NRIセキュア、電子ファイルに重要度ラベルを付与して管理するセキュリティソフト

データそのものを守る新コンセプトの情報漏えい対策を提案

「SecureCube / Labeling」の製品コンセプト
代表取締役社長の増谷洋氏
設定するラベルの選択画面

 NRIセキュアテクノロジーズ株式会社は10月28日、電子ファイル情報資産を重要度別に識別・整理する新コンセプトのセキュリティソフト「SecureCube / Labeling」を提供開始すると発表した。クライアントPC側で情報資産を識別・整理する「Personal」と、サーバー側で情報資産の利用状況を収集・統合して管理する「Enterprise」の2種類をラインアップし、まず、Personalを同日より無償で配布する。Enterpriseは2010年1月に発売する予定。

 SecureCube / Labelingを提供する背景について代表取締役社長の増谷洋氏は、「これまでの情報漏えい対策ソリューションは、データそのものではなく、ネットワークやサーバー、PCなど、データが通過したり、保存される際のセキュリティ対策に重点が置かれていた。この対策は、一定の効果はあったと感じているが、セキュリティレベルをもう一段上げるためには、データそのものを守る本質的な情報漏えい対策が必要だ。そして、今後はこうしたソリューションが主流になってくると判断し、今回、重要な情報資産にラベルを付与することで、より本質的なセキュリティ対策が行えるソリューションを開発した」と述べている。

 無償配布されるクライアント版のPersonalは、利用者が自分のクライアントPCで電子ファイルを作成し、保存する時点で、そのファイルにラベルを付与して重要度を設定することができる。ラベルの重要度は、「極秘・関係者限・社内限・公開」など、利用者が自由に設定可能となっている。また、ラベルを付与した電子ファイルを、格納場所や機密情報区分など利用者が設定した項目に沿って識別し、一覧表示できる情報資産管理台帳を作成することも可能。この管理台帳を情報漏えい防止対策と重要度の把握・管理を行うための基礎データとして活用することができる。ラベル付与に対応している電子ファイルは、Microsoft Office 2003/2007(Word、Excel、PowerPoint)のファイルで、今後対象とする電子ファイルの種類を拡大していく予定。

 Personalを無償で配布する狙いについて増谷氏は、「データそのものを守るソリューションは、当社にとって新たなチャレンジであり、日本全国、さらには全世界のあらゆるユーザーに、とにかく利用してもらいたいと考え、無償提供することにした。また、無償版が多くの企業に利用されることで、各社のソリューションと連携した新たなシナジー効果が生まれることにも期待している」とし、「将来的には、日本発のグローバルスタンダードとなるソリューションに成長させたい」と意欲を見せた。

 一方、管理サーバーで利用するEnterpriseは、Personalと組み合わせることにより、全社レベルで統合的な情報資産の管理を実現する。主な機能として、1)ラベル情報収集・管理機能、2)ラベルポリシーの統一機能、3)ログ管理・分析・レポート機能、の3つを備えている。「ラベル情報収集・管理機能」では、利用者が識別・整理した情報資産を収集し、企業全体の統合資産管理台帳を多角的な視点で作成する。「ラベルポリシーの統一機能」では、利用者が付与するラベルのポリシーを全利用者に対して統一させることができる。そして、「ログ管理・分析・レポート機能」では、電子ファイルにアクセスし、ラベルを付与したログを統合管理することで、情報資産に対するアクセスログを統合管理・分析・レポート化する機能を提供する。


SecureCube / Labeling Personalの機能イメージSecureCube / Labeling Enterpriseの機能イメージ

 なお、Personalによるクライアント運用からスタートし、必要に応じてEnterpriseと組み合わせたサーバー運用に切り替えることも可能。この際、付与したラベル情報は、すべてサーバー運用へ引き継がれるため、特別な切り替え作業などを行う必要なく、効率的に企業内で取り扱う情報資産の識別・整理を実現できる。

 SecureCube / Labelingの今後のロードマップについて、セキュリティコンサルタントの池浦規之氏は、「2010年1月に発売予定のEnterprise版は、現在複数のソリューションベンダーでの評価が行われている段階で、今後、連携ソリューションおよび販売パートナーの拡充を進めていく。そして、2010年度中には、ラベリングビッグバンを起こし、Personal版、Enterprise版の利用拡大とともに、ラベリングをベースにした新たなセキュリティソリューションの創造を目指す。さらに、その次のステップで日本発のグローバル展開に着手していきたい」との考えを示した。



(唐沢 正和)

2009/10/28 16:08