マイクロソフト、コンサル部門のノウハウなどをSIパートナーに提供するサービス


Service Readyの概要
執行役 エンタープライズサービス担当の鳴坂仁志氏

 マイクロソフト株式会社は6月17日、SIパートナー向けの支援サービス「Service Ready」を発表した。同社のコンサルティング部門が培った構築・導入ノウハウなどを体系化し、パートナー企業が活用できるようにするもので、提供は7月1日より開始される。価格は380万円(税別)から。

 マイクロソフトでは社内に「マイクロソフト コンサルティング サービス(MCS)」というコンサルティング部門を抱えており、ワールドワイドでは5000名のコンサルタントが、顧客にサービスを提供している。今回提供されるService Readyは、MCSが早期導入プロジェクトなどの実績を元に開発したサービスオファリング(ソリューションシナリオごとの知的財産)やそれを活用するためのトレーニングを、SIパートナーに有償で提供するプログラム。マイクロソフトは従来、「コンサルティングエクスプレス」プログラムで同様のサービスを提供してきたが、「日本で集約したものを本社でさらに磨きをかけ、ワールドワイドで提供するものがService Ready」(執行役 エンタープライズサービス担当の鳴坂仁志氏)だという。

 鳴坂氏はService Readyを提供する背景について、「パートナーでは、新しい製品が出たときにいつ市場に参入したらいいのか、プリセールスの段階で商談機会をどう増やせばいいのか、人材をどう育成したらいいのか、といった課題を持っている」と言及。こういった課題を解決するための具体的な手段としてService Readyを位置付け、パートナーに紹介していくとした。

 サービス内容としては、まずサービスオファリングのドキュメントを提供する。この中には、サービスの実施手順、プロジェクトタスクとスケジュール、ヒアリング項目一覧、設計・展開ガイドなどが含まれている。また、サービスオファリングとその活用方法に関する知識を身につけさせるため、MCSのコンサルタントが2~3日程度のトレーニングをパートナーのエンジニアに対して実施する。

 パートナーにとっては、「提供されるオファリングは、プロジェクトにおける実際の経験とノウハウを元にしており、3カ月のプロジェクト経験を積まないと身につけられない知識を、3日の研修で取得できるため、核となる技術者の育成が可能になる」(エンタープライズサービス ビジネスディベロップメント&マーケティング部 パートナーオファリングプログラム マネージャーの藤澤博氏)点が大きなメリット。新製品の検証・評価を短縮し、早期にサービスが開始できるようになるほか、早期提供によって商談機会の増加も見込めるという。また、成功体験を元にしているために、一定以上の品質を確保可能。評価・検証や人材育成に関する必要も削減でき、新規SIサービスを開始する前に発生する大きなコストを吸収可能とのこと。さらには、作業工程や導入手順が定義されているので作業が見えやすく、見積もりの精度向上にもつながる。

 もう1つ大きな特徴は、「当社の知的財産であるサービスオファリングのカスタマイズが可能な点」(藤澤氏)だ。提供するドキュメントを、パートナーが強みを持つ業務・業種のノウハウなどによってカスタマイズし、サービスの成果物として自社の顧客に提供することもできる。藤澤氏は、「これによって、パートナーが標準的な開発をする必要がなくなり、リソースを(各社が本来強みとする)独自ソリューションの開発へ振り分けられるようになる」と述べ、メリットを強調した。

提供するサービスオファリング一覧

 最初に提供されるサービスオファリングは、「Hyper-Vによるサーバー仮想化」「Windows VistaとOffice 2007によるデスクトップ最適化」「Office Communications Server 2007によるユニファイドコミュニケーションの導入」「SharePoint Server 2007によるポータル、コラボレーション、検索の導入」「ロータス ノーツからの移行計画」など全部で8つ。今後はWindows 7、App-VやVDIによるクライアント仮想化、Exchange Server 2010関連など、新製品についても順次追加していく予定である。

 価格は、ドキュメントと3名までのトレーニング、サービスオファリングを適用する初回プロジェクト開始前のレビュー2日(16時間)分を含み、380万円(税別)から。マイクロソフトではService Readyによって、費用面でコンサルティングエクスプレスの利用が難しかった中堅SIerに対してもサービスオファリングを提供し、ひいては500名~数千名程度の中堅企業を開拓したい考え。3年間で100社での利用と、認定コンサルタントのべ500名の育成を目標としている。


(石井 一志)

2009/6/17 16:40