラをスポンサー企業が共有しているところでしょうか。
同業他社は、ツールにプリセットしたチャネルはたいてい一社ずつで、スポンサー企業が自分の情報だけを提供する形のはずです。われわれのeクルーザーはある意味メディアで、われわれと契約していただいているすべての企業のRSSのチャネルを、ユーザーはすべて登録できるし見ることができます。
また、eクルーザーはティッカー型のRSSリーダーではありますが、他社のものとくらべると、単独でもシンプルで使いやすいリーダーであると思っています。
―Web型あるいはクライアント型の本格的RSSリーダーの提供を考えたりはしませんか?
増田氏
いまのところ予定はありません。
ティッカー型のRSSリーダーは、「ながら使用」に適しているんです。ながら使用というのは、PCで何か別の作業をしながら、適宜入ってくるRSSにリマインドされる、リマインダー的な使い方です。
RSSの情報を調べるのではなく、あくまで受け身、作業中に見るようなものですね。いまのところはeクルーザーはそのような使い方を提示するもので、本格的なRSSリーダーとは要件が違うと思っています。
―eクルーザーの面白い機能を紹介してください。
増田氏
ユーザーの設定で、半透明、後に隠す、スキンを細くしたり、デコレートもできるので、とても楽しいですよ。チャネルを加えることもできるし、ブックマークレットを使ってマウスだけで操作できる、URLをタイプする必要はない、簡単な使い方がいいところです。
―利用環境は?
増田氏
OSはWindows 98 SE以降のみで、WebブラウザはIEです。Mac対応してくれという声も多いので、これから考えていこうかなあと。
―ぜひ(笑)
■ RSSはオプトイン・アウトの選択可能なサービス
―Web 2.0時代にはRSSフィードが新しいトラフィックを作っていくと思っていますが、RSSリーダーの提供者として、今後の展開についてどのような見方をされていますか?
増田氏
eクルーザーの機能はこれから少しずつよくしていきます。今の機能でもRSS一覧できるし、検索もできます。ヘビーユーザーにも十分使ってもらえるリーダーです。ただ、マジョリティである、一般ユーザーを対象にするところは変えずに、ユーザーが成長にしたがって機能アップしていこうと思っています。
これからの世界はますますユーザーと企業は対等になるはずです。消費者を無視することはできないわけで、企業と消費者との間で情報をやりとりすることがますます増えてくるでしょう。それがWeb 2.0であると思うし、レッドクルーズがやろうとしていることはその橋渡し、ですね。読みやすいフォーマットで持っている情報を企業に公開していく。消費者とWin-Win。RSS自体が広告であるようになるでしょうし、オプトイン、アウトが選択できるという自由をユーザーに提供できる優れたサービスになっていくと思います。
―なるほど。
増田氏
とにかくユーザーの声を聞いていきます。ユーザーとともに進化していきたい。開発日誌を公開していますが、ぜひみなさんにも読んでいただきたいし、フィードバックをいただければサービスにどんどん反映していきます。
―わかりました。個人的にはMac対応してくださることを切にお願いしておきます(笑)。今日はありがとうございました。
|
小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/06/13 11:17
|