SASが2010年の事業戦略を説明、顧客同士のネットワークを可視化する「SNA」なども
SAS Japan 代表取締役社長の吉田仁志氏 |
SAS Institute Japan株式会社(以下、SAS Japan)は2月17日、報道向けの説明会を開催。現況や2010年の戦略などについての説明を行った。
SAS Japan 代表取締役社長の吉田仁志氏によれば、ワールドワイドで34年連続の増収を達成。日本でも、厳しい経済環境の中でもプラス成長を遂げたという。特に実績が上がったのは、ビジネスアナリティクス分野とのことで、中でも顧客分析、リスク分析といった分野は引き合いがあるとした。
その事例として紹介されたのが、ローソンとJA三井リースの2例。このうち、商品の併買分析や新商品投入時のトライアル/リピート分析などを迅速に行いたいというニーズを持っていたローソンでは、業務改革の一環で、流通業向けの「SAS Retail Intelligence Solutions」が採用された。この結果、「迅速に店舗の状況を吸い上げてセンター側で分析し、また店舗に戻すことが可能になった」(吉田社長)という。
一方のJA三井リースでは、協同リースと三井リース事業の合併に伴って、スムーズな事業運営が求めてられており、これを解決するために「SAS Financial Intelligence」を導入した。異なる文化を持つ企業が合併する際には、システムの整合性をどう取るかという点はもちろん、経営の考え方そのものについても、新たな方針が求められる。そこでSAS Financial Intelligenceにより、予算編成や収益管理、KPI管理を一元的に実現するシステムを構築したのだという。吉田社長は、「データをただ統合するのではなく、何をするのか、情報から何を引き出すか、という点に重点を置いてやってもらった」と、この件を振り返った。
2009年の主な採用事例 |
では、2010年はどういった戦略で臨むのか。吉田社長は、1)情報分析基盤の高度化、統合化の推進、2)顧客分析分野とリスク管理分野のソリューション強化、3)パートナーとの戦略的な協業開拓、といった点を重点ポイントとして挙げた。
情報分析基盤の高度化、統合化の推進を図る |
1)は、簡単にいえば「多くのデータを、どう分析するか考えつつ、アウトプットを出していくか」ということ。世の中の総データ量が5年で10倍になるなど、膨大になっていく中で、企業内のデータも増加の一途をたどっている。しかし、多くのデータは非定型であり、インデックス化されて分類されているデータは1割未満にすぎないという。普通の考え方であれば、ではデータをどう整理していくか、というところに考えがおよびがちだが、吉田社長は、「データをただ整理するのではなく、集めた情報で何をするかを考え、目的に合った形で収集・整理することが大事」という点を指摘。「当社は大量のデータを扱うのも得意ではあるが、さらっと傾向を見て、その中の怪しいところを分析する、といったことがこれからは必要になる。アウトプットのイメージが持てないと分析ができないということで、そういうところでもお役に立てると思っている」とした。
SNA、SMAの両ソリューション提供を予定する |
2)の顧客管理分野では、Social Network Analysis(SNA)、Social Media Analysis(SMA)といったソリューションの提供を予定する。SNAは顧客同士の関係を考えるソリューションで、「Aさんが加入したら友人や家族も入るし、やめたらまとめて解約される可能性がある」といったように、一顧客ではなくグループを見つけ出し、そのグループがどういった行動をするのかを分析するもの。またSMAでは、ブログや掲示版などを見て、顧客がどう考えているのかを言語学やデータマイニングを使って分析し、SNAに結びつけていく。こうした「つながり」を洗いだすものは、もともとテロ対策などで利用されていた考え方だとのことで、当然のことながらリスク管理ソリューションでの利用も可能。同社では、これらのソリューションを顧客に訴求したい考えだという。
3)では、グローバル、ローカルの両パートナーとの関係をそれぞれ強化していく意向。グローバル側では、2月17日(米国時間)に発表された、米SASと米Accentureの協業を受け、日本でも予測・分析ソリューションの展開を共同で行う。対象としては、金融、医療、官公庁を特に狙っていく予定で、「例えば、当社はソフトベンダーのため、経営課題の部分には早い段階からアクセンチュアに入っていただく、といった取り組みになる」と吉田社長は説明した。
ローカルについては、日本時間の2月17日に日立システムとの、製造業向けのサプライチェーン管理(SCM)分野での協業を発表。こうした取り組みを、ほかのパートナーとも進めていくとした。
なおSAS本社 上席副社長兼CTOのキース・コリンズ氏は、売り上げの23~25%程度を継続的に研究投資に回している安定性を、同社の強みの1つとして強調。力を入れていくこととして、HPCやマスターデータ管理、データガバナンスといった分野や、SaaS形式での機能提供といったものを挙げた。特にHPCについては、「複雑な管理を行うためのスキルが必要になるし、多くのプロセスがかかわってくるので、通常の代理店では手に負えなくなる」として、ハードウェアベンダーとの協業による、アプライアンス化も視野に入れていると述べている。
2010/2/17 18:00