日本HP、大規模スケールアウト型のサーバー「ProLiant SL」シリーズ

BLシリーズに続く7年ぶりの新ライン

HP ProLiant SL6000 Scalable System

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は6月16日、クラウドコンピューティングに最適な大規模スケールアウト型ソリューション「HP ProLiant SL6000 Scalable System(以下、SL6000)」を発表した。8月下旬より出荷開始する。併せて、ラックマウント型「HP ProLiant DL」シリーズの新モデル「DL1000マルチノードサーバー」も発表。7月下旬より出荷開始する。

 SL6000は、クラウドなど大規模スケールアウトのニーズに対応したサーバー新製品。7年前のブレード型「BLシリーズ」に続くProLiantの新ラインで、SLは「Scalable Line」の略となる。

 特長は、最大2つの電源と最大4つの冷却ファンを搭載した2Uシャーシ「HP ProLiant z6000」に、サーバートレイを2枚まで搭載できる点。サーバートレイは用途に応じて、サーバー密度重視の「HP ProLiant SL2x170z G6」、ストレージ容量重視の「HP ProLiant SL170z G6」、メモリ・I/O重視の「HP ProLiant SL160z G6」の3種類が用意され、大規模スケールアウトに伴う、さまざまなニーズに対応する高密度製品となっている。

7年ぶりのProLiant新ライン2Uの共通シャーシに2枚のサーバートレイを搭載3種類のサーバートレイを用意
エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部 ビジネス開発部長の正田三四郎氏
エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部長の橘一徳氏

 サーバー密度重視モデルでは、1トレイに2ノードを搭載。これを2Uシャーシに最大2枚搭載できるので、4ノードの高密度実装が可能となる。用途としては「HPC計算ノードやWebフロントエンドに最適」(エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部 ビジネス開発部長の正田三四郎氏)。

 ストレージ容量重視モデルでは、1トレイに1ノードと6台の3.5型HDD(容量は最大6TB)を搭載。こちらも2Uシャーシに2枚搭載できるので、最大12台のHDD(容量は最大12TB)が搭載可能となる。用途としては「Webサーチエンジンやデータベースなどに最適」(同氏)。

 メモリ・I/O重視モデルでは、1トレイに18本のメモリスロット(容量は最大144GB)と2本のPCI Expressスロットを搭載。HPCデータノードやメモリキャッシュを大量に使うアプリケーション向きで、「仮想化などにも最適」(同氏)という。

 エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部長の橘一徳氏は、この設計思想を「クラウド時代の新アーキテクチャ“エクストリームスケールアウト”を採用し、1万平方メートルのデータセンター、1000台以上の大規模サーバーシステムに対応する性能を実現した」と説明。

 その工夫を細かく見ると、まず「ファンと電源を備えた共通シャーシにサーバートレイを挿入する、合理化されたデザインを採用。これにより柔軟性を強化したほか、実証された業界標準のテクノロジーを採用することで、信頼性や拡張性にも配慮した」(正田氏)。メンテナンス性としては、ラック搭載時に、前面からサーバートレイを着脱可能にしたほか、各種インターフェイス、ネットワークケーブルなど運用上よく触る部分をすべて前面に配置する「フロントアクセス」を実現。重量の面では、各サーバートレイから上ぶたなどを排除した「スキンレス構造」とすることで、「一般的な1Uラック比で31%の軽量化を図った」(同氏)。

 販売は、2Uシャーシとサーバートレイ1種類×2枚のセット提供となる。価格は、シャーシ+サーバー密度重視モデル×2枚のセットが54万9150円、シャーシ+ストレージ容量重視モデル×2枚のセットが30万7650円、シャーシ+メモリ・I/O重視モデル×2枚のセットが30万7650円。電源やファンの共通化などにより、一般的な1Uサーバーより導入コストを10%低減しているのもメリットという。

 なお今回は、HP ProLiant SLシリーズ製品単体での発表だが、新たに提唱した「エクストリームスケールアウト」のポートフォリオとしては、ストレージやネットワークスイッチ、実装支援サービスなどもそろえ、オールインワンでの販売戦略を進める方針。

1000ノード以上の一括設置を前提にした専用設計。その最大の特長がフロントアクセス構造前面に各インターフェイスやネットワークケーブルが集約されているストレージやネットワークスイッチ、実装支援サービスなども含め、オールインワンに提供する

 ProLiantで新ラインを発表した一方で、従来のラック型DLシリーズでも新製品「HP ProLiant DL1000」を投入。DLシリーズ初のマルチノードモデルで、1筐体に2ノードあるいは4ノードを内蔵できる製品となっている。従来製品に比べて2倍の高密度化を図るとともに、ノード間でファンと電源を共有化し、電源・冷却効率も向上。さらにノードあたり「DL160」と同等クラスの拡張性、および、Xeon X5570をサポートすることでハイパフォーマンスを実現し、「特にHPC用途に最適」(正田氏)として訴求する。

 価格は、2ノードタイプの「HP ProLiant DL2x170h G6」が38万100円、4ノードタイプの「HP ProLiant DL4x170h G6」が66万3600円。ノードあたりの主なスペックは、Xeon E5504×1基、6GBメモリ、1200Wの電源、HDDなし。このほか柔軟にスペックを選べるCTOモデルも提供。価格は31万5000円から。

HP ProLiant DL1000筐体あたり2ノードあるいは4ノードまで搭載できる、DLシリーズ初のマルチノードモデル中央に電源を搭載し、左右に2ノードずつ搭載できるようにした



(川島 弘之)

2009/6/16 16:06