ネットスイートが富士通と提携、SaaS型業務アプリを国内で拡販


ネットスイート 代表取締役社長の田村元氏
提携による両社の狙い
米NetSuite CEOのザック・ネルソン氏

 米NetSuiteとネットスイート株式会社は8月5日、富士通株式会社、ならびに株式会社富士通ビジネスシステム(以下、FJB)と、日本での販売・サポートに関する包括的な業務提携を締結したと発表した。この提携に伴い、富士通とFJBはSaaS型の業務アプリケーションスイート「NetSuite-Release J」の販売を行うほか、導入時のインテグレーション、コンサルティング、サポートサービスをワンストップで提供するという。

 富士通とFJBが展開することになったNetSuite-Release Jは、ERP、CRM、eコマースなどの機能を包括的に備えた、SaaS型の業務アプリケーションスイート。日本向けに機能がカスタマイズされているのが特徴で、日本の会計基準、規制、税制に準拠しているため、国内の企業も安心して利用できる。NetSuiteのアプリケーションは主に中堅・中小企業を対象とするが、大規模企業が各部門に導入し、SAPやOracle EBS、PeopleSoftのような既存の基幹システムと連結させて使用する事例も増えているという。

 ネットスイートでは、提携の意図について、8月4日に代表取締役社長就任が発表されたばかりの田村元氏が、「富士通とFJBを通じて広く日本市場でNetSuite-Release Jを提供することにより、市場カバレッジを広げたい」と説明。また、両社の持つ業務・業種に特化したノウハウを取り込み、特定の分野に特化した垂直型のソリューションとして深化させる狙いもあるとした。

 NetSuite CEOのザック・ネルソン氏も、「当社のクラウドベースアプリケーションを日本市場で展開する大きな力になる。また、クラウドのインパクトが上がってきていることを示すという意味では、業界全体としても大きなインパクトがあるだろう」とコメント。さらに、「富士通が持つワールドクラスの営業、サービス、サポートの能力を生かすことにより、ソリューションプロバイダーとしての当社の信頼も向上する」と述べている。

 一方、富士通は、NetSuite-Release Jは自社のERPソリューションのポートフォリオに加えることで、中堅・中小企業に対するオファリングを強化する狙いがある。また、「当社が10年かかったように、SaaSビジネスの立ち上げは一朝一夕でできるものではない。当社のノウハウを利用することで、富士通はSaaSビジネスの立ち上げを加速できる点もメリットだろう」(田村氏)とした。

 なお、富士通はNetSuite-Release Jのライセンス再販や、導入支援、トレーニング、カスタマイズといったサポートサービスを行うことになるが、現状ではOEMを受けたり、富士通のデータセンターから提供したりする予定はないとのこと。あくまでも、NetSuiteが提供するSaaS型アプリケーションを、富士通がサービスとパッケージングして販売する、といった位置付けにとどまる。




(石井 一志)

2009/8/5 14:45