ハイブリッドクラウドにも柔軟な「BizCloud」、NTTデータが全容を明らかに
代表取締役常務執行役員の山田伸一氏 |
NTTデータ株式会社は1月22日、4月1日より提供する「BizCloud」の全体像を明らかにした。
BizCloudは、NTTデータグループが提供するビジネス向けのクラウドサービス。SIerとしてのノウハウを生かし、パブリック/プライベート/ハイブリッドクラウドのほか、パブリックとプライベートの長所を併せ持った「バーチャルプライベートクラウド」や、グループ企業で共用できる「コミュニティクラウド」など独自の形態を展開するのが特徴。
代表取締役常務執行役員の山田伸一氏は「グループのノウハウを結集し、現状のセキュリティ・信頼性、カスタマイズの柔軟性、既存システムとの連携、といったクラウドの課題を解決するトータルサービスをワンストップに提供する」と紹介。ワークフローソフト「intra-mart」、アクセス管理ソフト「VANADIS Identity Manager/SSO」、システム開発ソリューション「TERASOLUNA」、運用管理ソフト「Hinemos」など、実績のある豊富なコンポーネントを活用し、コンタクトセンターやフルフィルメントを組み合わせたBPO(business process outsourcing)にも対応するのが強みだとする。
サービスメニューは「クラウドプラットフォームサービス」と「クラウド構築・運用サービス」に大別される。
豊富なアプリケーション開発プラットフォームやコンポーネントなど、NTTデータグループのノウハウを結集 | サービスメニューは「クラウドプラットフォームサービス」と「クラウド構築・運用サービス」に大別される | ビジネス展開としてはグローバル化なども視野に |
■クラウドプラットフォームサービス
サービス構成。ポータル、フロントオフィス系/バックオフィス系、開発支援系、運用管理系、インフラ系に分け、それぞれに豊富なコンポーネントを用意 |
クラウドプラットフォームサービスは、パブリッククラウドを提供するBizCloudのサービス基盤。リソース共有型で比較的安価、リソースの追加も柔軟に行えるという基本的な特長を持ちつつ、パブリックとプライベートを用途ごとに組み合わせた「ハイブリッドクラウド」と、両者の長所を併せ持つ「バーチャルプライベート」にも対応する。バーチャルプライベートではリソースを共有しつつ、クローズドネットワークを利用することでセキュリティに強いのが特長で、これら用途やSLAに応じた最適な組み合わせで提供するのが「NTTデータならでは」(山田氏)となる。
クラウドプラットフォームサービスは、「企業内システムのクラウド化」や「SaaS事業の立ち上げ」に利用でき、SaaS/PaaS/IaaSをニーズに応じて申し込み分だけの料金制で提供する。具体的なサービス構成は、「ポータル」「フロントオフィス系/バックオフィス系」「開発支援系」「運用管理系」「インフラ系」に分けられ、グループウェア、ERP、ワークフロー、サービス管理、仮想化など各コンポーネントに細分化している。これらを4月より順次拡充し、さまざまな用途で利用できるサービス基盤を整えていく方針。例えば、ポータル、認証・SSO、メール、グループウェアのコンポーネントを組み合わせた「コミュニケーション環境」、あるいはERP、GIS、帳票、課金・請求、ワークフローなどを組み合わせた「業務アプリケーション環境」などを迅速に整えられるという。
SaaS事業の立ち上げ支援では、Oracle DatabaseやエンタープライズVM+OS環境を共用・従量課金で利用でき、将来的にはイニシャルコストなしのレベニューシェアによるプラットフォーム提供にも取り組むとしている。
■クラウド構築・運用サービス
一方のクラウド構築・運用サービスは、プライベートクラウド環境を実現するもの。同環境を「グループ会社での利用」「取引先間での利用」など特定のグループで共有する「コミュニティクラウド」も実現する。
サービスの特長は、非機能要件やTCOに応じたカスタマイズ度合いの選択肢(シルバー/ゴールド/プラチナ)、既存システム要件に応じたOSの選択肢(Linuxモデル/フルOSSモデル/Windowsモデル)を用意し、組み合わせによる豊富なバリエーションを提供する点。シルバーは、クラウドプラットフォームサービスで提供する基本的な基盤となり、ゴールド/プラチナでプライベートクラウドならではのカスタマイズに対応する。
また、クラウドでネックとなるアプリケーション開発では、「intra-mart/TERASOLUNAフレームワーク」や「Prossione/PRORIZE検証スタック」をPaaSとして活用し、スクラッチ開発のデメリットである導入コスト・スピードの改善を図る。さらに既存システムとの連携でも、事前のコンサルティングやマイグレーションサービスにより、さまざまなハイブリッド構想を立案し、最適解を提示するとしている。
構築・運用での具体的なメニューは、1)最適化コンサルサービス、2)マイグレーションサービス、3)クラウド構築サービス、4)運用管理サービスの4つ。業務のあるべき姿とアクションプランに基づくロードマップを策定する1)では、新ビジネスへの対応や事業変革のために必要な「課題の構造化」や「IT資産保持方針」を定め、業務の効率化やTCO削減を図る。その実現のためにシステム移行を検討・実現する2)では、コンサルから移植後の動作試験まで全行程を支援し、オープンアーキテクチャに限らず、レガシーシステム上のIT資産もクラウド化の対象にするという。
最適化コンサルサービスの概要 | マイグレーションサービスの概要 |
3)では、ソフトウェア、ハードウェア、ファシリティ、ネットワークまで一貫して実現。4)を含む形で基盤環境を提供し、リモートからの一元運用サービス、迅速なプロビジョニング、ITILに準拠した管理体系などの運用管理を行う。
クラウド構築サービスの概要 | 運用管理サービスの概要 |
これら4つのサービスを、クラウドプラットフォームサービスの基盤とともに4月から本格提供を開始するのだが、今回、1)と2)に関しては、2月より先行して提供することが明らかにされた。プラットフォームが整うまで提供できるものは提供するという考えで、コンサルとマイグレーションを先行させるわけだ。
執行役員 ビジネスソリューション事業本部長の神田文男氏は「リリースの3年後には1000億円の事業規模をめざす」と目標を語った。
2010/1/22 18:33