「クラウドに必要なのはEnterprise DRM」、DRM市場を切り開いたFasooの国内戦略


代表取締役社長のゾ・ギュゴン氏
セキュリティポリシーに基づき、機密文書の所在にかかわらず、持続的に守り、使用をコントロールし、使用履歴を残すE-DRM
E-DRMのアーキテクチャ

 韓国Fasoo.comは11月25日、マルチメディア著作権保護としてコンシューマ市場で広く活用されているDRM技術の企業活用について説明会を行った。「クラウド環境に真に求められるセキュリティは、Enterprise DRMだ」。そう語るのは、登壇した代表取締役社長のゾ・ギュゴン氏。コンシューマ向け、企業向け双方にDRMソリューションを提供する同社の事業戦略について、「日本も含めて今後は、DRMのSaaSが重用されるようになるだろう」と思いを語った。

 Enterprise DRMは、コンシューマ向けのマルチメディア著作権保護などで利用されているDRM技術を企業内に応用したもの。ビジネスファイルを暗号化して、持続的なアクセス権限管理を行うことで、企業外に送信されたメールや社内外で共有されるファイルを、情報漏えいのリスクから保護する。

 一般的なDRMが、1つのファイルにつき、購買者1人に権限付与するのに対し、E-DRMは1つのファイルにつき、複数人に権限付与するのが特徴で、かつ権限付与後に使用者変更や使用者別権限変更も行える。

 例えば、「現状のメールセキュリティ対策は、暗号化にしても、誤送信防止にしても、送信時点までの対策に過ぎず、受信者の手に渡ったあとの“持続的対策”は皆無。一方で文書を保護するリポジトリから離れていった文書も保護できるのがE-DRMの特徴で、機密情報が不適当な誰かの手に渡っても内容の漏えいを防ぐことができる」(ゾ氏)。

 Fasoo.comは、もともとSamsung SDSというSI会社が、DRM技術を持つInterTrustと技術提携・独立して設立。2000年に「世界で初めてコンシューマ向けDRMサービスを商用化した」(同氏)という市場の先駆者だ。2001年にEnterprise DRM市場にも参入し、「Fasoo E-DRM」という総合DRMソリューションを提供。韓国における市場の発展に大きく貢献してきた。

 2005年にはLG Hitachi(LGと日立の合弁会社)と提携。以来、日立システムの「Millemasse」、マイクロソフトの「SharePoint」など他社製品との連携を実現。ユーフィットの「KnowledgeOn」、ITフロンティアの「OluOlu CABINET」、コクヨS&Tの「@Tovas 往復便」との連携の可能性も検証するなど、韓国と比べるとまだまだ導入期という日本においても、その普及拡大に努めている。

 今後はE-DRMのSaaS化も行っていく方針で、情報共有製品向け「FSD(Fasoo Secure Document)」、外部送信・共有向け「FSE(Fasoo Secure Exchange)」、PC向け「FSN(Fasoo Secure Node)」、ファイルサーバー向け「FSF(Fasoo Secure File-Server)」などのFasoo E-DRM製品群を順次、サービス化していくという。

 「昨今、クラウドが流行だが、導入をためらう最大の理由がセキュリティへの不安。例えば既存のセキュリティソリューションでは、文書リポジトリに入れる前の機密情報は保護できないし、文書リポジトリから取り出した機密情報も保護できない。安全な場所というものがひどく限定的で、そこから離れた情報も保護するという、文書のライフサイクル全般にわたった視点が欠けているのだ。今後、クラウドがより浸透し、企業の枠を越えフレキシブルにデータが共有されるクラウド環境では、E-DRMによるセキュリティが何よりも重要になる」(同氏)。

 そうしたクラウド環境に対応するよう、「国内でも2010年までにSaaS基盤を整え、各種アプリケーションを提供するSaaSプロバイダとのさまざまな連携サービスモデルを模索したい」(同氏)としている。これにより、2011年度の国内売り上げ、5億円を目指す方針。


(川島 弘之)

2009/11/25 19:09