Tech・Ed Japan 2009を開催-開発中のOffice 2010などを公開


 マイクロソフト株式会社主催の技術者向けカンファレンス「Microsoft Tech・Ed Japan 2009」が8月26日から3日間、横浜市のパシフィコ横浜で開催されている。初日には、「次世代のITの可能性がここにある」と題した基調講演が行われた。

執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏
Dynamic ITを実現する新製品

 冒頭、同社執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏が登壇し、Tech・Edの国内開催が今回で15回目となったことを紹介。「この15年を振り返ると、マイクロソフトが企業向けソリューションを提供してきた歴史と重なる」と、1995年にWindows NT 3.51を企業向けに投入して以来、Windows 2000 Server、Windows Vistaとその時々のニーズに応える製品を発表してきたと述べた。

 「現在、ITに求められるニーズは多岐にわたっている。経営においてITの重要性が高まっており、またクラウドなどの新しい流れをどうとらえるかも重要な課題となっている。マイクロソフトでは、さまざまな変化に即座に対応できるITを実現する“Dynamic IT”を提唱しており、このDynamic ITを実現する製品として、Windows 7やWindows Server 2008 R2を発表した。2010年には、Exchange Server 2010やOffice 2010なども予定している」と、俊敏性の高いITによる付加価値の提供を継続していると紹介した。


ユーザー視点で開発したWindows 7

コマーシャルWindows本部 本部長の中川哲氏
Windows 7の互換性への取り組み

 Dynamic ITを実現するクライアントOSが、まもなく登場するWindows 7。同社コマーシャルWindows本部 本部長の中川哲氏は、「Windows 7は、マイクロソフトがしたいことではなく、お客さまがWindowsで何をしたいのかを徹底的に聞き、それを盛り込んだ製品。日本を含めワールドワイドで1600名のユーザーに直接インタビューしたり、90ものシナリオをベースに、必要な機能を検討していった。また、日本は品質を重視する市場であり、日本法人でもベータ段階から実際にインストールしてバグ出しを積極的に行ってきた」と、Windows 7がユーザー視点で開発されたOSであると強調。

 注目されているWindows 7のパフォーマンスに関して、複数のPCを用いたデモンストレーションを実施。スリープからの復帰速度の速さのほか、ネットブックでも快適に動作している様子、また、Windows Vista出荷前の古いノートPCでもストレスなく動作している様子を紹介した。

 企業ユーザーに対しては、互換性への取り組みをあらためて紹介。「Windows Vista以降のUACに未対応のカスタムアプリケーションなどは、エラー発生後にプログラム互換性アシスタントが自動的に起動して問題点を修正し、正しく動作するようにできる。また、IE6にしか対応していないようなWebアプリケーションを動作させる場合、Windows 7 Professional以上で提供するWindows XP Modeを利用することで、IE6を動作させることも可能」と、Windows 7では互換性を重視して取り組んできたと強調した。

 そのほか、App-Vを組み合わせることで、デスクトップの最適化を実現できる点など、さまざまなワークスタイルに、Windows 7があれば対応できることなどを紹介。Windows 7を企業システムの一部として利用することを呼びかけた。


クラウド時代のサーバーOS「Windows Server 2008 R2」

業務執行役員 本部長 サーバープラットフォームビジネス本部の五十嵐光喜氏
Windows Server 2008 R2を、ハードウェアの進化に対応したサーバーOSと紹介
Hyper-V上の仮想マシンで使われているVHDファイルを、物理マシンでも利用可能。これにより、仮想・物理の混在環境での運用が容易に

 データセンター側でDynamic ITを実現するのが、Windows Server 2008 R2。同社業務執行役員 本部長 サーバープラットフォームビジネス本部の五十嵐光喜氏は、「Dynamic ITを実現するデータセンターでは、仮想・物理の壁をとりはらうこと、今ある環境とクラウドとをシームレスに統合すること、IT管理者が同一プラットフォームとして運用できることが求められる。これらを実現できるのがWindows Server 2008 R2」と、クラウド時代の新しい基盤OSであると紹介。

