「競争相手は無料ソフトという状況は変わらない」ATOK 2010発表会


 株式会社ジャストシステムは、12月8日に開催した新製品発表会において、日本語入力ソフト「ATOK 2010 for Windows」の機能強化点などをアピールするとともに、グーグルの日本語入力ソフト参入についてもコメントした。

統計情報の洗練と文脈処理により変換エンジンを強化

ジャストシステムの井内有美氏

 ジャストシステム コンシューマ事業部企画部の井内有美氏は、ATOK 2010の変換エンジンでは、主に自然言語処理研究の成果として、統計情報の洗練と文脈処理の2点を強化したと説明。機械的な処理では正確に変換できない文章に対して、統計情報を利用することで文章として適切な文節区切りが行えるように改良。また、自動的に文章の分野を判断する文脈処理についても、分野が判断しにくい文章においても、同意語の出現頻度や前方の単語との距離の組み合わせの確率を計算することにより、同音語を適切に変換する精度を高めたという。

 変換エンジン以外には、入力支援機能をさらに強化。例えば「インターネット」を「いんてrねt」のように、カタカナ語を英単語のつづりで入力してしまった場合でも、入力を正しく認識して「インターネット」と変換できるようになった。また、校正支援の機能としては、「再び再開する」のような重ね言葉についても、指摘と訂正候補を表示する機能を備えた。

統計情報の洗練により変換精度を向上文脈処理の進化により同音異義語の変換精度を向上
カタカナ語を英単語のつづりで入力した場合の変換にも対応「いんてrねt」が「インターネット」と正しく変換される

 前バージョンのATOK 2009から導入された英語の入力支援機能「ATOK 4E」についても、スペルチェック機能が単語だけでなく熟語にも対応したほか、次に来ると思われる単語の候補を表示する推測入力の予測アルゴリズムを強化。候補が表示されるウィンドウも、スペルチェックや辞書からの候補をまとめて表示するようにし、目的の単語を見つけやすくした。

 また、ATOKから各種のWebサービスが利用できる「ATOKプラグイン」については、電子辞典と同様に「End」キーから利用できるようにすることで、操作性を改善。さらにATOK 2010のプレミアム版には、クロスランゲージの翻訳サーバーとの連携により、入力した日本語を8カ国語に翻訳できる翻訳変換機能を搭載した。

重ね言葉を指摘する校正支援機能複数単語に対してもスペルチェックが有効となった
Webサービスが利用できる「ATOKダイレクト」は電子辞典と同様の操作性に8カ国語翻訳機能も搭載

Googleの参入は「ウェルカム」、iPhoneやAndroid、Chrome OS用のATOKも

ジャストシステムの佐藤洋之氏

 ジャストシステム コンシューマ事業部企画部の佐藤洋之氏は、「ATOKは日本語入力の枠にとらわれない取り組みを続けてきた」として、ATOK 2010では日本語入力システムとしての進化に加えて「LocalとWebの融合」を強化したことで、さらに次のステップへと移行すると語った。

 今後の取り組みについては、特殊用語や用語統一などのニーズを満たす法人向けの対応を強化するとともに、携帯端末や組み込み機器向けのATOKの開発も進めていくと説明。iPhone、Android、Google Chrome OSなどに向けたATOKについても、開発を進めていくとした。

 さらに将来的には、Web、リッチインターネットアプリケーション、クラウドといったあらゆる場所でATOKが動作することを想定していると説明。マルチプラットフォーム上でのローカルとWebの融合により、どこでもATOKが動作する環境の構築を目指すとし、「みなさんが想像しているよりも早くこれらの製品を投入したい」と語った。

 グーグルが「Google日本語入力」を発表し、日本語入力ソフトの分野に参入してきたことについて佐藤氏は、「現時点で我々が競争相手としているのは、マイクロソフトやアップルが提供している無償のソフトウェア。グーグルも無償で提供しているが、そういう意味ではあまり変化がない。逆にグーグルのような新しい取り組みをしている会社が、日本語入力の分野に参入することは、注目も集まり、たいへんウェルカムな状況だと考えている。我々の開発陣も、熱意を持って開発に取り組んでいきたい」とコメントした。

ATOK 2010のテーマは「日本語入力システムとしての進化」「LocalとWebの融合」iPhone、Android、Chrome OSなどにもATOKを提供していくと説明





(三柳 英樹)

2009/12/8 17:40