|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
「旅行をもっとたのしくするインタラクティブメディアを目指す」フォートラベル津田社長
|
|
|
|
今日のゲストは、旅行のクチコミサイトとして有名なフォートラベル株式会社の津田社長です。
フォートラベルは、創業わずか2年でカカクコムに買収され、ある意味米国のWeb 2.0企業の典型的成功パターンを踏襲した企業とみられています。先日Googleに買収されたYouTubeとはどのような違いがあるのでしょうか。
■ SFCでパソコン、ネットに触れる
|
代表取締役の津田全泰氏
|
津田氏
今回小川さんにお会いできるのを楽しみにしていました。よろしくお願いいたします。
―こちらこそお願いいたします。同じオフィスビルにいるのに、ご挨拶が遅れてしまいまして(笑)。
津田氏
ほんとに会いませんよね(笑)。
―まずは津田さんの人となりを知りたいと思う方のために自己紹介をお願いできますか?
津田氏
そうですね。フォートラベル株式会社の津田全泰と申します。
中学まで群馬にいまして、高校からは慶応の付属です。医学部以外は全部入れるので、どこに行こうかと考えたあげくに、SFCに入りました。当時はネットというよりコンピュータをいじりたかったんですよ。実は大学ではじめてパソコンに触ったくらいなんですけど(笑)。
―そうなんですか(笑)。
津田氏
ええ。SFCに入ってみると、メールやネットは使い放題、一人一台のパソコンがある。なんてすばらしいんだと(笑)。
SFCではプログラミングが必修になるんですけど、入学してすぐにNetscapeが上場してインターネットのダイナミズムに発奮したことを思い出しますね。マーク・アンドリーセンのキャリアパスにわくわくしたものです。
それで大学2年に語学研修プログラムを使ってスタンフォード大学に留学しまして、クリエイティブな雰囲気に魅了されてしまいました。で、すぐに起業することも考えたんですけど、卒業する頃(97~98年)にはまだネットビジネス黎明期で、いろいろと不透明だったんです。そこでシステム会社への就職も考えましたが、当時田中くん(現グリー株式会社代表取締役社長)に出会って、彼と話しているうちに、やっぱりネット事業ではないと自分には意味がないと考え直しました。
■ 「旅の窓口」に敗北、起業のきっかけに
―その頃のネット業界というと、Yahoo!が急成長しはじめたところですね。
津田氏
そうです。ただ、実は楽天にはたまたまSFCの二期生と三期生がいて、まだ社員7名の小さな会社だったんですけど、結局そこを選んだんです。できるだけ小さな会社でいろんなファンクションに触れて、起業をするノウハウを得たかった、というのが本音です。そこで、楽天に大学4年の夏から正社員にしてもらって。5年間働きましたね。
2年間は楽天市場でシステム開発などをやって、次の3年間は楽天トラベルを担当しました。
―当時の旅行サイトといえば「旅の窓口(たびまど)」ですね。
津田氏
はい。いや、楽天市場ではまたたくまに急成長できたんで、少し甘く見てました(笑)。相当がんばったんですけど、「たびまど」には勝てなかったですねえ。
そこで気づいたんですけど、事業を興すには環境やビジネス戦略がちゃんとしていないと、どうがんばっても勝てないものは勝てないってことでした。だったら自分でやろう、と奮い立ちまして、2003年5月にフォートラベルを起業することになった、というわけです。
■ カカクコムの傘下に入った理由
―サービスインは?
津田氏
2003年10月に設立して、2004年1月にサイトを開設しました。で、2005年1月にカカクコム子会社になったというのが沿革です。
―お一人での創業ではないですよね。
津田氏
はい、創業の中心メンバーは僕と請川貴之の二人です。僕はいわゆるネットオタク。請川は、実は元パッケージツアー添乗員で、旅行についての知識は豊富でした。二人で飲みながら、旅行サイトのアイデアをぶつけ合ったうえでビジネスモデルを決めました。
―それが旅行のクチコミサイト?
津田氏
ええ。当時はブログはまだ普及してなかったですからね。いまでは旅行に特化したブログといえるかもしれませんが。
旅行者の行動プロセスを説明しますと、まず旅行に行きたいという「潜在需要」があって、次に「旅行商品探し」をします。
そして「準備/情報収集」がきて、実際に「旅行」に行きます。最後に「情報整理・報告」、というプロセスになるわけです。
ところが、いままでの旅行サイトのサービスは、需要と旅行商品探しだけに注力していて、そこで終わってしまっていたんです。
でも、本来ネットであれば、すべてのプロセスをフォローできるはずなんです。そこに請川と目を付けたわけです。いまでも、すべてのプロセスをユーザーの視点に立って提供している会社はうちしかないと思っています。
もうひとつわれわれがユニークなのは、サプライヤー側にもブログツールを提供しているところでしょうね。
―創業してすぐにカカクコムの傘下に入りましたが、初めから狙っていた?
