日本HP、クラウドに特化したWeb専用端末「Internet Appliance」

シンクライアントを特定用途向けに改良

米HP バイスプレジデント デスクトップソリューションズ R&Dのデビッド・ホワイト氏

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は10月5日、インターネット専用端末「HP t5730wi Internet Appliance(以下、t5730wi)」を発表した。直販・販売代理店にて同日より、HP Directplusにて11月上旬より販売を開始する。

 日本HPでは、端末にデータを保持しないセキュアなシンクライアントソリューションとして「HP RCS(Remote Client Solution)」を提供している。それに併せて、シンクライアント端末もローエンドからハイエンドまで取りそろえているが、「今後、ハイエンド端末は従来のように画面転送型のシンクライアントとして進化し、ローエンド端末はより特定用途に特化した専用端末化していく」(米HP バイスプレジデント デスクトップソリューションズ R&Dのデビッド・ホワイト氏)と想定。

 「昨今、SalesforceやGoogle AppsなどのWebブラウザで完結するクラウドサービスが発展し、社内アプリケーションもWeb化が進んでいる。クラウドの進化で“所有から使用へ”とパラダイムシフトするにつれ、PCからシンクライアントへの移行が加速しているが、この流れがさらに進めば、クラウドサービスを利用できる単純なWeb専用端末で事足りる業務も出てくるようになる」(クライアントソリューション本部長の九嶋俊一氏)と見ている。

HP t5730wi Internet Appliance

 t5730wiは、特定用途としてWebアクセスに特化した端末。シンクライアントのノウハウを活用しながら、「シンクライアントではない」(九嶋氏)と語るように、「Citrix XenApp 11」「HP RDP MMR Enhancements」「HP RGS」「Altiris agent」「HP SAM」といった画面転送や管理のためのコンポーネントを省き、代わりに「Java 6.14」「Adobe Flash 10」「Adobe Reader 9.1」「Direct X 9.0c」「.NET Framework 2.0」「OpenGL」などのWeb向けコンポーネントをプリインストールしたのが特徴。「クラウド専用の端末というのは、これまでどこの会社からもリリースされていない。トレンドが急速に変化する昨今、クラウドに最適な端末とは何かという問いに対する日本HPの1つの回答だ」(九嶋氏)という。

 ハードウェアスペックは、Windows Embedded Standard正規版、AMD Sempron 2100+(1.0GHz)、2GBメモリ、Gigabit Ethernetなど。HDD、光学ドライブ、冷却ファンなどの駆動部は省くことで、静かさと壊れにくさを実現している。

 WebブラウザにはInternet Explorer(IE) 7を採用。ウイルスやキーロガー対策のほか、P2Pソフト利用不可といったセキュリティ対策が施されている。メンテナンス性としては、電源のオン/オフで即座に設定した状態に初期化が可能。液晶モニターの背面などに設置できるコンパクト性を備え、厳選した低電力部品で省エネ化も図っている。

 価格は4万8300円。

t5730wiの主なスペック画面転送などのコンポーネントを省き、代わりにWeb向けコンポーネントを搭載主な特徴

 デモでは、Google Appsなどが軽快に動く様子のほか、便利なクラウドサービスの一例として「Startforce」を紹介。これはWebブラウザ上にデスクトップ環境を展開するサービスで、これを利用すれば、Microsoft OfficeやIE以外のWebブラウザなども利用可能となる。

Startforceログイン画面Webブラウザ上にデスクトップ環境この上でMicrosoft Officeなども利用可能

 当面のターゲットとしては、コールセンターなどWebのサービスしか利用しないユーザーやGoogle Appsユーザー、インターネットカフェや公共機関のキオスク端末などを想定。クラウドの浸透に応じて、一般オフィスへの展開も積極的に狙う方針だ。

 なお、t5730wiと同時に、CTCとの協業も発表された。CTCでは2009年7月に「Google Apps Premier Edition」の販売・サポートを開始している。今回、そのラインアップにt5730wiを加え、企業のクラウド実現に向けたトータルインテグレーションサービスとして10月5日より提供開始する。

 同サービスでは、Google Appsの販売をはじめ、企業における認証基盤統合のためのシングルサインオンや統合ID管理システムの構築、セキュリティ対策、既存システムのクラウド移行サービスなどを提供する予定。これらにより、今後3年間で30億円の売り上げをめざすとしている。


(川島 弘之)

2009/10/5 15:45