日立が2008年度連結決算を発表、最終赤字は7800億円

2009年度も2700億円の赤字見通し

執行役副社長の三好崇司氏

 株式会社日立製作所(以下、日立)は5月12日、2008年度(2009年3月期)の連結決算を発表した。

 それによると、売上高は、前年比10.9%減の10兆3億円、営業利益は同63.2%減の1271億円、税引前純損失は前年から6146億円悪化した2898億円の赤字、当期純損失は前年から7292億円悪化した7873億円の赤字となった。

 同社 執行役副社長の三好崇司氏は、「デジタルメディア製品の赤字は縮小したものの、売上高の減少に伴い、特に電力・産業システム部門、高機能材料部門が悪化し、前期比で63%の減益となった」と述べた。営業利益は、2月3日時点の予想と比べて871億円改善したが、繰延税金資産の一括評価減によって、同日予想と比べて当期純損失が873億円悪化している。

 国内売上高は前年比10%減の5兆8614億円、海外売上高は同13%減の4兆1389億円。海外では北米が前年比12%減の8995億円、アジアが同12%減の1兆9112億円、欧州が同16%減の9044億円、その他の地域が同11%減の4236億円と、いずれの地域も前年を下回った。海外売り上げ構成比は前年の42%から41%に減少している。

2008年度の業績概要地域別の業績概要

 部門別に見ると、情報通信システムの売上高は前年比6%減の2兆5944億円、営業利益は同52%増の1766億円と減収増益。

事業部門別の売上高
事業部門別の営業損益
情報通信部門の業績概要

 そのうち、ソフトウェア/サービスの売上高が前年比3%減の1兆2721億円、営業利益が同7%増の1150億円。内訳はソフトウェアの売上高が同8%減の1594億円、サービスの売上高が同2%減の1兆1127億円。

 一方、ハードウェアは、売上高が前年比9%減の1兆3222億円、営業利益は同632%増の615億円となった。内訳は、ストレージの売上高が同12%減の7676億円、サーバーは同19%減の712億円、PCは同25%減の363億円、通信ネットワークは同11%増の1484億円となった。

 アウトソーシング事業やコンサルティング事業が堅調に推移。また金融機関向けを中心にSIの売り上げは減少したものの、プロジェクトマネジメント力の強化で収益性が改善したという。またハードウェアは、通信ネットワークのNGN向け機器が好調で、同分野では増収増益を達成。一方でストレージは、為替の影響を受けて減収に終わった。

 HDDは、売上高こそほぼ前年並みになったものの、ヘッドおよびメディアを中心とした大幅な原価低減、競争力のある新製品のタイムリーな市場投入と製品構成の最適化、といった構造改革の成果で2億800万ドルの黒字に転じ、通期の黒字化を達成した。ただし次の四半期に組み入れられる2009年1~3月期は、需要の低迷に伴って売上高が前年同期比28%減となり、損益も赤字に転落しているという。三好氏は「次の四半期も厳しく、6月までは減収減益にならざるを得ない。通年でも赤字が少し残る可能性がある」とした。

 デジタルメディア・民生機器の売上高は前年比16%減の1兆2615億円、営業損失は44億円改善したが1055億円の赤字。10月以降の急速な需要減少を受け、光学ドライブなどのデジタルメディア製品の売り上げが減少。価格下落や海外販売チャネル絞り込みによる在庫処分などの影響を受け、前年に引き続いて大幅な赤字となった。

 電子デバイスの売上高は、前年比11%減の1兆1510億円、営業利益は同49%減の273億円。アジア向け検査・解析装置の売り上げが減少し、日立ハイテクノロジーズが減収・減益。ディスプレイでは、中小型液晶へ経営資源を集中し、2008年度前半までは中小型IPS液晶が拡大したが、11月以降の急速な需要減少の影響により、減収、損益悪化となった。

 これら以外の各部門の業績では、電力・産業システムの売上高は前年比7%減の3兆3150億円、営業利益は同82%減の242億円。高機能材料の売上高は前年比17%減の1兆5568億円、営業利益は同80%減の277億円。物流およびサービスの売上高は前年比14%減の1兆899億円、営業利益は同17%減の230億円。金融サービスは売上高が前年比7%減の4120億円、営業利益は同60%減の102億円となった。


2009年度の見通し

 また日立では、あわせて、2009年度の業績見通しを発表している。

 2009年度の売上高は、前年比11%減の8兆9000億円、営業利益は同76%減の300億円、税引前純損失は1198億円改善した1700億円の赤字、当期純損失は5173億円改善した2700億円の赤字とし、赤字幅の縮小を図る。

 三好氏は、「足元の状況も厳しく、年末から第4四半期にかけて若干戻るかという見方をしているため、前年比89%で計画している。このような売り上げなので、営業利益も本年度に対して悪化しているが、固定費の削減による2000億円の改善などを盛り込んでいる」と説明した。

 各セグメント別では、情報通信システムの売上高は前年比9%減の2兆3500億円、営業利益は同56%減の770億円。情報通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高が同11%減の1兆1130億円、営業利益は同39%減の700億円。ハードウェアは売上高は同8%減の1兆2200億円、営業利益は同89%減の70億円を想定する。

 「2008年度は堅調だったネットワークの需要が一巡したほか、サーバーやストレージで為替の影響を見ており、全体的に減少する見込み。(経済)環境的にも厳しいが、金融関係ではメガバンクの次期システム、地銀の共同センターなどの案件で需要強化を図る。また、時勢を反映して、セキュリティ、IT統制、環境対応といったニーズがあるので、そのあたりに注力しながら事業を展開する」(三好氏)としている。

 電子デバイスは、売上高が前年比17%減の9600億円、営業利益は同96%減の10億円。電力・産業システムの売上高は前年比9%減の3兆100億円、営業利益は同79%減の50億円。デジタルメディア・民生機器の売上高は前年比14%減の1兆900億円、営業損失は925億円改善するもの130億円の赤字。高機能材料の売上高は前年比20%減の1兆2400億円、営業利益は同3%減の270億円。物流およびサービスの売上高は前年比12%減の9600億円、営業利益は同31%減の160億円。金融サービスは売上高が前年比22%減の3200億円、営業利益は同37%増の140億円を、それぞれ見込んでいる。


(石井 一志)

2009/5/13 00:00