アルカテル、アプリケーションの可視化・制御能力を提供する通信事業者向けVPNソリューション


アプリケーション・アシュアVPNでは、アプリケーションの識別能力が可能になる
「AA-ISA」サービスカードを手にする、Alcatel-Lucent IPコンピテンスセンター ビジネスディベロップメント シニアディレクターのケント・ウォン氏
ポータル画面も提供でき、ユーザー企業自らがアプリケーションの利用状況確認や制御を行える

 日本アルカテル・ルーセント株式会社(以下、アルカテル)は5月28日、通信事業者向けの新しいVPNソリューション「アプリケーション・アシュアVPN」を発表した。クラウドベースでVPNサービスを顧客企業に提供することができるソリューションで、アプリケーションにフォーカスしている点が特徴という。

 現在では、企業のアプリケーションをWAN経由で利用するケースが増えているが、一般的な通信事業者のサービスでは、アプリケーションを識別する機能についてはほとんど提供されていない。そのため、企業ではWANを最適化したり可視化・制御したりするための装置を個別に導入することになり、「自社で機器を導入し、管理者を雇う必要があったため、コストの面で負担が大きく、導入に関しては障壁があった」(Alcatel-Lucent IPコンピテンスセンター ビジネスディベロップメント シニアディレクターのケント・ウォン氏)という。

 アルカテルでは、こうした課題に対する回答として、アプリケーション・アシュアVPNを提案している。このVPNでは、これは既存のVPNと異なり、アプリケーションの種類を適切に識別し、それに対してポリシー制御を行う能力を提供できるため、通信事業者は、ERP製品やVoIP、ビデオ会議をはじめとするビジネス上重要なアプリケーション、また音声や動画などに対応したエンタープライズVPNサービスのサービスポートフォリオを持つことが可能になる。

 具体的には、「7750SR」「7450ESS」などのアルカテル製サービスルータに「AA-ISA」サービスカードを、またネットワークにレポート・解析機能のソフトを導入することで、アプリケーション・アシュアVPNの提供が可能になる。「ハーフスロットサイズのこのカード1枚で、10Gbpsのトラフィック、300万のアプリケーションフローを処理できるので、エッジルータに1枚入れるだけで、多くのお客さまをサポートできる。すでにあるPE(Provider Edge)に入れるだけなので、サービス提供を迅速に行える点もメリットだ。また、企業向けポータルによって、企業の担当者がアプリケーションの状況を見たり、優先順位を付けたりする機能も備えている。これを、サービスプロバイダが新しいサービスとして提供するようになるだろう」(ウォン氏)。

 さらには、通信事業者がクラウドベースのSaaSサービス、テレビ会議サービスなどを、現在以上の品質で、かつ迅速にメニュー化できるようになるとのこと。ウォン氏は「これは、通信事業者がクラウドベースのアプリケーションプロバイダに進化する第一歩。現在はネットワークのパイプを提供するだけだが、これによって、新たな収益源の確保が可能になる。今後はアプリケーションのバンドル販売が可能になるだろう」とした。

 なお、アプリケーションについては、現時点で主要なアプリケーションはすべて識別可能とのこと。ただし、アプリケーションは随時新しいものが出てくるため、ウォン氏は「当社ではこれに対応するための専門部署があり、アプリケーション識別のためのシグネチャを提供しているので、対応していくことが可能だ。アップグレード時のルータのリブートも不要である」と述べている。


(石井 一志)

2009/5/28 16:46