三菱重工業、NEC製品でREACH対応の化学物質管理を開始


 日本電気株式会社(以下、NEC)は1月15日、三菱重工業株式会社の家庭用・業務用空調機やカーエアコンなどを担当する冷熱事業本部にて、製品の含有化学物質の管理ソリューション「ProChemist」が運用開始されたと発表した。三菱重工業はこれにより、2008年6月よりEUが始めた化学物質規制「REACH」に対応。円滑な化学物質情報の流通を促し、安心・安全なグローバルサプライチェーンの構築を目指す。

 REACHは、約3万種類におよぶ化学物質の環境リスクを管理する規制。欧州市場に製品を輸出する企業は、製品の化学物質含有の有無や料などの情報管理・伝達が求められる。特に健康に影響を与える恐れがある物質は高懸念物質に指定され、EUへの登録が必要となる。未対応の場合、欧州での製造・販売・取引の停止もあり得る、輸出業にとっては重要な規制だ。

 REACHに対応するには、製品とその出荷梱包に至るまですべての化学物質を一点ずつ調査し、含有量を特定するなど膨大な情報を管理しなければならず、また、多数のサプライヤーから速やかに情報を入手・開示し、顧客へ伝達しなければならないなど、業務負荷の増加が懸念される。

 また日本においては、サプライチェーンの中で化学物質情報を適切に管理・開示・伝達するための具体的な仕組み作りと普及を目的に、JAMPが標準化を行っており、これとの連携も必要となる。

 三菱重工業の冷熱事業本部では、空調製品の1/3が欧州向けと輸出比率が高く、また中国やタイなど海外8カ所に生産拠点を保有。世界の約700社と8万点におよぶ部品の取引をするため、従来からRoHS指令対応など化学物質規制への対策に積極的だったが、ProChemistを採用することでREACHにも対応した。

 導入したのは、PDM(製品設計技術情報管理)や生産管理システムと連携し、有害物質情報の一元管理や集計・判定を行う「ProChemist/BM」、JAMPの情報伝達標準規格に対応し、サプライヤ・顧客との調査回答・伝達を行う「ProChemist/CS」、NECのデータセンターから提供するSaaS型サービス「ProChemist/AS」の3点。SaaSでは、JAMPのグローバルポータルへの接続を実現するほか、専用サーバーを持たない部品サプライヤとも各社のシステムを同サービスに接続させることで、調査依頼、回答登録、製品構成の取り込み、化学物質集計、顧客への回答まで一貫して対応できるという。

 同事例は、ProChemistのフル機能を導入した初の事例で、異なる事業所間のみならず、部品サプライヤから顧客まで、サプライチェーン全体での情報共有システムを実現したとのこと。


(川島 弘之)

2010/1/15 12:12