今回のゲストは、アクセルマーク株式会社 取締役兼メディア・コンテンツ事業部長の田島満氏です。携帯電話のサービス提供だけに特化した企業は、Web 2.0時代にどのような展開を考えているのでしょうか。
■ ターゲットはケータイのメールアドレスをメインに使っている人
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取締役兼メディア・コンテンツ事業部長の田島満氏
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―簡単に御社の紹介をしていただけますか? Enterprise Watchの読者は、あまりケータイ事業について詳しくないかもしれませんので、噛み砕いてお願い致します。
田島氏
弊社は、株式会社セプテーニの連結子会社です。もともとは株式会社ハイジという社名だったのですが、昨年の11月に現在のアクセルマーク株式会社という名称に変わりました。
アクセルマークという社名は、ネットでビジネスを加速させる、つまりアクセルとなることを目印、つまりマークとしていく、という思いからきています。AXELというのは造語です。
事業内容は、ケータイに特化して、モバイル・インターネットを使って企業と個人に、いろいろな商品やサービスをマッチさせていくことです。
―PCのネット事業は一切ないのですよね?
田島氏
原則ないですね。具体的な事業モデルは、3大キャリア(NTTドコモ、au、ボーダフォン)の公式サイトの運営による課金コンテンツの提供=コンテンツ事業、それから無料のいわゆる勝手サイトの運営によって良いサービスをユーザーに提供して、スポンサーからの広告で収入をあげるメディア事業の2つです。
―コンテンツ事業の主要コンテンツはなんでしょう?
田島氏
やはり着うたと着うたフルですね。
―ターゲット層は?
田島氏
10代から20代ですね。はっきりいうと、たとえば「メルアド教えて」と頼んだときに、PCのではなく、迷わずケータイのアドレスを教えてくれるような人たちです(笑)。
■ 公式サイトと勝手サイトの事業の違い
―ケータイでの事業の変遷を簡単に教えていただけますか?
田島氏
先ほど話したように、おおざっぱにいえば、公式サイトではキャリアが課金代行をしてくれますから、着うた・着うたフルを中心にしたコンテンツ販売が成立する。勝手サイトでは課金できないので、モノを売るのが難しい。ですから広告事業がメインになるわけです。
公式サイトでの事業を考えると、権利関係のとらえ方が重要だと思います。
まず、2002年に一つの変化がありました。携帯電話の世代で言うと、2Gの時代です。この頃に弊社は35もの公式サイトを立ち上げました。
そして、2004年になって3Gと着メロが普及してきて。着メロはJASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)へお金を払えば、とりあえず法的には問題がありません。
それが、だんだん着うたや着うたフルが出てきて、パケット定額やコンテンツのリッチ化がどんどん進むと、コンテンツの原権利所有者からの配信許諾をいただいてから配信するモデルへと変わってきました。
―なるほど。
田島氏
結局公式サイトでないと、つまり、それぞれのキャリアに認可をもらえないと、着うた配信はできないし、音楽会社と契約しないと楽曲そのものを扱えないわけです。
■ Web 2.0を意識したモバイル・インターネットへ
―勝手サイトの事業はいかがでしょう?
田島氏
実はWeb 2.0を結構意識していまして(笑)。
―どのあたりでしょう?
田島氏
たとえばですね、これまでのケータイのメディア事業は広告代理店の論理に基づく、広告を出すことを最初から前提に設計されたメディアなんですね。
それがmixiをみて、われわれはけっこう認識を改めました。なにかというと、いまでこそmixiも広告を出していますけど、登場当時は何もなかったですよね。つまり広告前提ではなくて、まずユーザーを喜ばせることを考えたメディアというのは、これまでのケータイのメディアにはなかったと思うんですよ。
パケット定額制になって、お金を気にせずにアクセスが可能になったので、われわれもまず広告を出すことを前提とせずに、ユーザーを喜ばせるメディアを作っていこうという気になれたわけです。
―なるほど。(PCの)Webの世界では当たり前と思う世界が、ケータイではありえなかったわけですね。
田島氏
もう一つWeb 2.0的なことと言えば、アクセルマークラボというのを作りまして(笑)。
―ラボですか(笑)。
田島氏
はい。実は僕はWikipediaが大好きでして、これをケータイで見たくてmobazillaというケータイ用のPC Webビューワーを作ったんですよ、ラボで。いままではW-ZERO3やPCを持ち歩いていたんですけど、面倒ですからね。Gmailのケータイ版って日本ではうまく使えないんですけど、mobazillaならちゃんと読めますよ。
―それはいいですね。
田島氏
あとは、mogleという、ケータイ上でのブランド物専門のオークションもはじめました。これからも、いろいろと面白いサービスを作ります。
■ YouTubeはケータイ版で爆発する?
―他にもWeb 2.0から何かヒントを得ていますか?
田島氏
ええ、ありますよ。Flickrのような画像共有サイトも面白いですよね。それとYouTubeかな。YouTubeはケータイに持ち込んだら、かならずフィットしますよ。
―同感です。
田島氏
そういう意味では、ワンセグってダメですね。
―ダメですか(笑)。
田島氏
どうしたいのかわかんないですよ、ほんと(笑)。だって、ケータイって時間が空いたときに使うものでしょう? たとえば月9のドラマをみるために、わざわざワンセグみますか? ケータイでドラマみるより、さっさと帰宅してみた方がいいじゃないですか。ドラマの時間に合わせてケータイを使うのではなく、空いた時間にケータイを使って、そのときに合わせて何か面白いコンテンツがオンデマンドであるべきでしょう? だから、YouTubeのように、面白いコンテンツを、好きな時間にみられるモデルでないとだめですよ。
―そうですね。すき間時間を活かす良いサービスをぜひ、どんどん作ってください。今日はありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/09/05 00:00
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