「戦略的なオフィス移転」でTCOを削減しよう-ITフロンティア
ITマネジメントの宮保隆氏 |
政府から景気底打ちが宣言されたとはいえ、コスト削減の風は相変わらず冷たく厳しい。さまざまなコスト削減手法が生まれる中で、「オフィスの移転も1つの有効手段」と提案するのが、株式会社アイ・ティ・フロンティア(以下、ITフロンティア)だ。「不況こそ移転の好機」と訴え、移転作業を総合支援する「オフィス移転ソリューション」を提供している。今回は、ITマネジメントの宮保隆氏に、オフィス移転からみたTCO削減について伺う。
■今こそオフィス移転の好機
企業がオフィスを移転するのはどんなときだろう。地理的な要求、企業合併に伴う要求、事業・人員拡大に伴う要求――さまざまな理由が考えられる。しかしこの不況時に最も多いのは、やはり「コスト削減」による移転だろう。この場合、「より安く」を求める結果、環境は「より悪く」になりかねず、従業員の間に消極的な雰囲気が漂うことも少なくないはず。
ITフロンティアが提唱するのは、そういった不満も解消するために「戦略的に移転を行おう」という考え方だ。宮保氏によれば、「現在はオフィス移転の好機。2008年に44棟、2009年に56棟の大型新築ビルが竣工予定である一方で、2008年は前年比20%も賃貸料が下落しており、戦略的に移転を行えば3~5年でTCO削減が見込める」のだという。
■戦略的に移転を進めるために
では、戦略的に移転を行うとはどういうことか。宮保氏がまず挙げたのは、総務部とIT部門の連携についてだ。「従来、オフィス移転はファシリティ関連を中心とした総務部主体のプロジェクトだった。しかし、彼らは必ずしもITに精通しているわけではない。地域や耐用年数、スペース、価格のことは検討できても、ITにまで頭が回らないことも少なくないのだ」(同氏)。
肝心なのは、両者一体となった視野。例えば、総務部のみでフロアやオフィスのレイアウトを行った場合、デザインは美しいが、「配管が足りない」「配線が来ていない」「電力が不十分」ということになりかねない。穴あけ、配線の延長といった後戻りのコストを抑えるためには、「移転の初期計画からIT部門が参画し、総務部と常に連携することが重要。いつまでに何をどうするか、スケジュール感をそろえる必要がある」(同氏)という。
そこでオフィス移転ソリューションでは、主にIT部門を対象に徹底した全体可視化の下、移転にまつわるすべての作業を代行支援する。考え方は「全体が見えていないとスポット対応になってしまう。受け身でもうまくいかない。そこで、移転全体の可視化を最重要課題として取り組んでいく」(同氏)というものだ。
具体的なサービスメニューは3つ。大企業向けの「マネージメントサービス」と「セレクトサービス」、中小向けの「トータルサービス」を用意している。
■移転の全作業を支援する「マネージメントサービス」
マネージメントサービスでは、移転の現状調査から、要件定義、ベンダー選定・調整、移転後のフォローまでトータルに支援する。
まず、移転のボリューム感を把握するため、既存のITインフラを詳細に調査。例えば、「LANポートや電話の台数」「回線の種類と本数」「LAN/WANの必要帯域」「PCとサーバー間の通信フロー」「PCの設定内容」「プリンタ・複合機の台数」などをとりまとめ、ITインフラの課題や問題点を洗い出し、移転後のあるべき姿を導き出していく。
こうした作業は、従業員が業務の合間を縫って進めるのが一般的だ。しかし、「荷物をまとめる段ボールにも料金はかかる。現状より狭いところへ移転する場合は、書類廃棄なども必要」と、微に入り細を穿(うが)つまで考える余裕はなかなか持てない。さらに「IT機器でも使っていないものがあるかもしれないし、回線は現状維持でいいのか、アップグレードやダウングレードの余地はないか。そこまで考慮するならば、当然、漏れも出てくる」(同氏)。
ITフロンティアのスタッフがこうした作業を一手に引き受け、IT部門などと相談しながら、課題の可視化と改善案作成を行っていく。そして必要なら、ベンダーの選定・交渉・調達まで担当するのだという。
■ベンダーの選定・交渉・調達まで担当
「コスト削減のためにあまり機器の入れ替えをせずに移転したいのが人情。だが、建物の制約上、回線などのITインフラは変更せざるを得ないケースが多く、ほかにセキュリティなども不足していれば、新たな導入も余儀なくされる」(宮保氏)。
こうした際に、顧客が自らベンダー選定・調整を行うのは、普段の業務を大きく妨げかねず非効率だ。マネージメントサービスでは、SIerの視点で運用保守まで見据えた最適なベンダー選びを行い、基本設計や詳細設計の確認など、ベンダーが行う作業の監視や管理を実施。加えて、稼働テストもフォローし、移転当日から運用できるよう準備・引き継ぎの完了までしっかりとサポートするのだという。
「構築途中で変更や、ファシリティを管理する総務部との調整が必要になることもある。そういったところも含めて、当社ですべてカバーする。当社もSIer。製品の価格や仕切りを把握している。その経験や情報を基に各ベンダーと交渉できるのが、お客さまにとってのメリット」(同氏)。
