楽天経済圏を支える「楽天スーパーDB」-Teradataユーザー事例

Teradata Partners 2009

開発部 グループプラットフォーム開発・運用課長の景山均氏

 ワシントンDCで開催中のTeradata Partners 2009にて、楽天株式会社がユーザーセッションを実施。同社のさまざまなサービスでマーケティングの軸となる「楽天スーパーDB」について紹介した。

 楽天はECを筆頭に、Card/Bank/Security/Communication/Travel/Portalなどさまざまなサービスをオンラインで提供している。それらは循環型の経済システム「楽天経済圏」を形作り、ユーザーが各サービスをまたがって利用できるように相互連携が図られている。

 そしてユーザーにより良いサービスを提供するために、Teradata製品によって、ユーザー動向などのデータを集約した楽天スーパーDBを構築。BIツールなどで分析を行うことで、徹底したユーザープロファイリングを実施しているのだ。

 「サービスを効率よく提供するためには、およそ7000万人の会員属性や行動情報を集約・分析することが重要。Teradata製品は、データを集約し、会員一人ひとりにマッチしたコンテンツやサービスを提供するためのレコメンデーションやパーソナライズに活用されている」(開発部 グループプラットフォーム開発・運用課長の景山均氏)。

 2007年からデータ収集準備を始め、2008年に分析やそれに基づいたパーソナライズCookieの開発に着手。さらにマーケティング担当者向けにKPIモニタリングなどもスタートし、楽天スーパーDBを軸とする一連のシステムは、同年より本格稼動した。

 活用されたDWHプラットフォームは、ストレージ容量10PBで最大157PBまでスケールする「Active Enterprise Data Warehouse 5550」。これで構築した楽天スーパーDBには、ユーザーの「Demographic」「Giographic」「Behavior」「Psychographic」などを集約。より詳細に見ると「性別」「年齢」「地域」「既婚/未婚」「子供」「仕事」「会員履歴」「購入金額」「購入頻度」「直近のログイン時間」「自分で購入したか/家族が購入したか」「重視するのは価格か/品質か」「どんな分野に興味があるか」など、非常に多岐にわたるデータが一元化されている。

楽天スーパーDBを軸にした楽天経済圏サービス横断的にユーザープロファイルを作成収集しているデータは非常に多岐にわたる

 これらのデータを分析し、マイニングすることで約600のクラスタモデルを生成。そのデータをNFS経由で各サービスアプリケーションに渡している。「従来は各サービスごとに分析を行っていた。楽天スーパーDBを構築してからは、横断的なユーザー行動分析を基に、ユーザープロファイルを作成することが可能になった」(景山氏)という。

 このシステムによって、さまざまなことが実現するようになった。その中で、どうすれば顧客満足度を向上できるか。楽天では実際にさまざまなサービスモデルのトライアルを繰り返し、2008年以降、効果が見込めるものだけを実際のサービスに採り入れ始めた。

 その一例が、パーソナライズド・メールマガジン。各ユーザープロファイルに応じて、従来よりもさらに的確にユーザーに適した配信を行ったのだ。またWebサイト上のバナー広告も、各ユーザーごとに異なるものを表示する仕組みも採り入れた。

 その結果、メールマガジンの開封率も、バナーのクリック率も明らかな向上が見られたという。それだけでなく、「データの利用をリアルタイム化することで、例えば、楽天カードに申し込んでいないお客様に申し込み用バナーを表示し、申し込みが完了した段階から、別のバナーを表示するということも実現した」(同氏)という。日次のバッチ処理では到底不可能なサービスだった。

パーソナライズド・メールマガジンを配信。クリック率が増加過去に楽天GORAを利用したが、最近利用していないユーザーにゴルフ関連のバナーを表示

 「現在は、Cross-Useなどの情報を基にして、特定のユーザーに最適な楽天グループの他サービスを提案することも可能になっており、クロスセルの増加に貢献している。楽天スーパーポイントなどもこのシステムで管理されている」(同氏)という。

 楽天グループユーザー数は2007年から順調に増加。トラフィック量もこの5年で50倍に増え、月単位で8.6Gbpsにも及んでいる。そうした楽天経済圏を支える屋台骨が、Teradata製品で構築された楽天スーパーDBなのだ。

 現在はアジアにフォーカスしながらも、グローバルへの視野も継続して広げ続けていくという同社。「開発部では1000名以上のスタッフが、年間100数十億円をかけて、40以上のプロジェクトの開発を進めている。その中で楽天スーパーDBや共通アプリの開発を行うスタッフは150名。最近ではトラフィックの増加に伴い、随時サーバーを増強し、現在6000台が稼動している。基幹データベースもスケールアップを検討しているところだ」(同氏)としている。




(川島 弘之)

2009/10/21 15:30