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マガコマースを実現する雑誌専門オンライン書店「Fujisan.co.jp」西野社長
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本日のゲストは、アマゾンジャパン株式会社の立ち上げを行い、さらには雑誌定期購読サービスである株式会社富士山マガジンサービスを立ち上げた、西野伸一郎社長です。
■ アマゾンジャパンの立ち上げに寄与
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代表取締役社長の西野伸一郎氏
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―自己紹介をお願いいたします。
西野氏
富士山マガジンサービスの西野です。オンラインで雑誌の定期購読をメインにしたeコマースサイト「Fujisan.co.jp」を運用しています。
富士山の前には、Amazon.co.jpの立ち上げをやりまして、1998年から5年間ほど、書籍部門のGM、いってみれば本屋の店長をやってました(笑)。
―アマゾンジャパンはネットエイジの西川さんと共に交渉されたと聞きました。
西野氏
そうですね。僕はもともとNTTで、システムのコンサルなどをやってたんですが、1993年から1995年にNY大学に留学していて、ちょうどそのころにMosaicが出てきたりとインターネットが盛り上がってきたわけです。
帰国してからNTTで、シリコンバレー企業とのアライアンスや、日本でのJV作りをする部門に異動しまして、そのころ西川さんと知り合いました。西川さんとネットエイジを立ち上げることになって、その後Amazon.comの日本誘致に関わることになった、というのが経緯です。
Amazon.comのジェフ・ベゾスに、日本でもやろうよというメールをしたら、じゃあとりあえず来い、ということになって、西川さんとともにアメリカに行ってきました(笑)。
■ アマゾンから富士山へ
―アマゾンジャパンを退社されてご自身で起業した理由は?
西野氏
Amazon.co.jpが順調に軌道にのって、僕自身はネットエイジの役員も務めながらアマゾンに関わっていたわけですけど、そのころにちょうどネットエイジでEIR(アントレプレナー・イン・レジデンス=インキュベーター的企業に籍を置きながら起業を目指す制度)を利用していた相内遍理という男がいまして、彼はいまは富士山の副社長になっているんですが、その彼が雑誌専門の購読サービスをやりたいっと言ってきたわけです。それに触発されて、じゃあ一緒にやるかというわけで、2002年7月に創業することになりました。
―富士山という社名、サービス名の意味は?
西野氏
Fujisanというドメインがとれただけ、なんですけどね。日本人でも外国人でも間違いようがないスペルだということが大きいですが、まあ日本を代表するという意味かな。うちのオフィスのミーティングルームは広重と北斎という名前を付けていますが、晴れた日は富士山がオフィスから見えますよ。
ちなみに、Amazon.comを誘致するためにベゾスに会いにいったときのプロジェクト名は、信濃川、というんです(笑)。Fujisan.co.jp自体は2002年の12月にサービスインしました。
―オンラインショップとしてアマゾンとの違いは?
西野氏
雑誌の定期購読をやっている、ということですね。雑誌×IT、というのがビジネスドメインになります。インプレスさんもある意味近いですよね。雑誌とテクノロジーに特化しているeコマースです。
■ 出版社にメリットのある“持たざる経営”を志向
―雑誌の定期購読というサービスはあまりない?
西野氏
日本ではなかなかないですね。アメリカではSubscription Agencyというんですが、定期購読をとりまとめて販売するというモデルはよく見られます。日本の出版業界は、割と閉鎖的で、取次書店流通がメインです。だから、足で営業していってサービスイン時に241誌を取り扱えるようになるのは一苦労でした。様子見が多くて。ただ、雑誌の市場規模は縮小気味なので、少しでも売れるチャンスがあるならば、という感じで増やしていきましたね。いまでは2300誌ほどです。最新号だけではなくバックナンバーの取扱いもしています。
―収益は取扱い手数料になりますか?
西野氏
そうです。そもそもeコマースは広告と比べるとマージンが薄い、耳かきで拾い集めるようなものです。雑誌販売するときに、一般の書店の通常マージンは20%程度です。ところが実は、僕らは35%くださいと頼んでいます(笑)。それは平均的ないい方で、それより高いところも低いところもありますが、ならすとそのくらいになります。
―一般の書店よりも高いマージンをとれる理由は?
西野氏
理由はいくつかあって、書店を通すことはそもそも、返品されるリスクがあるわけです。日本では再販制度に守られていますから。返品率をみると、今年は40%越えてるんではないですかね。
それに比べると、うちのモデルは定期購読だから実質返品ゼロであり、年間前金でキャッシュフローがいいという利点を持っています。だから、多少マージンを上乗せしても、出版社としては助かる、というわけです。
―なるほど。
西野氏
それと、書籍と雑誌の最大の違いは、雑誌は広告が入るメディアであるということですね。雑誌をビジネスとしてみると、販売料収入と広告料収入の二つがあります。販売料収入の80%をわれわれに支払ってくださるところもありますよ。それだけのメリットがあるんです。
―在庫はしないんですね?