■移転の評価は運用後3カ月で決まる
移転当日には、PCや複合機などの機器を設置しなければならない。また、従業員ごとにきちんと荷物が届いているか、IT環境は不具合なく動いているかなど、バタバタと慌ただしくなるのが常だ。このフォローが重要だと宮保氏は話す。「オフィス移転は、移転後の運用が何より重要。移転して良かったか否か、従業員の評価は3カ月後に決まるといわれている」(同氏)。
マネージメントサービスでは、新オフィスでの業務開始後の問題に対するサポートも含まれる。従業員からの質問や問題の報告を電話やメールで受け付ける「移転サポートセンター」を期間限定で設置するほか、必要とあれば、腕章を付けた専任スタッフも派遣し、1~2週間、ユーザー企業内に常駐させるのだという。
「新オフィスになじむまでいろいろな問題が発生するもの。総務、技術関連問わず、どんな質問をしていただいて構わない。それこそ、段ボールが1つ届いていないのだが、といったことまで。重要なのは顧客が迷うことなく業務を始められるようにすることで、そのためには事前説明会や資料作成など、必要と思われる対応を幅広く検討していく」(同氏)。それがマネージメントサービスの特徴だ。
現状調査と改善案作成 | 要件定義とベンダー選定 | 移転後フォロー |
■ITフロンティア製品を導入する「セレクトサービス」
大企業向けには、もう1つ、セレクトサービスが用意されている。こちらはITフロンティアが製品やサービスをメニュー化して提供するもの。マネージメントサービスのように要件定義などにかかわることはなく、「テレビ会議」「フリーアドレス化」「サーバー移設」「無線LAN構築」「WAN最適化」「ICカードセキュリティ実装」「キャビネット監視」といったソリューションの提供のみを行う。
同じ大企業向けでもマネージメントサービスとは明確に切り分けられており、「基本的に両者を組み合わせて提供することはない」(宮保氏)という。そのわけは「要件定義などと製品提供を単一ベンダーがやってしまうとお金の流れなどが不透明になりがちだからだ」。
要件定義から深く入り込んで支援する場合は、あくまで他ベンダーの製品を調達する。そこに自社製品を盛り込まないことで、顧客にとっても分かりやすく透明性を維持しているのだという。
「コスト削減」ソリューション | 「業務効率化」ソリューション | 「セキュリティ強化」ソリューション |
■中小向けには両者を融合した「トータルサービス」
一方、中小企業向けには、マネージメントサービスとセレクトサービスを融合したサービスを提供する。「大企業だと不透明になりやすいが、中小企業ならば移転の規模も小さいため、IT担当者も隅々まで目を通しやすい。そこで中小向けにのみ、マネージメントサービスとセレクトサービスを合わせたトータルサービスを用意している」(同氏)というのが理由だ。
これにより、「ベンダー選定にかかる時間や設計時間を短縮することができる。また顧客に対面する人間の数も少なくなるため、負担や作業工数も減少できる」(同氏)としている。
■移転を成功させる秘訣
冒頭で、移転はいまこそ好機といった内容をお伝えした。実際、親会社の子会社整理、中小規模での統合、区画整理などの影響で移転は増えているという。では、移転を成功させるにはどのような心構えが必要なのか。
宮保氏は「必ず2点、現状よりも良くなった点を入れることだ」と話す。従業員にとって移転は面倒な作業だ。コスト削減の観点から行われる移転にはなお一層、面倒くささが募る。移転当日まで不満が噴出していても、移転後に2点これまでより良くなった点があると、「従業員の評価は良くなる傾向がある」という。
例えば、使いやすい会議室を整備したり、受付電話システムをデザイン性ではなく、実用性に優れたものを選んだり――。「そういう些細(ささい)なことで良い。要は小さくても生産性が高まったと感じられるのが重要なのだ」(同氏)。
ITフロンティアが製品を提供するセレクトサービスでも、認証用の専用カードがあれば企業内に設置されたどの複合機でも印刷できる「複合機anywareソリューション」など、移転後に従業員が喜びを感じられるよう工夫したソリューションが用意されているという。
オフィス移転は決して小さな話ではない。実際に行うとなると、やはり企業の負担は避けられないものだ。しかしこの不況時、高い賃貸料を払い続けるくらいならば、コスト削減のために一歩踏み出すことで大きな効果が得られるかもしれない。会社側の都合だけでなく、従業員のケアまで考えるならば、また移転に伴う日常業務の増加に悲鳴が予測されるならば、オフィス移転ソリューションのようなプロの支援はとても効果的だろう。
「総務部主体のオフィス移転でも、意外とIT部門がやるべきことは多い。スケジュールなどが伝えられず、移転後に対応するしかないIT部門は、往々にして、オフィス移転という言葉に不安を覚えているのだ」(宮保氏)。
2009/8/27 09:00