日本HP、クラウド利用の社内合意形成を支援するコンサルサービス

「何のためのどんなクラウドか」を短期間で策定

テクノロジーサービス事業統括 テクノロジーコンサルティング統括本部長の山本久氏

 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は2月24日、クラウド向けのコンサルティングサービス「Cloud Discovery Workshop(CDW)」を提供開始した。これに伴い、記者向けにクラウドへの取り組みを紹介する場を設け、新サービス詳細やクラウドにおける強みなどを説明した。

 クラウド事業者として多くの知見を有する米HP。自社システムのクラウド化をはじめ、コンシューマ向けに「SnapFish」「CloudPrint」「MagCloud」などを提供済みなほか、HP SoftwareのSaaS化やIntel・Yahoo!との共同研究なども進めている。テクノロジーサービス事業統括 テクノロジーコンサルティング統括本部長の山本久氏は「その知見がHPのクラウドの強みだ。クラウドに対して、単に製品やサービスを提供するのではなく、顧客の情報収集から実運用のステップまで、トータルに支援する体制が整っている」とアピールする。




短期間に、包括的に、クラウド実現の「ベースライン」を形成

テクノロジーサービス事業統括 テクノロジーコンサルティング統括本部 ソリューションビジネス推進本部の宮原猛氏

 CDWはそのうち、クラウド実現に向けた課題を明らかにし、解決のための道筋を探るコンサルティングサービス。ワークショップ形式で、ユーザー企業の担当者5~8名と日本HPのコンサルタントが、「Setting The Scene」「クラウド定義」「クラウドサービス」「クラウド移行」「収益性やROI」「インフラ」「サービス管理」「セキュリティと可用性」「組織とガバナンス」の9つのテーマを議論する。

 例えば「いつまでに、何のためにクラウドを検討するのか」「必要なのはパブリッククラウドかプライベートクラウドか」「PaaSのみか、それともSaaSも利用するのか」「既存のデータセンターをそのまま使うのか」など、日本HPのコンサルタントが必要な質問をし、ユーザーがそれに答える形で現状の課題と解決策を導いていく。

 「ユーザーがある程度のクラウド知識をすでに有しているのが前提となるが、半日程度、関係者全員で集中的に議論することで、方向性を共有することが可能。短期間で社内のクラウド構想のベースラインを固められる」(テクノロジーサービス事業統括 テクノロジーコンサルティング統括本部 ソリューションビジネス推進本部の宮原猛氏)という。

 効果としては、この「社内での合意形成」が大きく、宮原氏によれば「一口にクラウドといっても、人の立場により解釈が異なり、クラウドでどういったビジネスモデルを目指していくのか、といった視点が抜け落ちていることが多い。ワークショップは必ず複数の担当者の方に参加してもらい、必ず発言してもらう。すると、解釈が異なっているということに気付けるため、クラウド実現がぐっと現実味を帯びる」という。逆に「議論の結果、クラウドが最適解ではないという結論もあり得る」(同氏)ことからも、ユーザーの状況を可視化するのに力点を置いたサービスだと強調した。

 特長は、同社の経験を基に9つのテーマを定めた点で、議論に際しては、それぞれのテーマに関するパネルを使用。これにより、何を明確にすべきかを常に意識ながら議論できるので、抜けや漏れを防げる。議論の中でのさまざまな発言はロードマップパネルに落とし込み、最終的な到達点、タイムスケジュール、実行可能なアクションプランまで決定できる。「強みは、ワールドワイドの知見をもとに、コンサルタントすべてが専門の教育を受けていることで、アクションプランとして必ずしも日本HP製品をすすめるわけではないのも特長」(同氏)という。

 価格は、ワークショップをどこで開催するか(日本HP内か、ユーザー企業内か)や、最終報告レポートの有無などにより変動するが、半日・5~8名の場合でおおよそ数十万円から。

CDWの概要検討テーマと全体の流れ

9つのテーマに関するパネルこのようにコンサルタントとユーザーが議論する議論のキーワードをロードマップパネルに張り付け、具体的なタイムスケジュールや、粗いながらも実行可能なアクションプランまで策定する



情報収集から実運用支援まで全6種のメニューを用意

クラウド実現に向けた各ステップに6種のメニューを用意

 このCDW以外にも、「CSW(Cloud Seminer Workshop)」「CIMM(Coverged Infrastucture maturity Model)」「コンサルティング:プラン策定」「導入支援:プロセス策定」「導入支援:統合基盤の設計と導入」を加えた、全6種のコンサルティングメニューを用意している。

 CSWもCDW同様、ワークショップ形式のコンサルティングだが、こちらはクラウドの知識をほとんど持たないユーザーに向けてクラウドの定義から始めるもの。「クラウドの認識が遅れている日本では、これが特に重要だ」と宮原氏は話す。CIMMは、HPが提唱するConverged Infrastructureを実践するための参照モデルと方法論について、質問形式でユーザーのITインフラ成熟度を見える化するもの。またコンサルティングや導入支援では、クラウドを導入するとなった段階で、実際にどのようなプランニングを行うのか、何のサービスをクラウド化するのか具体的な検討を行い、かつ、実際の基盤設計・導入までを支援する。

 日本HPでは、「BladeSystem Matrix」や「Converged Infrastructure」などの製品と併せて、「クラウドサービスの提供」「クラウド事業者の支援」「企業内クラウドの構築支援」を側面から、コンサルティングにも力を入れていく方針。

勉強会形式でクラウドを学び定義する「CSW」、アセスメントにより方向性を確認する「CIMM」ワークショップにより合意形成を支援する「CDW」、サービスの定義とフレームワーク化など実施する「コンサルティング:プラン策定」クラウドコンセプトに基づいたサービスを定義する「導入支援:プロセス策定」、リソースプール型インフラ基盤を導入する「導入支援:統合基盤の設計と導入」





(川島 弘之)

2010/2/24 19:18