ヴイエムウェア、Virtualization Forum 2009を開催


 ヴイエムウェア株式会社は10月20・21日の両日、仮想化関連のプライベートイベント「VMware Virtualization Forum 2009」を開催した。

代表取締役社長の三木泰雄氏

 まず、同社代表取締役社長の三木泰雄氏が登壇し、登録者数が昨年と比べ倍の4500名になったと発表。「仮想化に対する関心の高まりを表すもの」と、日本においても仮想化が企業システムに欠かせないものになっていると説明。「仮想化導入はサーバー統合を目的としたものが中心ではあるが、ディザスタリカバリやデスクトップ仮想化、環境対応など、さまざまな使われ方も出てきている」と、単純なサーバー統合から次のステップに進みつつあるとした。

 とはいえ、仮想化導入にとって課題はある。「今回、登録者に仮想化の課題を質問したところ、45%の方が社内での技術情報不足をあげている。われわれとしては、パートナーとともに技術情報を提供したり、エンジニアを育成したりしているが、まだまだ不十分。引き続き、パートナーと協力していきたい」と述べた。

米VMwareアジアパシフィック・ジャパン、ゼネラルマネージャーのアンドリュー・ダットン氏

 続いて登壇した米VMwareアジアパシフィック・ジャパン、ゼネラルマネージャーのアンドリュー・ダットン氏は、仮想化領域において、VMwareが選択されている理由を紹介。「VMwareは、データセンターソリューションのほか、デスクトップソリューション、クラウドサービス、開発・テストのソリューションを提供している。仮想化技術で、競合よりも4年以上先行している」と、技術的な優位性を強調。また、仮想化システムを導入している企業の87%がVMwareを利用しているという数字を掲げ、「世界でもっとも信頼されている仮想化プラットフォームがVMware」と、競合他社との実績面での優位性もあわせて強調した。

 特に企業内クラウドを構築する上で、仮想化は不可欠な技術であると紹介。「さまざまな企業がクラウドをうたっているが、クラウドは目的ではなくコンピュータを使用するひとつの方法でしかない。クラウドを利用するために既存システムを捨てろという企業もあるが...、クラウドはソフトウェア主体でなければならない」と、既存システムを有効活用できる、仮想化ベースのクラウドが企業にとって現実的な方法であると述べた。


1998年のVMware Workstationから始まる仮想化の歴史同社の製品ラインこれまでの実績を踏まえ、他社との違いを強調

日経コンピュータ編集部長 兼 プロジェクト推進部長の桔梗原富夫氏
中外製薬 参与 情報システム部長の永井秀明氏
日本ユニシス 常務執行役員 ICTサービス本部長の角泰志氏
三菱東京UFJ銀行 常務取締役の根本武彦氏の

 引き続き、ユーザー企業3社が出席して、「企業システムにおける仮想化の価値とは」と題してパネルディスカッションが行われた。参加者は、中外製薬株式会社 参与 情報システム部長の永井秀明氏、日本ユニシス株式会社 常務執行役員 ICTサービス本部長の角泰志氏、株式会社三菱東京UFJ銀行 常務取締役の根本武彦氏の3名のほか、ヴイエムウェアの三木社長が参加。モデレータは、日経コンピュータ編集部長 兼 プロジェクト推進部長の桔梗原富夫氏が務めた。

 導入の経緯について、永井氏は、「製造業でもあり、積極的に最新技術を使おうとおもっていなかった。5年くらい前に、若い社員がフリー版のVMwareを紹介し、石橋をたたきながら使ったのがきっかけ。使ってみると、サーバー構築が手軽に行えることがわかった」と、ふとしたきっかけでVMwareを利用したと紹介。

