アルカテル、ネットワークとWebの世界を結びつける戦略を説明
Alcatel-Lucent アプリケーション・ソフトウェア・グループ ネットワーク・アーキテクチャ ディレクターのジャック・コジック氏 |
アプリケーションイネーブルメントでは、ネットワークとWebの世界の融合を目指すという |
ネットワーク・Web間のプロトコルを変換する部分と、API管理の部分をアルカテルが提供する |
日本アルカテル・ルーセント株式会社(以下、アルカテル)は5月15日、ネットワークビジネスに関するプレス向けの説明会を開催。同社が推進している「アプリケーションイネーブルメント」という戦略について、Alcatel-Lucent アプリケーション・ソフトウェア・グループ ネットワーク・アーキテクチャ ディレクターのジャック・コジック氏が解説を行った。
現在のインターネットの世界では、GoogleやYahoo!、PayPalといった、サービス事業者がエンドユーザーに利用されているが、こうした事業者は主に広告から収益を得ている。一方で旧来の通信事業者は、インターネットへの接続を提供し、回線収入を事業の柱としているところが多いが、「その上でWebの世界が新しいトラフィック、収益を生み出していても、その収益がネットワーク側には入っていかない」(コジック氏)のが現状で、ビジネスとしてのうまみが少なくなっている。
こうした事態を打開するためにアルカテルが打ち出しているのが、アプリケーションイネーブルメント(アプリケーションの有効化)という考え方だ。例えば、通信事業者が持っている位置情報、支払いチャネル、プレゼンス、加入者のプロファイル(これは加入者の承諾が全体だが)といった資源をサードパーティに解放し、有効なアプリケーションを作ることができれば、アプリケーションを活用するサードパーティ側だけでなく、利用料金を徴収できる通信事業者にもメリットがある。また、それによってユーザーエクスペリエンスが高まれば、エンドユーザーにもメリットが生まれるというわけである。
実際に、ネットワーク資源と連携したアプリケーションを作るためには、通信事業者がAPIを公開することになるが、そのままのプロトコルではWeb側のサービスとの連携が難しいため、ネイティブAPIを例えばRESTfulなWeb APIに変換してあげる仕組みが必要になる。また、アクセス/ポリシーの制御やSLA、プロビジョニング、課金といった管理・制御の仕組みも必要になることから、アルカテルではこういった部分をミドルウェアとして提供し、ビジネスを進めていくという。
業界でも、こうしたアプリケーションイネーブルメントに向けた標準化の取り組みが行われており、その代表的なものとして、コジック氏はRCS(Rich Communication Suite)を紹介した。これは、事業者間で異なるサービスを共通して利用できるようにするもの。RCSによって、メッセージング、プレゼンスなどの機能を事業者、デバイス、アプリケーションの垣根を越えて利用できるようになるとのことで、同氏は例として、サードパーティがカスタマーサポートのアプリケーションを作り、マッシュアップでさまざまなところから利用できるようにすることで、ユーザーにメリットを提供できると説明した。
「ネットワークの能力を軽量なAPIでWebの世界へ開示し、サードパーティのアプリケーション開発者がそれを利用して新しいアプリケーションをネットワーク上で走らせることで、通信事業者は新しい収入を得ることができる。当社の強みはネットワークの構造がよく分かっている点であり、新しく提案するこのような製品も、既存製品とのインテグレーションが容易にできる強みを持っている」(コジック氏)。
2009/5/15 18:08