3分の1の日本企業はパブリッククラウドを検討せず-シマンテック調査


同社プロダクトマーケティング部プロダクトマーケティングマネージャの朝倉英夫氏
導入されている新技術の傾向。日本企業は全体的に低い傾向となっている

 株式会社シマンテックは3月16日、データセンターに関する調査レポート「2010 State of the Data Center Study(2010年版データセンターレポート)」を発表した。米国の調査会社Applied Researchが2009年11月に全世界1780社を対象に実施。そのうち、日本企業は150社。

 同調査レポートは、今回で3回目となるもの。調査対象の企業は、従業員数別に、「大企業(1000~1999人)」「準大手大企業(200~9999人)」「大手大企業(10000人以上)」に区別して実施。なお、日本の企業はすべてが大手大企業となっている。

 同社プロダクトマーケティング部プロダクトマーケティングマネージャの朝倉英夫氏は、「調査結果を見ると、新しい技術の施行・導入は準大手大企業が先行していた。日本企業だけを見ると、グローバルと比べて新しい技術の導入が全体的に低いという結果が出ている。特に低かったのがPaaS」と、新技術に対して日本企業が慎重な姿勢をとっている傾向が調査結果に表れた。

 とはいえ、サーバー仮想化などデータセンター効率化で避けては通れない技術は、グローバルと同様に7割以上の企業で導入しているという結果となった。今回の調査より追加されたクラウドコンピューティングについては、プライベートクラウドへの関心は高いものの、パブリッククラウドの利用に関しては、日本・グローバルともに慎重な様子がうかがえた。

 2010年に重点的に取り組む事項を見てみると、日本・グローバルともにセキュリティがトップとなった。「データセンター全体でのセキュリティ強化が課題となっており、データそのものの暗号化や情報漏えい対策などが重要な課題となっているようだ」(朝倉氏)と紹介。そのほか、バックアップとリカバリ、継続的なデータ保護、ストレージリソース管理、サーバー仮想化、データアーカイビング、などが上位に挙げられた。

 日本とグローバルで比較してみると、日本ではデータアーカイビングを重視する傾向が強くなっている。これについて朝倉氏は、「欧米ではコンプライアンスの観点で、すでに導入されているため、日本よりも低くなっているようだ。日本では認識が高まっており、今年は本格的な導入に進むかもしれない」と、データアーカイビングが本格化するとの認識を示した。


2010年の重要な取り組み(日本)2010年の重要な取り組み(グローバル)コスト抑制のための戦略

 日本企業のコスト抑制のための戦略を、前年の調査結果と比較すると、「ベンダーを少数に統一」が15%から41%と大きく伸びている。これについて朝倉氏は、「これまではいいものを採用していた日本企業も、採用するベンダーを絞り込む流れになっているようだ。また、外に出せるものは外にという流れからアウトソーシングの利用も高くなっている」と述べた。

 クラウドコンピューティングについて見てみると、グローバルではプライベートクラウドを検討している企業が30%ともっとも多いのに対して、日本は検討中と回答する企業が32%ともっとも多くなっているように、若干遅れている印象となった。

 一方、パブリッククラウドに関しては、実装済みの企業は日本・グローバルともに少数で、慎重な様子がうかがえる。「特に日本の場合、検討していないと回答した企業が36%と3分の1以上になっているように、消極的な姿勢となっている」(朝倉氏)と、パブリッククラウドはまだ評価の段階にとどまっていることが明らかになった。


プライベートクラウドの利用・検討段階パブリッククラウドの利用・検討段階

 これらを踏まえて同社がまとめた提言は、「日本企業もグローバル企業同様に、準大手大企業を中心に、今後より新しい技術の施行や導入を積極的にすべきである」というもの。「IT予算が削減されれば、管理者の数も削減される可能性もあり、今までと同じやり方のままでは、できることは限られている」(朝倉氏)と、積極的に新技術を導入することで、大幅な効率化が可能になると指摘。具体的には、「バックアップ環境の統合やデータの重複排除による効率化、シンプロビジョニングによるストレージ環境そのものの効率化など、新しい管理手法の導入が必要」と述べた。



(福浦 一広)

2010/3/16 16:30