親と子の情報モラル教育に、NTTレゾナントとジャストシステムが協力

情報モラル授業研究会に教材提供

白鴎大学教育学部教授兼&東京工業大学名誉教授の赤堀侃司氏

 NTTレゾナント株式会社と株式会社ジャストシステムは6月22日、小学校の情報モラル教育を支援する目的で発足した「『家庭と学校を授業でつなぐ』情報モラル教育研究会」(以下、情報モラル授業研究会)の活動に賛同し、その取り組みを支援すると発表した。

 情報モラル授業研究会は、学校と家庭が連携して、小中学生へ情報モラル教育を行う方法を検討する団体。授業参観や保護者懇談会などの接点に着目し、授業を媒体に親と子と先生をつないだ情報モラル教育の枠組みを検討するという。指導資料(指導案・授業記録・教材など)を作成しながら、実証的に研究するのが特徴で、成果物を学会やWebサイトにて随時公開し、最終的に書籍にまとめることを目的とする。

 その設立意図について、同研究会メンバーで白鴎大学教育学部教授&東京工業大学名誉教授の赤堀侃司氏は、「政府などから情報モラルの啓発パンフレットは発行されているが、あまり読まれていないのが現状。それよりも、学校が家庭と連携して場の中で浸透させるのが良いと考えた。そこで、授業を媒体に親子で一緒に学んでいただこうという発想。親子で授業に参画することで、情報モラルの意識が高まるだろう、親・子・先生それぞれの立場の相互理解につながるだろうとの仮説に基づいている」と説明。その考えで、新しい授業形態を生みだし、その有効性検証を行っていく。なお赤堀氏は「一緒に授業を行うのがポイント。これまでのパンフレットなどにはその側面が抜けていた」と、授業を媒体にする点を強調している。

 対象は小学校高学年~中学生。まずはケータイ所有率が急増し、かつ自我が芽生え始める小学校5、6年生を対象に、ケータイやPCも含めたメールの諸問題を採り上げる。具体的には「親子で作るケータイメール ルール3カ条」などを作成する。「今のところ著作権やプロフなどは取り扱わない可能性が高いが、実際に問題が起きたら、そのテーマで授業を行う」(赤堀氏)とのこと。

 スケジュールとしては、7月に「チェーンメールは送らない」というテーマで第1回目の授業を実施。11月に2度目の授業を経て、2010年春に成果の書籍化を目指す。

 では具体的にどんな授業を行うのか。その教材はジャストシステムが提供する。学校用教育ソフト「ジャストスマイル4@フレンド」や小学校向けグループウェア「つたわるねっと」などだ。いずれも「体験型の教材となっているのが特徴で、例えばPC上にケータイメールのインターフェイスを表示。URLをクリックした結果、架空請求を受けるという疑似体験を通して、情報モラルを身につけられるようになっている」(ジャストシステム 法人ビジネス企画部長の村岡明氏)。

 同社はこのほか、定期発行している教育誌「JUST.School」にて成果に関する情報発信や、最終的な出版なども担当する。なお「この研究で、より良い教育コンテンツ開発のヒントを得たい」(同氏)というのがジャストシステム側のメリット。

ジャストスマイル4@フレンドのトップ画面PC上のケータイインターフェイスからメールを操作。URLをクリックすることで発生する架空請求などが疑似体験できる疑似体験のほかにも意識調査やまとめの解説などを行ってくれるのが、つたわるねっと

 NTTレゾナントは、先生向けの情報提供サイトを提供する。同社はすでに小学校向けポータルサイト「キッズgoo」を展開しているが、その中に今回「先生のページ」を新設。授業のお助けコーナーやプリント作成ツール・素材集、先生のためのリンク集などのコンテンツを提供する。また「研究成果をキッズgoo内に随時公開していくことで、情報発信の支援も行う」(NTTレゾナント メディア事業部 サービス部門 担当課長の中野誠氏)。

 村岡氏は「来月は“チェーンメールを送らない”というテーマだが、こうした事象1つ1つを取り上げて、単に送ってはダメと教えるのではなく、もっと根源から考えられるようにしたい。チェーンメールはなぜ送ってはいけないのか、これがダメということは当然こういうこともダメだよな、としっかり理解できるようにしなければ意味がない」と意気込みを見せる。

 一方で赤堀氏は「親の参加が重要だが、こういうのに勇んで出席する家庭は特に問題がないというジレンマがある。なかなか来てくれない家庭をどう巻き込むか」と現状の課題にも触れ、「こういう取り組みがクチコミを生み、そういう家庭を巻き込んでいくきっかけになるのではないか」とした。

ジャストシステム 法人ビジネス企画部長の村岡明氏NTTレゾナント メディア事業部 サービス部門 担当課長の中野誠氏



(川島 弘之)

2009/6/22 18:11