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「海外に自分たちのサービスを出すのが次のテーマ」ネットエイジグループ西川社長
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今回のゲストは、2006年8月に上場を果たした株式会社ネットエイジグループの西川潔社長です。長年日本のベンチャーシーンをリードしてきた西川氏のベンチャー哲学をお聞きしました。
■ ネット専業のインキュベーター
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ネットエイジグループ代表取締役社長の西川潔氏
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―ご無沙汰しております。改めて聞くのもどうかと思いますが、自己紹介をお願いできますか?
西川氏
ネットエイジグループの社長をしております西川です。ネットエイジグループはいまはやりの(笑)持ち株会社です。インプレスさんと同じですね。傘下にネットエイジキャピタルパートナーズとネットエイジの2つの事業会社を持ちます。
ネットエイジ自体は8年半前に創業した会社で、一貫してベンチャー事業のインキュベーターをしています。インキュベーションとかインキュベーターという言葉も日本語としてもこなれてきた感じがしますが、簡単にいうと事業育成会社といえますね。自分でやりたいことを社内で内製させて、うまくいったらスピンオフしてもらうという形をとっています。外向けに投資することも例外的にありますね。ネット向けとしては日本初のインキュベーターであると言えると思います。
―これまでの成果を簡単にまとめていただけますか?
西川氏
これまで育てた事業は30社です。そのうち7社は売却するなどM&Aの対象としました。最近は、売却モデルではなく、連結対象に保持することを前提としています。
―西川さんご自身のことを少し教えてください。
西川氏
僕は最初はKDD(現KDDI)にはいって、その後アーサーリトルに転職しました。『ウェブ進化論』の梅田望夫さんと同僚でしたね。あの頃から彼は天才の片鱗(へんりん)をみせてましたよ。その後、AOLジャパンの設立に参加したんですが、そのときには元アップルコンピュータの前刀さんと一緒でした。
―インキュベーターという業態からすると、日本で他に類似する企業はありますか?
西川氏
上場しているインキュベーションの会社としては、ドリームインキュベーターとデジタルガレージが近いですね。未上場だと伊藤穰一さんのネオテニー、アレン・マイナー氏のサンブリッジが近いと思います。
―それらの企業とネットエイジの違いは?
西川氏
大きな違いはないと思いますが、われわれはペーパープランから立ち会うことが特徴ですね。だから成功もあるけど失敗も多いです。上場までこぎ着けたのは、実はミクシィが最初です。まあ、ミクシィはわれわれの中で作った訳ではなく、(ミクシィ社長である)笠原君が会社創業をしたときに、われわれのオフィスで机と椅子を貸して、システム構築を手伝ったということくらいです。ミクシィ自体は、笠原さんがネットエイジをでてから作ったので、われわれのインキュベーションの成果とはいえないですね。
■ アイデアラボを日本風にアレンジして創業
―インキュベーターとしては上場を目指すより売却を目指すということですね?
西川氏
そのほうがキャッシュフロー的にいいですからね。M&Aのほうが資金を回すうえでは良いです。ただ、これまでは事業を作って売る一方でしたが、今後は上場して資金も集めたので、外の事業を買うことも増えるでしょうね。そもそもWeb 2.0銘柄は何が当たるか分からないですし。霧の中を進むみたいなもので、3年後の売上予測をしてもまったく意味ないですね。だからといって、分からないモノに投資するのは止めておこうというようなオトナの考え方はできないし、今後もしないですね。
―以前、御社の後藤さんにインタビューしたときに、オーバーチュアを作ったビル・グロスを理想としているとお伺いしましたが。
西川さん
そうです。ビル・グロスのアイデアラボという会社をロールモデルにしています。実際LA郊外の彼らのオフィスにも足を運びましたよ。彼らのタグラインは、スタートアップファクトリーというんですね。これは面白い、と思い、じっくり研究して、日本風にアレンジして作ったのがネットエイジです。彼らは豊富な資金があったわけですけど、自分達は1000万円でスタートしたので、やり方は変えざるを得ませんでしたけど。
創業当時、ほそぼそとオートバイテル風のサービスを作っていたら、ソフトバンクの孫さんが買ってくれて。ネット企業のM&A第一号だと思いますが、そのおかげでよいスタートを切れましたね。
■ ネットバブルとWeb 2.0の相違点は?
