IDSシェアー、モデリングのバージョン管理に対応した「ARIS 7.1」

SAP製品との連携も強化

代表取締役社長の沖村一宏氏
バージョン管理機能の概要

 IDSシェアー・ジャパン株式会社(以下、IDSシェアー)は6月19日、BPM(ビジネスプロセス管理)製品群の新版「ARIS 7.1」の日本語版を発表した。SAP製品との連携を強化したほか、ユーザビリティを向上させている点が大きな特徴。代表取締役社長の沖村一宏氏は「ARIS 7.1は、ビジネスプロセスの管理をしていく上で、企業のユーザーが使いやすいように機能を強化しているバージョンである」と、新版の強化点を説明した。販売は同日より開始し、7月以降に提供を開始する予定である。

 ARISは、内部統制の文書化から運用評価までを支援可能なBPMツール。このうち、ARISの基幹となる、ビジネスプロセスの基本モデリングツール「ARIS Business Architect」では、バージョン管理の機能が追加された点が大きな強化点。1つのARISデータベースの中で、複数バージョンのコンテンツを管理・閲覧できるようになっている。運用中、バージョン管理を行っているモデルに変更が加えられると、差分情報が変更リストとしてデータベースに格納される仕組みで、Excelなどを活用し、差分を比較することもできる。

 ARISコンサルティング部 シニアコンサルタントの龍澤昭悟氏は、「『ARISでデータモデルを作った場合に、それを1週間前、2週間前と比べたい』といったニーズがあったが、これまではそれをやろうとすると非常に手間がかかった。新版では、従来のものと現在のものを簡単に比較できるので、改善すべきベースプロセスとの比較を容易に行える」とそのメリットを強調した。

 このほかARIS Business Architectでは、モデリング・グラフィック機能の向上、マトリックスモデルやプロジェクトスケジュールモデルなど新定義のモデルタイプ追加、フリー属性のカスタマイズ性向上、レポート形式の追加、カスタマイズされたレポートをGUIによって作成する「レポートデザイナー」機能の追加、他社製文書管理システムとの統合、LDAP認証機能の拡張、といった強化も行われている。

 また、ARISで設計したビジネスプロセスにSAPソリューションを実装し、最適化するための「ARIS Business Architect for SAP」(旧名称:ARIS for SAP NetWeaver)でも強化が行われている。ビジネスプロセスとSAP環境のシームレスな統合が強化されており、ビジネスプロセスや新しいビジネスコンセプトをSAP環境にマッピングし、迅速かつ効率的に自社の戦略やビジネス要件を実施できるようになるという。

 具体的には、ARIS側とSAP側で統一したデータを保持する「エンドユーザーロール同期」、キーワード同期、ARIS側で書いたプロセスをSAP側の構成に的確に反映する「プロセスシーケンスの転送」などの機能を強化。さらに、ARISで定義したシナリオをそのまま「SAP Solution Manager」に転送する「テストシナリオ転送」機能も追加されている。この機能について龍澤氏は「SAP側のツールではGUI的に分かりづらいが、ARIS側ではビジネスプロセスの連続として、容易に定義が可能だ」と効果を説明した。

 なお、沖村社長はIDSシェアーのビジネス全般について、「当社は多くのお客さまからコンサルティング会社だと認識されていたり、ARISを知っていても当社のことが知られていなかったりするのが現状。そこで、サービスだけでなく、製品を一緒にお客さまに提供していくことを推進したい。そのためにも、お客さまと密接につながっているSIerと協力してビジネスを進めていく」との方針を提示。

 「特に、当社はSAPとの連携がビジネス的にもソリューション的にも強いので、SAPを使ってビジネスをしている多くの企業に対して、改善提案を行いたい。例えば、『複数インスタンスでサイロのように動いているSAPシステムをどうすればいいか』、と悩んでいるお客さまも多いが、こうした企業に対して、サービスとARISをあわせて提供し、課題解決を支援したい」と述べ、フォーカス領域を示している。


(石井 一志)

2009/6/19 13:42