津田氏
いえ、そんなことは考えていませんでした。ただ、2004年の夏頃から4-5社から提携、買収提示がくるようになりました。旅行会社からのオファーもありました。
よく考えたんですが、当時は社員は3人しかいませんでしたし、大きな企業のバックアップを得ることはよいことと考えました。
ただ、旅行会社の下に入るのは魂を売ることになるかなと思いました。旅行のクチコミサイトですから、旅行会社の中にはいられない、と。
そこで、もっとも条件がよく、かつメディアであるカカクコムのお話を受けることにしたわけです。
■ CGCではなく、CGMになるべき
―事業モデルをもう一度詳しく説明いただけますか?
津田氏
旅行者と旅行会社をつなぐメディアビジネスです。
収益モデルは、広告課金、クリック課金、成約課金がメイン。最近はコンテンツの販売を、お客様のサイトにOEMで行うことも始めました。今後はコンテンツ、マーケティングリサーチなどの展開を加速したいですね。
―Web 2.0的な企業と呼ばれることが多いと思いますが、それはどうしてだと思いますか?
津田氏
誰でも情報発信、受信ができるという点ではないでしょうか。ただ、とにかくフォートラベルの旅行というカテゴリはわかりやすいんですよ。SNSやブログは、コンテンツの量は多いですが、種類が多くてイメージがわかりづらいと思うんです。
それに対してフォートラベルに載っている情報は旅行に関することだけです。これがいいんだと思います。アットコスメもそうだと思うんですけど、情報が絞られて理解しやすいところが、注目していただいている理由だと思っています。
―なるほど。
津田氏
あとは、CGMといわれるように、コンシューマが作ったコンテンツは多くても、それをちゃんとメディアにしているサイトは少ないんですね。コンテンツを作ってもそれをメディアにしないと、CGC(コンシューマ・ジェネレイテッド・コンテンツ)と呼ぶべきだと思います。真にCGMといえるサイトは少ないのではないでしょうか。
―つまり、コンテンツを作ることはできても、それをメディア化できているサイトは少ない、ということですね。
津田氏
はい。CGMと呼ぶにふさわしいのはアットコスメとフォートラベルだけな気がします。われわれはカテゴリに特化していますから。
クックパッド(レシピサイト)、食べログ(グルメ)、なども、これからのカテゴリ特化型のCGMと思います。
―カカクコム自体はどうですか?
津田氏
カカクコムが2.0かどうかはわからないですが、CGMだと思います。ともかく、オールジャンルのCGMは存在してない気がします。GoogleのアドセンスはCGMだと思いますけどね、コンテンツマッチという意味で。
今後、各社がたくさんコンテンツを集めていっても、それをメディアにどうしていくのかが腕のみせどころなんでしょうね。
―ECとしてパック販売することはしませんか?
津田氏
今は考えないですね。メディアとしてもまだまだやることはたくさんありますよ。また、旅行以外のコンテンツもフォートラベルではやる気はありません。
■ インタラクティブメディアを目指す
―注目されるということはフォロワーも出るということですが、今後の戦略について聞かせていただけますか?
津田氏
そうですね。まずケータイでの投稿機能を年内に実現したいです。ケータイと旅行は親和性が高いんですよ。旅行先ですぐに写真を撮ってアップできますから。
―なるほど。
津田氏
閲覧はいまはできるが、投稿も今年には段階的にやります。ユーザーは、男性57%女性43%、年齢層は雑多という感じなんですが、旅行は万人向けのコンテンツですし、旅行の回数が多いイコール年齢が高いということになるので、ケータイでの投稿機能はよいチャンスになると思います。
あとは、目標ということになるでしょうが、CGMの次の世界を作りたいです。
―というと?
津田氏
旅行情報でいえば、サプライヤーが強かった世界から、いまではコンシューマが強い時代になってきました。でもそれもまた健全ではないと思うんです。
サプライヤーからのコンテンツをSGC、コンシューマからのコンテンツをCGCと呼んでいますが、そのパワーバランスをとることが必要です。いわばインタラクティブメディアを作りたいんです。
いまは情報をSGCとCGCを半分ずつ見せているだけですが、今後はSとCをコミュニケートさせていくことが大事と考えます。インタラクティブメディアになりたいですね。
旅行はその実現にもっとも良いコンテンツですから。旅行だけではなく、すべての自慢したいコンテンツは向いてるかもしれません。たとえば釣りのスポットは他人には教えないじゃないですか(笑)、釣り情報はCGM的じゃないと思うんです。
でも旅行は共有したい。写真を撮る必然性がある。そう思いませんか。
―思います(笑)。
津田氏
最後に、フォートラベルのWeb 2.0的サービスを紹介しますと(笑)、旅行者が世界で訪問した場所に関する投稿をするたびに、Web上の地図が塗りつぶしていくというコンテンツがあるんです。これなんかは、旅行の楽しみに味付けするよいスパイス的なサービスであると思います。
―面白いですね。たとえば、自分が好きな国とか、行った回数とかで、自分なりの世界地図を作れるとか、旅行者同士で世界征服(笑)を競うみたいなゲームコンテンツなんかもいいかもしれないですね。
津田氏
あ、それいいですね(笑)。なるほど、こういう発想からWeb 2.0的サービスを拡充していけばいいんだ(笑)。
―お役に立てて幸いです(笑)。今日はどうもありがとうございました。
|
小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/10/13 00:00
|
|
|
|
|