 「その後、社内に30~40の小さなシステムが存在しているのに気づいた。あまり使われてはいないものの、廃棄できないシステムばかりだったので、これらを仮想化してみるとどうなるだろうということで、まとめてみた。もちろんそのときは製品版を利用していますが(笑)。正直、最初は不安だったが、まとめてみると使えるという実感が得られた」と、実績を積み重ねながら、仮想化という技術が使えるという実感を得てきたと述べた。
 テスト環境でも利用している根本氏は、「テスト環境は、頻繁に使われるものではないものの、求められる機能は多く、利用のピークが重なることも多い。また、テストした環境をそのまま残したいといったニーズもあった。これを物理環境で行うと大変だが、VMwareを利用すれば、資源を効率的に利用できる」と、短期間で環境が構築できる利点をテスト環境でも生かしていると述べた。

 日本ユニシスの場合、ベンダーという色彩が強いが、「実は、昨年からクラウドサービスを展開しており、大量の仮想マシンを使っている」(角氏)と、クラウドサービスの実行環境として、VMwareを大量導入していると紹介。

 クラウドサービスを提供する側にとって、仮想化のメリットは大きいと角氏は説明する。「当然のことながら、クラウドサービスを始めるにあたり、多くのサーバーを用意しないといけない。従来の場合であれば、特定ベンダーの製品でグルーピングしないと品質面で不安になるが、仮想化の場合、ベンダー依存がないのがありがたかった。実際、調達の際、魅力的な提案に柔軟に応じることができ、非常に楽だった」と述べた。

 仮想化導入に不安を持つ企業も多いが、「パフォーマンスに関しては、影響はなかった。サーバーを同居させたときのリソースの取り合いに関しても、ほとんど感じられなかった」(永井氏)。「仮想化に関するトラブルはゼロ、起こったトラブルは人間の設定ミスくらい。運用に関しても、必要なリソースを決めて、設定するだけ」(角氏)。「重要なのは、自分たちのサービスレベルがどの程度なのかを把握し、どうデザインするかという点にある。仮想レイヤーが増える分、作業負荷がかかるようにおもわれるかもしれながい、トータルでみた管理負荷は大きく削減された」(根本氏)。

 とはいえ、仮想マシンで動作するアプリケーションのサポートなど、不確定要素は存在する。「アプリケーション自体は、たいてい問題なく動作している。ただし、ソフトウェアベンダーがサポートを正式に表明していないのが現状ではある。なので、確認しながら使ってはいるが、著しい制約というものはない」と、動作そのものに問題はないものの、ベンダーサポートへの不安が残ることが課題としてあげられた。

 仮想デスクトップへの関心が高まっているが、「現在、VMware Viewを利用して、3000台のシンクライアントで実証中。情報セキュリティ管理の面で有効だと見ており、年内には評価結果が出る予定」(根本氏)と、すでに取り組んでいると発表。中外製薬の場合、導入そのものは未定だが、「セキュリティの観点では有効」(永井氏)と期待できる技術であるものの、導入には同社特有の問題もあると指摘。「営業マンの多くは病院に訪問しているが、病院内ではモバイル通信が制限されている。そのため、シンクライアントでの利用は難しい」と、必ずしもニーズに応えているソリューションではないと述べた。

 これに対して、三木社長は、「VMware Viewには、ネットワークが使えない環境でも利用できるよう、オフラインサポートも行っている。必要に応じて、仮想マシンをノートPCにダウンロードするという使い方が可能」と、技術的には解決しているとした。

 最後にクラウドコンピューティングへの取り組みを聞いてみると、各社ともなんらかの形で企業内クラウドを構築済みであると説明。

 「企業内クラウドは構築しているが、外部のクラウドを使うには勇気がいる。また、外部のクラウドが一般化したとしても、社内に基礎技術を蓄積するという意味で企業内クラウドは運用しつづけるのではないか」(永井氏)と、外部クラウドに慎重な姿勢を示した。これに対して、根本氏は「外部のクラウドも企業内クラウドも両方利用している。膨大な業務アプリケーションを保有しているので、単純に外部クラウドだけでいいという話にはならない。やはり、自社のITポートフォリオを見据えて検討することが重要」と、柔軟に利用する姿勢を示した。角氏は、「クラウド事業者として、実は企業内クラウドがライバルになっている」と、自社クラウドが競合化すると予測した。



(福浦 一広)

2009/10/21 00:00