今回のゲストは、最近エンタープライズサーチ(企業内検索エンジン)を日本でも発表した、日本オラクル株式会社の担当シニアマネジャー、三原茂氏です。
データベースの雄は、Web 2.0時代に対してどのような手を打っているのでしょうか?
■ イントラネットからインターネットへニーズを運ぶ
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システム製品統括本部 営業推進部 担当シニアマネジャーの三原茂氏
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―恒例ですが、自己紹介をお願いできますか?
三原氏
日本オラクルのシステム製品統括本部、その営業推進部の担当シニアマネジャーというのが正式な肩書きです。では何をやっているのかというと、コンテンツマネジメント系の担当にくわえて、一般的なプロダクトマネージャー業務、ビジネスデベロップメント業務といったところです。ビジネスパートナーを立ち上げたり、Web 1.0的なサービスをしている企業が2.0的なアプローチを考えるときの支援などをしています。
オラクルはご承知の通りエンタープライズ向けの会社ですが、自分で何か新しいことを作っていかないことには面白いことには巡り合えないですから。
―もう少しかみ砕いていただけますか?
三原氏
たとえば、フィードパスという会社は、インターネットからサービス開発をはじめて、徐々にイントラネットというかエンタープライズ向けのビジネスデベロップメントを考えている会社だと思います。これはGoogleも同じで、インターネットからイントラネットへと興味を移すという流れが普通です。これに比べると、オラクルは元々エンタープライズ向けのデータベースの会社です。だから、今やっていることは、イントラネットからインターネットへという向きになります。つまり、企業のニーズを外に出してあげるお手伝いをすることを考えるわけですね。
同時に、こういう試みの対象はむしろ中小企業になるかもしれません。大企業はシステムを自社で管理できますが、中小企業にとってはASPのほうが楽なわけです。となると、そういう流れをスムーズにさせる支援をするわけです。
―なるほど。具体的な製品やサービスになるとどうなりますか?
三原氏
Oracle Content Servicesといって、(オラクルのグループウェアソフトである)Oracle Collaboration Suiteの一部として提供しているサービスがあります。米国ではContent DBや Records DBという名称で、単独商品として販売しているもので、ECM(エンタープライズ・コンテンツ・マネジメント=企業内コンテンツ管理)の一種です。これはイントラネット用のサービスですが、企業内の非構造的なデータを管理するためのシステムです。これを、ASP、今はやりの言葉でいえばSaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)としても提供しようという考えを持っています。
―それがイントラネットからインターネットへ、という流れですね。
三原氏
そうです。
■ インターネットにしかないモノもイントラネット化する
三原氏
そして、同時に、インターネットにあって、イントラネットにないものを、イントラネットに持ち込むという試みにも着手しています。つまり、エンタープライズサーチです。Oracle Secure Enterprise Search 10gという製品名になりますが、アクセスしていいところと、してはいけないところなどの権限設定などが容易にできるように設計された、企業内専用のサーチエンジンの販売を開始しました。
―ラリー・エリソンCEOも来日されて、しきりにアピールされていましたが、オラクルの優位性はどこにありますか?
三原氏
コアの技術は、インターネット上の検索エンジンであるGoogleとあまり変わらないかもしれませんが、エンタープライズサーチをこれまで扱ってきた企業は、あまり大きな企業ではなく、ニッチプレイヤーであるか、あるいはコンシューマ向けサービスを提供している会社が多かったと思います。それに比べると、オラクルはエンタープライズ市場に特化してきた企業です。われわれの製品への信頼と、われわれから買うメリットは十分にあると思います。
―ウチダスペクトラムの紀平氏は、オラクルの参入によってエンタープライズサーチの市場の存在が実証された、と話されていました。
三原氏
結果的にそうなったと思います。
―しかし、これまでのところエンタープライズサーチの市場は、必要を叫ばれるわりには成長しません。そのあたりをどう考えますか?
三原氏
イントラネットに探すものはない、検索はインターネットで十分だという人もいますが、それは間違いですね。企業内での活動は探したい情報とその共有、それによって生産性の向上をはかることが重要です。よいサーチはその回答になると思います。あそこになにがあるから検索する、という行動は古いですね。
サービス名にSecure(安全)という名前をつけているのもイントラネットをターゲットにしているというメッセージでもあるんです。インターネットとイントラネットの違いは、認証をかけているかどうかであるとか、アクセスさせていいものといけないものの違いがあることです。アクセス可否や、情報の返し方、これらはそもそもオラクルがこだわってきたところです。
―市場の大きさをどう見ていますか?
三原氏
現時点で年間70億円くらいじゃないですかね、日本では。まだまだ食えるような規模じゃないです。
GoogleがGSA(グーグルサーチアプライアンス)で市場に入ってきたが、オラクルが参入してなお市場が広がりつつあると思います。来年以降、市場は倍々に拡大するのではないでしょうか。
■ Web 2.0への見方
―オラクルの社内ではWeb 2.0が話題になったりもするのでしょうか?
三原氏
しますよ。Web 2.0かどうかは知りませんが、例えばmixiはすごい使われていますね。2.0への興味があるんでしょう、みんな。
ともかく、ネットワークにつながってないものは、なくなってきているわけですね。データベースだろうが、なんだろうが2.0的になるのは自然なことですよ。社内にエンタープライズサーチが入ると、いろいろ愉快なことがわかってきます。どのコンテンツや誰のコンテンツが人気あるのか、みんな何を調べているのか?などが手に取るようにわかります。
―ナレッジマネジメントとしても有効ですね。
三原氏
検索は面白いですよ。アイデアで会社は便利にも面白くもなるし、便利すぎると(情報漏えい等の)リスクが高まる。それを防ぐセキュアな考え方、が大事なんですね。
イントラネットからインターネット化するサービス、インターネットからイントラネット化するサービスと、両方の方向性を支援していきたいわけですが、われわれはそこで、セキュア(安全)にそういう作業が行われていくような担保をしていければ、と考えています。
―よくわかりました。今日はほんとうにありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/08/22 00:00
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