 「テクノロジーの進化に応じて、これまでのITには歴史的な転換点があった。現在、メニーコアや64ビット、低消費電力、仮想化といったテクノロジーの進化があり、Windows Server 2008 R2はこれらに対応したOSである」と、従来のサーバーOSではなく、新しいサーバーOSを使う意味を強調した。

 基調講演では、CPUの低消費電力に対応するコアパーキング機能を紹介。Xeon 5500番台を搭載したサーバーでWindows Server 2003 R2 x64を動作させるよりも約20%省電力化できる様子を示した。五十嵐氏は、「大規模化・集約化が進むデータセンターにおいて、この機能は大きなキーとなるもの」と紹介した。

 また、Windows Server 2008 R2およびWindows 7で新たに採用された「VHDブート」も紹介。Hyper-V上で動作している仮想マシンのVHDファイルを物理マシンのブートドライブとして利用できるところを紹介した。「VHDブートを利用することで、仮想・物理の混在環境での管理が容易になるほか、Windows展開サービスと組み合わせれば、OSイメージの作成が容易になり、展開先も物理・仮想どちらでも大丈夫になるなど、利便性が増す」と、メリットを説明した。


Xeon 5500番台を搭載したサーバーで、Windows Server 2008 R2とWindows Server 2003 R2 x64を実行CPUがほとんど動作していない状況で消費電力を比較すると、60ワット以上の差にWindows Server 2003 R2では、すべてのコアが動作しているのに対し、Windows Server 2008 R2では負荷に応じて周波数をコントロールすることで消費電力を削減しているのがわかる

共同作業機能を強化したOffice 2010

米Microsoftコーポレートバイスプレジデント Officeプロダクトマネジメントグループの沼本健氏
Office 2010の開発方針

 基調講演では、現在テクニカルプレビューが公開されている次期オフィススイート「Office 2010」、およびコラボレーションサーバー「Exchange Server 2010」が紹介された。

 Office 2010の開発方針について、米Microsoftコーポレートバイスプレジデント Officeプロダクトマネジメントグループの沼本健氏は、「効率よく共同作業を実現できるユーザーエクスペリエンス、社内外で利用可能な柔軟性、そしてバックエンドシステムとインテグレーションすることによる統合化されたビジネスプラットフォーム、の3つを開発ビジョンとしている」と紹介。

 ユーザーエクスペリエンスに関して、「共同作業をより簡単にできること、マルチメディアをサポートするなどアイデアを実現できる環境にすること、そしてWebブラウザでも利用できるなど、どこでも使えるOfficeにすることを方針としている」と説明する。


Outlook 2010でもリボンUIを採用。このほか、SharePointやVisioもリボンUIを採用しているExchange Server 2010と連携することで、メール送信前に相手の状態を確認することも可能

Excel 2010では、セル内にグラフを表示するスパークラインを新たに搭載。これにより、それぞれのデータのトレンド分析が容易になるとしているExcelのWebアプリケーション。Webブラウザ上でも同様の再現性を実現しているWebブラウザはIEのほか、FirefoxやSafariをサポートする予定

PowerPoint 2010ではマルチメディア機能を大幅に強化。張り付けた動画をそのまま編集したり、さまざまな表示方法を設定したりできる共同作業機能も強化別の人が編集した内容をすぐに反映することも可能

Webブラウザを利用してスライドショーをブロードキャストする機能も用意PowerPointをインストールしていないPCでもWebブラウザ上でスライドショーを見ることができるスライドショーはスマートフォンでも再生可能。iPhoneでも表示できる

 なお、Tech・Ed Japan 2009のWebサイトで、基調講演を無償でオンデマンド配信されているので、Windows 7のパフォーマンス、Office 2010のデモンストレーションなどを確認することができる。





(福浦 一広)

2009/8/26 16:45