ビジネスインキュベーターのMetaMojiが目指すもの、浮川夫妻が説明

誰もがアプリ開発できる仕組みを創出へ

代表取締役社長の浮川和宣氏
代表取締役専務の浮川初子氏

 株式会社MetaMojiは1月14日、記者向けに会社説明会を開催。ジャストシステムの創業者であり、MetaMojiの代表取締役社長となった浮川和宣氏と、代表取締役専務となった浮川初子氏が登壇し、設立されたばかりの新会社の目標や事業の概要などを説明した。

 浮川社長はまず、「30年前にジャストシステムを創設し、以来、マイコンのころからコンピュータに携わってきた。いまではWebやケータイなどすさまじい発展を遂げ、新しい技術やサービスがちまたに溢れていると一般的には感じられる。が、ITに長年携わってきた身として、ほかにも何か新しいことができるのではないかと常々考えてきた結果、まだまだITで何もできていないという実感に達した」との考えに言及。

 その上でMetaMojiの目標を、「私たちは社会の事象をもっとよく知り、理解することができるはず。それをITで実現できるのではないか。それにより、もうちょっといい社会が創出できるのではないか。MetaMojiでは、より良く“知り”“伝え”“理解”するためのIT技術を研究開発し、それに基づくサービスを提供し、さらに豊かで平和な社会となるよう貢献したい」とし、「人間の知識共有もIT、主に文書に頼っているが、より多くの人が自らアプリケーションを構築できる革新的技術を研究し、それを相互に利用できる知的サービスモデルを構築する」と述べた。

 ジャストシステム退職後は新会社の設立準備に忙殺され、「具体的な検討は1月に入ってから始めたばかり」(浮川社長)というように、事業の具体例やロードマップなどは明かされなかった。が、浮川専務によると「一般ユーザーも部分的に開発に参加できる新しいアプリケーション開発基盤」の創出を目指しているようだ。

 「開発基盤」というと範囲の狭いイメージだが、両氏が考えているのは、「画期的なアイデアを持つ一般の人たちが、プログラマなどの技術者を介さずに、自らアプリケーションを開発できる」というような規模の大きい話で、それが完成すると、「例えば、ダイエットに知見を持つ人がこんなダイエットアプリがあれば便利だと考えた場合、そのアイデアを“したいこと”としてシステムに伝えると、システムが現時点で“できること”を提示してくれて、IT技術に精通しない人でもアプリケーションが開発できるようになる」(浮川専務)という。

 この構想の裏には、「一般の人たちがプログラムの元となるアイデアを考え付いても、それを実際に開発できるエンジニアは身の回りにはなかなかいない。結果、アイデアを具現化するのが難しい現状で、常々、歯がゆい思いをしていた。もっと多くの人たちがアイデアを形にすることができるようにならないか」(浮川専務)という考えがあるようだ。

これまでのアプリケーション開発。必ずIT技術者が必要だったMetaMojiがめざすアプリケーション開発では、一般ユーザーも部分的に参加できるアイデアを持つ人が“したいこと”を伝え、システムが“できること”を提示する。この仕組みにより、「例えば、ダイエットの書籍を出しているような専門家が、自らダイエットアプリを開発することができる」という

 MetaMojiは、ジャストシステムからいくつかの事業譲渡を受けた。「XBRL(eXtensible Business Reporting Language)」「オントロジー」「PML(Pattern Markup Language)」に関するものだ。これらオープン技術のほか、自社独自の最先端技術の研究開発を進め、最終的にはクラウド上でのサービス提供などを考えているという。

MetaMojiの構想は「技術を核としたビジネスインキュベーター」になること

 しかし、その提供方式や販路、時期についてもまだ明らかではない。MetaMojiは「技術を核としたビジネスインキュベーター」が実体となる。上記のコア技術開発や投資管理、知財管理などを行い、浮川両氏のアイデアを「事業の卵」に変え、ふ化しそうになったものから順次、さまざまな理解者の協力の下、事業会社を立ち上げていく予定なのだ。この事業会社についても「非常に多くのアイデアがある」(浮川社長)とする一方、「現時点では具体例を出すタイミングではない」と詳細には至っておらず、「ただ、事業会社は自分たちでコントロールしたいという思いが強い」(浮川社長)と語るにとどめている。そのため、新技術を他社にOEMするような展開は、「未来永劫ないとは言えないが、今のところ考えていない」とし、形態としては、今後設立する事業会社をMetaMojiの事業部ととらえた「テクノロジー・ホールディングス」を目指す意向を示した。

 現時点で明らかなのは、「パッケージソフトはもうやらない」(浮川社長)ということだ。しかし一方で、「Webアプリケーションのジャンルになるだろうが、今の時点で目に見えているものだけが技術ではない。今後も新しい技術はたくさん出てくるだろう」と、未知の技術に対する含みも見せている。

 「ひとまずはジャストシステムから譲り受けたXBRLの新製品が最初の成果物になる予定」とする浮川社長。その後はさまざまな技術の研究開発を続け、事業会社を設立していく。MetaMojiとしての収益モデルや売上目標、人員拡充案などについても多くは語られなかったが、「5年後に事業会社の中から、1~2社のIPOをめざす」と抱負を語っている。

 MetaMojiの設立日は、2009年10月30日、資本金1000万円、従業員16名。まだまだこれからの部分も多いが、ともかく新会社の設立準備を終えて、両氏の新たな船出が始まる。浮川社長は「いつまで続けられるかはわからないが、わたしたちの考えに共感してくれる方がいる限り、続けていくつもりだ」と述べた。




(川島 弘之)

2010/1/14 17:32