「課題はRTOと復旧時間の食い違い」-シマンテックがDR調査結果を発表


グローバルコンサルティングサービス リードプリンシパルコンサルタントの小林啓宣氏

 株式会社シマンテックは7月2日、企業のディザスタリカバリ(災害対策:DR)に関する調査結果を発表。グローバルコンサルティングサービス リードプリンシパルコンサルタントの小林啓宣氏は、この結果を概観して、「DRに対して取り組む姿勢に、日本とグローバルでは若干温度差がある。経営レベルでの取り組みの意識が、日本はまだ少し低いのではないか」とコメントした。

 この調査は、全世界を対象に、米Applied Researchに委託して行ったもの。調査期間は5月から6月で、全世界から1650社の回答を得た。また日本も対象になっており、50社が回答している。

 小林氏がこの結果からまず指摘したのは、経営陣の関与が2008年の前回調査に比べて増えている点。前回は、DRをつかさどる災害対策委員会に経営陣が参加しているとの回答が33%にとどまったのに対し、今回は70%の企業が、CIO/IT責任者が参加していると回答しており、ほぼ倍増という結果となった。さらに、回答によると、ミッションクリティカルなアプリケーションの割合が全アプリケーション中60%とされ、「ビジネスの、ITへの依存度の高まりを感じさせる」(小林氏)結果となった。小林氏によれば、経営陣の関与が増えたのも、これが一因だという。

DRの管理者災害対策委員会への参加者

DRにかかる時間

 ビジネスからのITに対する要求は、ディザスタリカバリにかかる時間の変化を見ても、高まっていることがわかる。2009年の調査では、3%の回答者が12時間以内で基本的な運用を復旧できる、31%の回答者が1日以内で基本的な運用を復旧できるとしていたのに対し、2009年では、基本的な運用の復旧に平均3時間、起動して実行するまでが平均4時間だと回答されており、大きく前進している。

 ただし、こうしたグローバルの数字に対して、日本では基本的な運用の復旧、起動して実行するまでの双方ともに平均6時間と回答。RTO(目標復旧時間)とRPO(目標復旧時点)についても、グローバルではいずれも4時間なのに対して、日本では5時間と回答されている。こうしたデータについて小林氏は「グローバルでは、国内と比べてより高い水準を要求しているが、目標として立てたRTOを実現している。しかし国内では、5時間の目標に対して6時間かかっているようにRTOを実現できておらず、そこが不足している点だ」と述べた。

 また、ディザスタリカバリ計画をテストしている企業の割合は、前年から12%増加している。ただし、全体の93%にあたる企業が何らかのディザスタリカバリ計画を実行しているにもかかわらず、テストの成功率はグローバルで70%、日本では77.5%にすぎない。失敗の主な原因は「プロセスが不適切」「テクノロジーが想定通りに機能しない」「計画が古い」などだが、特に日本では、用意した手順通りに実施できなかった傾向が、グローバルに比べて強く見られるとした。

 なお、企業での活用が進む仮想化については、回答者の64%が、仮想化によってDR計画を見直したとしており、前年の55%から増加した。しかし、依然として27%の企業が仮想環境のテストをしていないという結果も明らかになっている。小林氏はこの点について、「重要度が低いものから仮想環境に載せていくからと考えられるが、それはそれで問題があるだろう」と指摘している。

DRのテスト頻度仮想化によるDR計画の見直し状況



(石井 一志)

2009/7/2 17:03