2013年には5000万のデスクトップが仮想化に-米CitrixダーワンVPに聞くVDI戦略


 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社は8月21日、プライベートイベント「クラウド時代のクライアント戦略」を開催。クライアント仮想化導入の現実や導入効果などが紹介された。

 今回、同イベントに出席した米Citrixデスクトップ部門プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのスミット・ダーワン氏に、XenDesktopやXenClientなど、同社のデスクトップ仮想化製品に関して、話を伺った。


―サーバー仮想化が浸透したこともあり、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)への関心が高まっています。

米Citrixデスクトップ部門プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのスミット・ダーワン氏

ダーワン氏
 Gartnerによると、2013年には5000万以上のデスクトップが仮想化しているという予測を発表しています。実際、われわれのデスクトップ仮想化製品であるXenDesktopの第2四半期の実績をみると、新規で500のユーザーが導入しています。これは四半期だけの結果です。

 VDIに関心が高まっているのは必然だといえます。これまでは、PCを購入し、必要なアプリケーションをインストールし、時期がくれば入れ替えるというPCのライフサイクルに問題はありませんでした。しかし、現在はビジネス環境が急速に変化しており、利用者ごとに必要な環境がさまざまとなっています。これをすべて既存のPCで対応しようとすると、PCごとに必要なアプリケーションをインストールしなければいけませんし、デバイスを用意しなければいけません。IT管理者にとって運用の負担が大きくなっています。また、セキュリティ面での負担も大きくなります。

 そこで、デスクトップを仮想化することで問題を解決しようとする動きが出てきました。つまり、デスクトップはPCというデバイスと一体なものと考えるのではなく、OS+アプリケーション+プロファイルで構成されるのがデスクトップであるという考え方です。これにより、デバイスに依存することなく必要なデスクトップ環境を利用者に提供することができるのです。


―VDIでは、競合他社も力を入れています。シトリックスの強みはどこにありますか?

ダーワン氏
 大きく3つの強みがあります。

 1つ目は、HDXテクノロジーにより、高品位なユーザー体験を提供できるという点です。サーバー仮想化と異なり、VDIの利用者はエンドユーザーです。エンドユーザーが満足できるデスクトップ環境を提供できないと、VDIを利用するメリットは生まれてきません。XenDesktopなら、FlashムービーやHD動画などもスムーズに再生できますし、Skypeといったソフトフォンも利用できます。それも低帯域で利用できます。

 2つ目は、オンデマンドにアプリケーションを利用できるという点です。シトリックスのXenAppを利用することで、アプリケーションを必要なときに必要なだけ利用できます。また、エンドユーザーがさらに手軽に利用できるようDazzleというアプリケーションストアも提供しています。DazzleはiTunesのようなユーザーインターフェイスで使いたいアプリケーションをドラッグアンドドロップするだけですぐに利用できます。

 3つ目は、すべてのユーザーに対して最適なデスクトップ環境を提供できるという点です。VDIと聞くと、シンクライアント端末にすべて切り替えないといけないとおもわれますが、そんなことはありません。既存のPCをシンクライアント端末として利用すればよく、PCの性能が十分あればそのパワーを使うことも可能です。また、iPhoneといったPC以外のデバイスでも利用可能です。


―XenClientにも注目が集まっていますね。

ダーワン氏
 XenClientは、インテルと共同開発中のクライアント向けハイパーバイザーで、ノートPCに組み込まれた形で提供されます。ノートPCに組み込まれているので、ベアメタルレベルのパフォーマンスで動作します。また、一つのノートPCに個人のデスクトップと会社のデスクトップを同時に起動することができます。XenDesktopと組み合わせて使えば、会社のデスクトップは企業のIT管理者側で管理することもできます。つまり、オンラインでもオフラインでも仮想デスクトップが利用できる環境が整うということです。


―XenClientはいつごろ登場するのでしょうか?

ダーワン氏
 年末を目標としています。


―シトリックスといえば、XenAppのイメージが強いですね。シンクライアントのイメージが強いのは、VDIを進める上でマイナスになっていませんか?

ダーワン氏
 確かにそういった見方は障害になります。われわれとしては、XenAppという単一製品だけの企業ではないと、つねにメッセージを発信しています。さきほどの説明したとおり、VDIもさまざまな使い方に対応できるわけですから、そのあたりを正しく理解していただけるよう努力しています。

 また、製品構成も複雑になっていますので、よりわかりやすくなるようポートフォリオの簡素化も検討しています。


―Windows 7がまもなく登場します。VDIの普及に影響はありますか?

ダーワン氏
 ありますね。これまでVDIにあまり関心を示していなかったマイクロソフト自身が、VDIに積極的に取り組む姿勢を見せていますから。ユーザーの関心が高まっているから、VDIに取り組んでいるということですよね。VDIの普及のきっかけになるとおもいます。

 シトリックスのVDIは、XenServerでもHyper-VでもVMwareでも利用できるオープン性が特長です。また、仮想マシンでなく物理マシンもVDIで利用できます。

 試用版を公開していますので、少しでも関心を持たれた方は試してみてください。また、10ユーザーまで無償で利用できるExpress Editionも用意しています。ホワイトペーパーをみるのもいいですが、実際に使ってみるのが一番です。ハイスペックなサーバーでなくても十分試せますので、ぜひ試してみてください。





(福浦 一広)

2009/8/24 09:00