「ノートPCを再びモバイルの世界へ」、富士通がHDDデータの遠隔消去サービスを発表

ウィルコムのPHS網を利用し、2009年第3四半期に提供開始予定

新ソリューションの特徴
低消費電力、人口カバー率の高さ、小型化が可能、といったPHSの特徴を生かしている
新ソリューションの動作イメージ
富士通の経営執行役 パーソナルビジネス本部長、五十嵐一浩氏

 富士通株式会社と株式会社富士通研究所、株式会社ウィルコムの3社は5月7日、ノートPCのHDDのデータを遠隔から消去するソリューションを開発したと発表した。富士通が2009年第3四半期より、主に法人向けにサービスを提供する予定で、通信インフラとしてはウィルコムのPHS網を利用。初年度10万台以上での利用を目指し、サービスを開始するとしている。

 このソリューション提供にあたって3社では、専用の通信モジュールを共同開発。これをノートPCに組み込み、ウィルコムのPHS網を利用してアクセスすることにより、ノートPCの紛失・盗難時における迅速なデータ消去を可能にした。具体的には、データそのものを消すのではなく、HDDをあらかじめ暗号化しておき、その暗号鍵を消去することで、HDDのデータを読み取れなくする仕組み。紛失に気付いたユーザーが管理サーバーを通じて消去コマンドを送信すると、数分で暗号鍵が消去される。こうして暗号鍵が消去されると、二度と復元できず、情報の漏えいを防止できるという。

 このソリューションの特徴は、独自のBIOSと通信モジュールの組み合わせにより、PCが起動していない状態でも消去コマンドの受信を実現した点と、コマンドの送受信に、99.4%の高い人口カバー率を持つ、ウィルコムのPHS網を利用する点だ。また、常時待ち受けになっているといっても、待機電力が1mA以下と低消費電力のPHSモジュールを利用しているため、長時間の待ち受けが可能なこともメリット。目安としては、バッテリ容量が残り半分の状態でも、1週間以上の待ち受けが可能になっている。

 加えて、既存サービスのように特定のファイル、フォルダだけを対象にするのではなく、HDD内の全データを対象としているほか、HDD内のデータが消去されたことを証明するレポートを提供。このレポートでは、コマンド受信、消去実行、PCへの最終ログインなどの時刻情報が提供されるので、紛失・盗難時から消去までの間にPCが使用されなかったことも証明できるとした。

 またこのソリューションは、データ消去機能以外にPCの起動ロック機能も備えており、ひとまずPCをロックしてから捜索し、見つからない場合にあらためて消去する、といった利用法も可能。ロック時にも提供されるレポートには、PCと通信した基地局の緯度・経度情報が含まれていることから、PC捜索の手がかりとしても活用できる。

 富士通の経営執行役 パーソナルビジネス本部長、五十嵐一浩氏は、現在のモバイルPCを取り巻く状況について、「場所にとらわれず効率的に仕事ができ、業務を革新できる環境が整ってきたが、セキュリティの問題が厳然として存在し、ノートPCを持ち出さないようになってしまった」点を指摘。このソリューションでセキュリティ面をクリアにし、「ノートPCを再びモバイルの世界へ復帰させる」と述べた。

 なお、インフラはウィルコムのPHS網を利用するが、具体的なサービスについては、富士通から提供される予定。対象となるPCは富士通製の法人向けノートPCで、BTOによって専用モジュールを組み込み、同社とサービスを契約して利用する。五十嵐氏は、価格については未定としたものの、例として、月額提供の場合は1台あたり数百円を目安に検討しているとした。専用モジュール自体も、コマンド待ち受けと結果送信以外の通信機能を持たず、これまでの通信モジュールと比べれば安価に提供できる見込みという。


(石井 一志)

2009/5/7 14:58