西野氏
基本はしないですね。定期購読を行っている出版社からは直接買い手に発送していただいています。また、定期購読をそもそもやっていないような出版社もありますので、いちいち宛名を書いたり梱包したりしたくないというので、そういうものをワンストップでうちがうけることもありますね。梱包、配送、プロモーションまで請け負うこともあります。ただ、基本は持たざる経営にしています。
―サイトの開発はどういう体制でしょうか。
西野氏
バークレーに開発陣がいますので自社開発しています。Amazon.comはシアトルセントリックといって人材をシアトルに全部集めています。われわれは、たまたま相内の知り合いがバークレーに多かったことで、バークレーに開発者を集めることになりました。デメリットもあるが、グローバルにはしやすいですね。
―いま社員は何人くらい?
西野氏
40人ちょっといます。東京に30人、バークレーに10人ちょっと。
■ マガジン+コマース=マガコマース
―雑誌の市場は縮小しています。今後別の分野に手を広げる可能性はありますか?
西野氏
確かに出版業界、雑誌の市場が伸びていくとは思わないです。年間1~2%ずつ、減っているという統計もあります。
しかし、書店ではなくオンラインで購入するというチャネル自体は拡大していますよ。オンラインでみると、無料のコンテンツがどんどんできていますが、プロの編集者が作った良質のコンテンツは、紙でしか活用されていないです。雑誌を作っている人たちがもっとネットデビューしなくてはならなくて、そこをサポートするという事業機会はあると思っています。
―具体的にいうと?
西野氏
マガコマース、つまりマガジンとコマースの造語なんですが、われわれはそう呼んでいて、たとえば雑誌を読んでいて、そこに載っている広告や商品をみて、興味を引かれて、それを買いたいという人はいますね。それをサポートしていくことはわれわれのミッションかと思っています。
広告を出している人、雑誌社、読んでいる人たちにメリットを出していけると思いますね。雑誌の購買をしているということは、その中に掲載されている商品を買うという可能性は高いです。つまりコンバージョンレートが高い。雑誌というメディアはあきらかに、人々の趣味し好を如実に示すメディアですから、それに基づいて何かを買うというのはあります。
また、電子書籍ではなく電子雑誌の市場もあると考えています。電子書籍の市場規模は90億円くらいかと思いますが、去年は45億円程度で、倍増してきているわけです。それでもまだ本格的には立ち上がっていない。そして、雑誌は電子化されているものはまだないんです。本の市場規模は1.3兆円、定期購読の市場を2500億円とみているんですが、PC版からまず、雑誌を完全に電子化してやりたいと思っています。DRMに配慮しながらね。
―ライバルはいないんでしょうか?
西野氏
アマゾンは定期購読をやっていないので、直接あたるということはないですね。バックナンバー販売などはぶつかるけれど…。セブン&アイは雑誌の定期購読を一応やっていますけど、倉庫をもって書店として並べるだけなので、一般の書店とあまり変わらない。僕らは直接出版社とつながっているのでちょっと違いますね。
―先ほどの電子雑誌を手がけていきたいという狙いはなんでしょう?
西野氏
Web 2.0のテーマでいえば、テキスト情報がデジタライズされること自体が大きいと思います。Amazon.comもGoogleも、書籍の電子化について取り組んでいますね。世界の情報を体系化するというミッションをGoogleは掲げています。
無料で書いたものは整理されはじめているんですけど、専門的、例えば法律事例など、雑誌になっているもの、プロが整理したものは、ちゃんと電子テキスト化されていないことが多いと思います。情報がそのまま検索に引っかかっていくべきであって、それがたとえ有料であってもいいじゃないか、そこにあることがわかれば、と思うわけです。
雑誌とITにこだわるわれわれとしては、検索対象になっていないことが困ります。購読を申し込む際には、ブランディングされた雑誌の名前から買うことが多いですが、そもそも雑誌の名前さえ知らない場合はどうするか。やはり内容を検索して、そこから買うということが必要と思うし、避けられない現象と思います。
―同感です。
西野氏
出版社の場合、手塩にかけてつくった雑誌は、バックナンバーとしてはあるが、それはめったに売れないし、不良在庫として置かれたコストセンターに過ぎないわけです。しかし、それらをデジタル化すればかさばらないし、それを欲しいという人を見つけることも可能です。つまり、ロングテールになっていくためにはデジタル化されるべきなんです。デジタル化されて、検索対象になって、雑誌の記事も拾い読みされるようになるべきでしょう。
―非常によくわかりました。本日はありがとうございました。
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小川 浩(おがわ ひろし) フィードパス株式会社 COO。1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業および在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業。1999年9月にアジアと日本をまたがるSNSを開始。その後日立製作所にてコラボレーションウェア「BOXER」を立ち上げたのち、ネットビジネス・プロデューサーとしてサイボウズにジョイン。ブロガーとして「Web2.0 BOOK」「ビジネスブログ」シリーズなどの著作がある。 |
2006/11/28 00:00
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