本日のゲストは、オンラインによるソフトウェア販売の草分け的な存在である株式会社ベクターの梶並伸博社長です。
■ ソフトの書籍販売からネット販売へ
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代表取締役社長の梶並伸博氏
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―まず自己紹介をお願いします。
梶並氏
ベクターの梶並と申します。もともと大学を卒業してから少しの間公務員をしていたのですが、その後日経BP(当時は日経マグロウヒル)でパソコン関係のメディアを作っていました。7年ほど働いてから退社して、1989年2月3日に会社を作りました。ネットとは関係ない創業で、フリーソフトをCD-ROMに焼いて、書籍として販売するという事業です。それが、Windows 95の登場を経て、1995年12月からネット上でソフトの配布を始めて、いまのベクターにつながっています。株式会社ベクターの形態が整ったのは1996年から1997年、ですね。
―ベクターのメイン事業は?
梶並氏
基本はPC用のソフトのライセンスのダウンロード販売です。PC本体や周辺機器の販売もしています。後は自社サイトやメルマガ等への広告販売などですね。
ただ、いまのところ売上の規模としては、ソフトの販売手数料がほとんどですね。
―オンラインでソフトウェアを売り始めたきっかけは何でしょう?
梶並氏
われわれにはソフトウェアというコンテンツが先にあったわけです。これが書籍という媒体を使って売ることから、ネットへと移っただけです。
■ 2.0的な新しい試みに着手
―最近、一風変わったブログのサービスを始めたとお聞きしています。
梶並氏
Vector maglog(http://maglog.jp/)のことですね。
maglogは、500MBの容量を無料で提供する会員制サービスで、自分のコミュニティも作れるし、掲示板やアンケート作成などの機能も持っています。
―ビジネスモデルは?
梶並氏
実はまだよく考えていません(笑)。とりあえずやってみようと。
―そう思われた動機はなんでしょう?
梶並氏
ブロードバンドになってフリーソフトは爆発的にのびると思ってたんですけどね、実は期待はずれだったんです(笑)。むしろ割合からいうとニーズが減ってきたようにさえ感じます。
PCの普及率は1995年の時点でだいたい15%くらいだったと思いますが、インターネット以前の普及はソフトがPCの普及を加速させるドライバーだったわけです。ところが1995年以降はインターネットがドライバーになってしまった。それが最近では顕著になっていると感じているわけです。
だから、ソフトに依存していると事業としての伸びはないと判断し、インターネットサービスを立ち上げていかなくてはならないと考えたわけです。
―なるほど。しかし、その意味では先行している企業が多くいますし、新興企業も続々と参入しています。どう差別化するのでしょう?
梶並氏
ベクターは、前はソフトウェアというコンテンツを頼りにオーディエンス(ユーザートラフィック)を獲得してきました。ありがたいことに、いまはそれなりのユーザーを抱えるサイトに成長しました。
であれば、今度は、今得ているオーディエンスをテコに、新しいコンテンツを作ろうとしていけばいいと考えています。
―ユーザー数はどのくらいいるのでしょう?
梶並氏
ユニークユーザーは1日あたり30万~40万人、月間600万人、年間1200万~1300万人という感じです。
■ SNS的ブログとオンラインRPGに注力
―新しいコンテンツのビジネスモデルは?
梶並氏
まずmaglogなんですが、さっきも言ったようにまだ何も考えていないですね。mixiなどのSNSに触発されて作ってみたわけですが、SNSそのものだと、雪の玉が坂を転がっていくようにどんどん大きくなるわけで、ここまで差がつくと先行者には勝てません。だから、SNS的な要素を持つブログを作りました。そのうちに何らかの手数料収入を得る仕組みを考えるつもりです。
また、われわれはオンラインのMMORPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game:数百人から数千人規模のプレーヤーが同時に1つのサーバーに接続してプレイするネットワークRPG)に力を入れていて、月額のユーザー課金モデルでサービスをしています。でも将来はアイテム課金での小額課金を展開したいと思っています。ファンタジーであれば鎧を買ったりドーピング剤を買ったりするようなときに、発生するでしょう。課金モデルがうまくできてるジャンルだと思います。
―オンラインゲームはケータイに食われませんか?
梶並氏
オンラインゲームは、現状はまだケータイにはシフトしていないと思いますよ。プレイステーションや任天堂のマーケットは縮小しているかもしれませんが、モバイルではPC自体のコンソールを流用しているだけで、過去の資産を使っているだけです。やっぱり画面が小さいのはマイナスです。
それに、MMORPGは開発会社は数えるくらいしかないんですよ。プレイステーションなどのコンソール機が普及しなかった国、たとえば韓国などでは、PCの分野でのゲームが普及していて、MMORPGの世界的な広がりに後押しされて、非常に大きなビジネスを狙える立場にいます。
われわれはMMORPGの提供をしているわけで、ゲームを作っているわけではありません。あくまでパブリッシャーとしてゲームを運用しています。
―ゲームは自作でしょうか?
梶並氏
いえ、韓国製を使っています。台湾や中国、一部アメリカのものもありますね。この分野は海外勢が圧倒的です。
■ ブログがフリーウェアならmaglogはシェアウェア
―maglogについてももう少し伺います。SNS的とおっしゃりましたが…。
梶並氏
まず基本的な考え方なんですが、ブログはわれわれのコンテンツでいうとフリーウェアみたいな存在です。われわれのサイトにはフリーウェアと、シェアウェアが存在します。であれば、シェアウェアに相当するサービスを作りたい、それがmaglogなわけです。
ブログは不特定多数の相手に対する無料のコンテンツですね。maglogは特定の読者という概念を持っていて読者を制限できます。FreeとPaidという領域を作れるようにしようと考えています。
その中で、自分のシェアウェアや記事などを販売できるようにしたいと思っているわけです。
―なるほど。CGC(コンシューマーによるコンテンツ)のC2C的な販売モデルですね。
梶並氏
われわれは、ベクターでの支払方法としてVectorパスポートと、Webマネー、クレジットカードを用意しています。シェアレジというのですが、この仕組みをmaglogにも応用できると思っています。
―SNS的要素はいまのところ薄い感じがしますが。
梶並氏
読者同士のつながりは最初の段階では考えてないというのが本当です。まずは昔でいうROM(リードオンリーメディア)的な人たちでいいと思っています。
―勝算はありますか?
梶並氏
分からないですね(笑)。前例がないですから。仕組みがないから売れないのか市場がないのか、あるいは大きな市場があるのか、これから確かめていこうと思っています。
―分かりました。今日はありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/11/21 08:59
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