デルが製品単体の訴求から脱皮、「仮想化を軸としたソリューションプロバイダへ」

PowerEdgeやEqualLogicの新製品も発表

米Dell エンタープライズ・ストレージ&ネットワーキング グローバル・マーケティング・ディレクターのプラビーン・アスタナ博士
Dell PowerEdge T710/T410/R410の概要

 デル株式会社は6月19日、大企業・中小企業向けの新製品とソリューションを発表した。仮想化技術を核に、仮想環境・物理環境を含めたIT環境の効率化をさらにシンプル化するという。

 新製品として発表されたのはタワー型サーバー「Dell PowerEdge T710/T410/R410」と、エントリーNAS「Dell PowerVault NX3000」、iSCSI SAN製品「Dell EqualLogic PS4000」シリーズ。

 PowerEdge T710/T410は、いずれも2ソケットのタワーサーバー。前者はXeon 5500番台×2個、最大144GBメモリ、最大18台のHDDを、後者はXeon 5500番台×2個、最大64GBメモリ、最大6台のHDDを搭載可能。大企業および中小企業のITをシンプル化する製品で、ワンボタンでBIOSなどの運用管理が行えるロールバック機能「Lifecycle Controller」を搭載する。

 EqualLogic PS4000は、リモートオフィスや中小規模企業向けのiSCSIアレイ。エントリー製品でありつつ、エンタープライズクラスのストレージ仮想化やシンプロビジョニングなどに対応し、これまでのPSシリーズと同様、VMware vSphere、Microsoft Hyper-V、Citrix XenServerが搭載された仮想サーバーと連携。複数のストレージに対する自動化されたワークロードバランスや、ストレージキャパシティの再配置などを実現するという。

 いずれの製品も先進テクノロジーを採り入れたものだが、こうした製品単体に今回の主眼があるわけではなく、登壇した米Dell エンタープライズ・ストレージ&ネットワーキング グローバル・マーケティング・ディレクターのプラビーン・アスタナ博士は、「企業ではますますITインフラの高効率化が重要となっている。そのためにはソリューションが重要で、これまでは製品単体を訴求してきた当社としても、今後はソリューションプロバイダとして課題解決に貢献したい」としている。要はソリューションを軸に据える新戦略を語っており、今回の新製品群は、このソリューションを形作る構成要素となる。

 同時に、ターゲティングもこれまでとは違った切り口となるようだ。「当社はこれまでは地域別にビジネスを展開してきた。それを組織改編することで、今は顧客のセグメント別にビジネス展開する体制に切り替えた」(アスタナ博士)。大企業から中小企業までカバーする豊富な製品をラインアップする同社だが、今後は企業規模に応じて、それらの製品をソリューションパッケージとして提供していく方針という。

 大企業向けには、PowerEdgeのブレードサーバーや今回のEqualLogic PS6000、中小企業向けには、PowerEdge T710/T410、EqualLogic PS4000などの製品をラインアップするとともに、導入や仮想化を支援するサービス・技術を包含している。同博士によれば「企業の複雑性を解消するには、Plan/Deploy/Manageのすべてのステージで効率化を図る必要がある。今後提供するソリューションでは全ステージをきっちりとカバーしつつ、サーバー/ストレージ/ソフト/サービスとすべての構成要素において製品やサービスがモジュール化された形とし、ユーザーに最適な構成を選んでもらえるようにしている」。

 仮想化においては、37機種の全PowerEdgeサーバーで「VMware vSphere 4」および「Citrix Essentials for XenServer 5.0」に対応。迅速に仮想化を実現できるよう、これらを事前設定して提供する「Virtualization Business Ready Configurations」もソリューションに加え、「リソースやスキルのない中小企業であっても簡単に仮想化環境を構築して、必要に応じて少しずつカスタマイズできる状況を整えた」(同博士)。特に「オンライン受注を始めたい中小企業などでは、規模が小さくても仮想化が重要な技術要素となっており、それなりのITインフラが必要だが、そうしたニーズにも柔軟に応えられるソリューションを展開していく」という。

製品単体を訴求するDellからソリューションプロバイダへ。大規模/中小企業向けソリューションを展開大企業向けソリューションの概要。Plan/Deploy/Manageすべてをサポート。仮想化ではあらかじめ事前設定して提供するBusines Ready Configurationなども用意した中小企業向けソリューションの概要
デル SMBマーケティング本部 北アジア地区 本部長の原田洋司氏

 引き続き、デル SMBマーケティング本部 北アジア地区 本部長の原田洋司氏が登壇し、日本におけるSMBへの取り組みを説明。同社のいうSMBとは1~500名の企業のことで、「こうした企業ではIT管理のリソースが少なく、一度に大きなIT投資も行えない。また大企業よりも小回りのきく臨機応変なITインフラを構築しなければならず、コストに占める管理費の比率が大きい。それに対しデルでは、最新の技術を搭載した製品をタイムリーに提供するほか、シンプルな管理システムやワンストップのサポート窓口などを提供することで、コストパフォーマンスの向上に務めている」と説明。

 現在、デルならではの取り組みとして、SMB向けにさまざまな情報を提供するポータルサイト「Small Business 360」や、IT技術の優れた活用でビジネスを成功させている企業を表彰する「デル スモールビジネス賞」などを推進しているが、「今後もSMBにフォーカスした製品群を提供するほか、お客さまとのダイレクトコミュニケーションの体制を整える」と方針を語った。


(川島 弘之)

2009/6/19 17:09