F5ジャパン、アプリ配信の最適化やWAN高速化に対応した「BIG-IP v10」

ボックス型ハードウェアの最上位「BIG-IP 8900」も発表

米F5 Networks 製品マネジメント担当シニアディレクター、ジェイソン・ニーダム氏
BIG-IP v10ではプラットフォームの統合をサポートする
iSessions機能により、BIG-IPを対向で設置してのWAN高速化が可能になった

 F5ネットワークスジャパン株式会社(F5ジャパン)は4月23日、アプリケーションデリバリコントローラ「BIG-IPシリーズ」向けソフトウェアの新版「BIG-IP v10」を発表した。メジャーバージョンアップは4年半ぶりとなる。また、ボックス型の最上位となる新ハードウェアプラットフォーム「BIG-IP 8900」も発表した。

 BIG-IPシリーズは、アプリケーション/サービス配信を最適化するためのプラットフォームで、アプリケーション配信の制御と高速化、セキュリティといった機能を提供している。今回新たに提供されるBIG-IP v10は、この根幹となるソフトウェア。従来同様、独自のTMOSアーキテクチャをベースに、高い処理能力を提供する。

 新版では、さまざまな機能向上を果たしているが、その特徴を簡単に表現すると、「アプリケーション配信のさらなる最適化、コスト削減、運用・管理業務の効率向上によって、ビジネスの価値を最大限に高められる」(米F5 Networks 製品マネジメント担当シニアディレクター、ジェイソン・ニーダム氏)という。BIG-IPでは、Local Traffic Manager(LTM)、Application Security Manager(ASM)、WebAcceleratorといった機能を提供しており、これまでは、ユーザーは必要に応じてそれぞれを別々に導入してきた。しかしBIG-IP v10では、3つの機能を1つのハードウェアプラットフォームに統合できるため、消費電力や設置スペース、管理にかかるコストなどを節約できる。

 また、ハードウェアプラットフォーム上のCPU、メモリ、ディスクを特定のサービスに割り当てられる機能を提供し、リソースが特定のサービスに占有されてしまうような状況を防ぐ機能も備えている。

 加えて、WAN高速化を行う「iSessions」機能も特筆すべき強化点だ。これは、同社のWAN最適化製品「WANJet」の技術を活用して、WAN経由の通信を最適化するもので、「BIG-IP」を対向で設置して利用する。ニーダム氏は、「現在の市場はWAN最適化とWeb高速化が一体化しておらず、お客さまからアプリケーションを高速化したいという要望をいただいても、アプリケーションの利用シナリオがわからなければ回答できなかった」という点を指摘。Web高速化・最適化の機能を備えるBIG-IPにWAN高速化機能を追加することで、ユーザーの要望に対してシンプルに回答できるようになったとアピールした。

 具体的な機能としては、圧縮、SSL暗号化、レイヤ7レベルのQoS、TCPの最適化といった機能が利用できるほか、重複排除などの機能追加や、WANJetとの連携といった強化を行っていくとのこと。F5ジャパンのシニアプロダクトマーケティングマネージャ、武堂貴宏氏は「WAN帯域が不足した場合に帯域を上げるのは簡単だが、実はそれに伴ってネットワーク機器などのリプレースが大量に発生してしまう。センター側ですでにBIG-IPを利用していれば、拠点側に1台追加するのみでよく、一番コスト効率が高い」と述べ、メリットを強調した。

 管理面では、アプリケーションの導入をウィザード形式で容易に行える「アプリケーション・テンプレート」機能が搭載された。SharePoint、Microsoft Exchange、VMware View、Oracle Application Server 10g、SAP ERPなどさまざまなアプリケーションに対して、BIG-IPを最適化するプロファイルやポリシーを迅速に適用できるため、セットアップ作業を短時間で行える。このほか、LADPやRADIUS、Active Directory、TACACS+といった認証システムとの統合機能、ダッシュボード機能、複数のルートドメインを一括管理する機能の追加などにより、管理性の向上を実現している。

BIG-IP 8900

 一方、新ハードウェアプラットフォームのBIG-IP 8900は、ボックス型ハードウェアの最上位に位置する製品。クアッドコアCPUを2基搭載するなどの強化が図られており、最大12Gbpsのレイヤ7スループット、最大5万8000TPSのSSL処理性能を実現した。また、Fast Cache、IPv6ゲートウェイ、レートシェーピング、SSLオフロード Intelligent Compressionの各機能を標準搭載する。

 F5ジャパンでは、新機能を訴求するのみならず、「企業経営者がビジネス価値を最大化するために当社が何を提供できるか、という解がBIG-IP v10だ」(代表取締役社長の長崎忠雄氏)としており、それらの新機能が提供するビジネス上の価値をアピールして、BIG-IPシリーズの販売を進めたい考えである。


(石井 一志)

2009/4/23 14:29