「コストを下げて生産性とイノベーションを」、米MicrosoftバルマーCEOが講演


 マイクロソフト株式会社は11月5日、企業・官公庁のCIOを対象としたプライベートイベント「Microsoft Executive Forum」を開催。米Microsoft最高経営責任者(CEO)のスティーブ・バルマー氏およびマイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏が登壇し、「The New Efficiency = 効率と効果の“新”方程式」と題して講演が行われた。

米Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏
コスト削減・生産性の向上・イノベーションを効率と効果の“新”方程式であると紹介

 樋口社長は現在の景況感に触れ、「100年に一度といわれる後退局面から、マクロ経済の数字は底を打ったようだという声を聞く。しかし、まだまだ、よたよたとした景況感が続いている」と、経営者にとって安心できる環境にはなってないと説明。「とはいえ、急激な経済の悪化により、目の前のコスト削減を終え、競争優位性を構築するための中長期の戦略を検討する段階に入っている。特に、財務状況の悪化により、過去の非効率なものを最適化するにはよい環境になっている」と、急激な経済の悪化により、これまで見過ごされていた非効率部分の見直しが行いやすくなっていると指摘する。

 「日本では、お客のパワーが強く、盲目的に話を聞いているのが現状だ。それは企業のITについても同様で、ユーザー部門の強い声に押されて、ガラパゴスなシステムができあがってしまい、これが非効率を生んでしまっている」と、独自システムにこだわるあまり、効率性を損ねたシステムが競争力強化の足かせになっていると述べた。

 そこで、今回の講演のテーマである“New Efficiency”が重要になると樋口社長は強調する。「この厳しい局面をくぐり抜けたことで、すでに新しい経済状況に突入している。この間に行ってきたシビアな考え方は元には戻らず、より強化されるだろう」と、企業にとって、より効率的な活動が重要になると指摘した。


米Microsoft CEOのスティーブ・バルマー氏
同社が掲げるビジョン
Windows 7早期導入企業が得たコスト効果

 引き続き登壇したバルマーCEOは、同社が掲げる新しいビジョンを紹介。「ITはPCだけでなく、スマートフォンや今後登場するスマートTVでも展開されるようになる。そうした時代にキーボードやマウスといったインターフェイスは不十分であり、カメラや音声認識といったインターフェイスが求められるだろう。こうしたナチュラルユーザーインターフェイスと、クラウドがもたらすメリットを組み合わせることで、パラダイムを変えることができるだろう。われわれはこれを“スリースクリーン&クラウド”と呼んで、注力している。技術の変化は、コンシューマでもビジネスでも効率を高めることが重要だが見落とされがちだ。われわれはこうしたトレンドを追求している」と、ITと人がいかにシンプルにアクセスできるかを重視していると述べた。

 この流れにつながるのがWindows 7であると紹介。バルマーCEOは、「Windows 7はこうした新しい効率性に適応した製品。より少ないリソースで、より効率的に使え、あらゆるユーザーにとって使いやすいのが特長だ。また、MDOP(Microsoft Desktop Optimization Pack)を組み合わせることで、IT部門に管理機能を提供することができる」と紹介。「早期導入企業の声を聞くと、コスト削減につながるOSであるという評価や、消費電力削減効果があるといった評価をいただいている。消費電力の削減はCO2排出量を抑制するのにも有効なので、多くの企業が注目している。また、MDOPにより、より少ない資源でより多くのことができるため、さらなるコスト削減を実現したという声もいただいている」と、“New Efficiency”を実現するOSであると強調した。

 このほか同社のクラウドへの取り組みも紹介。「クラウドに関しては、サーバーとクラウド双方で選択肢を提供しており、すでに多くの企業が動きをみせている。もちろん、クラウド利用はまだ早いと考えている企業も多いので、そうした企業には、Windows Server 2008 R2やExchange Server 2010といった新製品を用意している。これらの製品は仮想化への対応やストレージの効率化など、より少ない資源でより効率的に利用できる製品に仕上がっている」と、個々の企業に応じて自由に選択できるメリットを紹介した。

アステラス製薬 代表取締役社長の野木森雅郁氏

 Windows 7の早期導入企業として、アステラス製薬株式会社 代表取締役社長の野木森雅郁氏が出席。同社は、2010年中にグローバルで2万台のPCにWindows 7 Enterpriseを採用することを発表している。

 野木森社長は、「アステラス製薬は、2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して生まれた新しい企業。ITシステムは統合により、同じシステムを導入しているものの、地域ごとに存在しているのが現状。今後、拠点を問わず、シームレスに活動できることを目指し、Windows 7のグローバル導入を決定した」と、採用の経緯を説明。「ロケーションフリーのITサービスを行う上で、マルチ言語対応のOSは不可欠。また、業務システムのグローバルでの有効活用やセキュリティの強化、運用コストの削減といったメリットもあった。なにより、グローバルでよりステップアップできるビジネス展開に欠かせないと考え、導入を決定した」と述べた。

 半年以内にWindows 7を導入すると表明している企業は、現時点で228社。樋口社長は、「われわれは、研究開発に95億ドルと多額のコストをかけている。これは方向性を間違えると無駄な投資になる危険性も含んでいる。そのため、きれいなロードマップを持つことが重要であり、それにより顧客の投資保護も実現する。今後も、期待に応える製品・ソリューションを開発し、届けられるようがんばっていく」と述べ、講演をしめくくった。





(福浦 一広)

2009/11/6 00:00