実は中堅・中小企業で売れてます-SAPが選ばれる理由


 「中堅・中小企業にとって、SAPは高いとか導入に時間がかかるとか思われているが、それは間違いだ。SAPが抱える顧客の77%は中堅・中小企業であり、この3年間だけをみても3倍も増加している」、そう語るのは、グローバルでSME(中堅・中小企業)ビジネスを統括している独SAP AG、エグゼクティブ・バイス・プレジデントのエリック・デュフォー氏。大企業向けといわれることが多いSAPのソリューションだが、中堅・中小企業で受け入れられているのはなぜなのか。来日中のデュフォー氏、およびSAPジャパン株式会社バイスプレジデント 地域統括営業本部の岡村崇氏の両氏に、話を伺った。

SAP AG、エグゼクティブ・バイス・プレジデントのエリック・デュフォー氏
SAPが抱える顧客の77%がSME

 デュフォー氏は2009年のビジネスを振り返り、「日本だけでなく全世界で厳しい年で、IT投資は下降傾向だった。しかし、第4四半期から回復傾向にあり、2010年は再びIT投資は増大する傾向にあるだろう」と、今年は回復基調にあると説明。そのうち、SMEは110億ドル規模の市場になる見込みであると紹介した。

 日本については、「SMEのお客さまは、BusinessObjectsのユーザーを含めて2倍以上に増加している。製品でみると、SAP Business All-in-Oneを新規導入する企業も増えている。また、電通国際情報サービスとサブスクリプション形式のソリューションを提供するなど、新しい取り組みなども行っている」(岡村氏)と、厳しいながらも確実にSME市場に取り組み、成果が出ていると述べた。

 実際、同社が抱える顧客9万5000社のうち、77%はSMEの企業。デュフォー氏は「SAPは大企業向けというのは間違いだ。7万3000社のSME企業のうち、売上高が5億ドル未満の企業が85%と多数を占めている。また、SAPのソリューションはSMEにとって高すぎるともいわれるが、実際はパッケージ化することで手ごろな価格に設定している。SAPのWebサイトで試算できるようにしているので、事前にどの程度の価格になるかを確認することもできる」と、SAPに関する“都市伝説”を否定。「導入に何年もかかるといわれているが、実際は12週間以内で稼働している」と、SMEにとってSAPは手が届かないソリューションではないと強調した。


SME向けに手ごろなパッケージ製品を提供ファースト・スタート・プログラムで8~12週間で稼働

 SMEビジネスを支える背景として、パートナーとのエコシステムが大きな要素になっているとデュフォー氏は説明する。「6000社のパートナーがSMEに対応しており、幅広いサポートを提供している。また、SAPが提供するSME Go-to-Market戦略により、パートナーの営業コストを低価格に抑えることで、利益率の高い成長につながっている」と、パートナーにとってメリットが大きいことが成長のひとつとして挙げた。

 「パートナーがSAPを扱っていただいているのは、Go-to-Market戦略のほかに、SAPが市場でリーダーであることも大きい。われわれはパートナーのビジネスが成功することを、われわれのビジネスが成功することであるととらえており、機会をともに設けることで強力な成長を推進している」(デュフォー氏)と述べた。

SAPジャパン、バイスプレジデント 地域統括営業本部の岡村崇氏

 日本市場では、こうした理由に加えて、「これまで日本のSMEが利用していたERPは日本にフォーカスしたものばかり。SMEといってもグローバルでビジネスを展開するようになると、全世界で使われているSAPの価値が高く評価されるようになった。また、グローバルのベストプラクティスを使えるのも大きい」(岡村氏)と、グローバル展開がきっかけになっているとした。

 実際、SAP製品を選択する企業のうち、他社製ERPからの乗り換えが7割、カスタムソリューションからの乗り換えが3割と、なんらかの形でERPを利用している企業が採用しているのが興味深い。「乗り換える理由として、コンプライアンス対策やIFRS対応という面も強い」(岡村氏)と述べた。



(福浦 一広)

2010/3/8 00:00