―99年から2000年にかけてのネットバブルと、Web 2.0の狂躁を重ね合わてみているようなことはありますか?
西川氏
ネットバブルのときはインターネットが好きでもないのにネット企業を急にバタバタと作った、という感じがしますね。流行にのって資金調達しようとしたんでしょう。そういうひとたちはバブルが弾けてすぐに撤退していきました。そういうのを揶揄(やゆ)して、B2B(バンク=銀行に戻る)とかB2C(コンサルタントに復帰する)だよね、とよく言ったものです。ゴールドラッシュと一緒ですね。
でも、本当にネットが好きで始めたひとたちは、歯を食いしばってがんばった。ローコストで粘りに粘って、がんばってきたんです。アットコスメの吉松くんはその典型的な例だと思います。雑草のように生き残ってきた。そういう企業以外はみんな消えていきました。
―同感です。
西川氏
投資側、VC側とそれを受け入れるベンチャー側のせめぎ合いと思うんですが、VCはテーマ性を求めているんですよ。昔ならドットコム企業、今ならは2.0的なサービスであれば出そう、と思っているわけです。それを察知しためざとい起業家は2.0風に見えるサービスを作ることにばかり熱心になります。それがバブルにみえるんでしょう。
GoogleやYouTubeをみて、2.0=企業価値がある、すげーという感じで盛り上がっているんです。投資家達のマインド、気持ちがそういう感じになっているといえるでしょうね。
それと、VC側もまだ豊富な資金があって、それを消化しなければならないという事情があります。どっかで化けの皮がはがれてくると思いますけど、売り上げが全然ないような企業に投資したりしてしまっているようにもみえますね…。
ただ、ドットコムやB2Cは全然だめだと言われた時代がありましたが、いまではミクシィを始め、エンドユーザー向けの事業で黒字化しているところもでてきて、儲かると証明できたじゃないですか。だから、CGMのようなサービスでも、十分儲かる可能性があって、それをみんなが分かってきた感じがします。
また、Web 2.0で儲かるのは広告モデルしかないのか、トラフィックを広告的な売上でマネタイズするしかないのか、というとそんなことはないわけです。もちろん、それでも全然いいけど、僕が予見するのは、スモールアマウント、たとえば10円、100円のような小額課金モデルによる事業も成り立ってくると思うんですよ。
Googleに買われた(オンラインワープロの)Writelyは無料でしょ? スケジューラー提供も無料というところがある。そういう会社ってどうするんでしょうね。ビジネスツールに広告は載せられないでしょう? 仕事中に余計なものだから。
―ビジネスツール提供なら有料課金できる、ということですね。
西川氏
消費者の数が多ければ、一人100円を何十万人からとるということができればいいわけです。無料+広告というサービスに加えて、小口課金モデルができればいいはずです。
―話は変わりますが、他に気になる企業はどんなところがありますか?
西川氏
はてな、はどうなるんでしょうね。近藤さんは将来を見据える目が鋭いし、会社のカルチャーがGoogleぽい。梅田さんを社外取締役に迎えたのも面白いし。いまはコアなユーザーしかいないのかもしれないけれど、もう少し大衆化したら化けるかもしれないと思います。上場もしないし売却もしないモデルで、ユーザーも喜び会社も健全に成り立つというのも一つの成功例と思いますね。
上場したところではドリコムの内藤くんも、ビジョンや先を見る目があるので期待しています。単なるブログの開発会社で終わる事もないと思います。
後は当社のサービスでもWeb 2.0の直球ど真ん中のサービスがいろいろあります。これをどう育成していくか。まあ、ユーザーの声を聞いては改善、着実に誠実にやっていけば悪い事はないという楽観論でやっていこうとは思っていますが。
日本のネットベンチャーもようやく海外に目を向けるようになっているので、これも期待しています。自分たちのテーマとしては海外に自分たちのサービスを出してみるということをしたいですね。アメリカだけではなく、意外な国に出すのはいいと思うし。サーバーは日本において、ボランティアというかエバンジェリストを擁して、火をつけていくことをやってみたいですねえ。
それから、タイルファイル(http://tilefile.co.jp/)という、映像共有を中心としたソーシャルネットワークサイトを近々オープンする予定です。YouTube+Flickrを足して2で割らない、みたいな(笑)。これもぜひ期待してください。
―分かりました。本日はどうもありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/11/07 00:00
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