富士通がプライベートクラウド構築ソフト、仮想化・標準化・自動化を支援


執行役員常務ソフトウェアビジネスグループ長の山中明氏

 富士通株式会社は4月14日、プライベートクラウド構築に必要なソフト製品群を発売した。新製品4種と強化製品1種を用意し、同社の「沼津ソフトウェア開発クラウドセンター」にも適用、その実践を通じて提供する。同センターを今後はクラウド移行検証・効果検証のための拠点とするほか、専任のクラウドエキスパートを700名体制に強化し、構築支援サービスなども包括して提供していく。

 昨今、「コスト削減」と「スピードアップ」を主な目的に、サイロ化されたシステムの最適化――すなわち、プライベートクラウド化に関心が集まっている。そのために必要なのは、「ICTリソースを仮想化し、標準化した開発・実効環境の配備・運用を自動化した上で、業務サービスの一覧や運用状況を見える化すること」(執行役員常務ソフトウェアビジネスグループ長の山中明氏)で、この「仮想化」「標準化」「自動化」の3ステップを、「クラウドサービス提供」と「システムの最適化(製品・SI)」の両輪で支えるのが富士通の戦略だ。

プライベートクラウドへの期待プライベートクラウドの目指す姿

 これに基づいて今回、仮想化によるダイナミックリソース管理を実現する「ServerView Resource Orchestrator(以下、Resource Orchestrator)」、システムを自動配備する「Systemwalker Software Configuration Manager V14g(以下、Software Configuration Manager)」、システムを自動運用する「Systemwalker Runbook Automation V14g(以下、Runbook Automation)」、業務サービスを見える化(カタログ化)する「Systemwalker Service Catalog Manager V14g(以下、Service Catalog Manager)」、ならびにSOAでパブリッククラウド連携を実現する「Interstage Information Integrator(以下、Information Integrator)」の5製品を発表した。

新製品の位置付け新製品の概要

ミドルウェア事業本部長の新田将人氏

 まず、Resource Orchestratorでサーバー・ストレージ・ネットワークを仮想化(プール化)しておく。利用部門がService Catalog Managerのカタログから必要なサービスを選択すると、Software Configuration Managerが最適なシステムを配備し、Runbook Automationで自動運用が開始されるといった流れだ。

 パブリッククラウドとの連携も、Information Integratorで容易に実現。「従来、転送や異常発生時の再送、データ変換などの処理をユーザー環境ごとに構築する必要があったが、同ソフトにより、ノンプログラミングでデータ連携可能になる」(ミドルウェア事業本部長の新田将人氏)という。ここではまず「Salesforce.com」との連携から始め、順次対応を拡大する予定。

 他社にも同様の製品やサービスがあるが、「富士通の強みはSIerとしての豊富な経験。プライベートクラウドは仮想化、標準化、自動化を段階的に進めるのが現実的な方法だが、実際にそれをどう進めるかといったSIに一日の長がある」と山中氏は語る。

 例えば、Runbook Automationに運用ノウハウをテンプレート化して搭載するなど、製品にもこの強みは生かされているが、併せて各種の支援サービスも提供する方針。具体的には「現状の見える化サービス」「アプリケーション構築サービス」「プライベートクラウドインフラ導入支援サービス」「プライベートクラウドマネジメントサービス」などを用意し、専任のクラウドアーキテクト700名を新たに配備するなど体制強化も図る。

 また、新サービスの提供にあたっては、新製品を同社のソフト開発拠点「沼津ソフトウェア開発クラウドセンター」に適用し、その実践を通して提供する方針。同センターのクラウド化では、年間約7億円のコスト削減、開発環境構築のスピードアップ(6時間→10分)、約1340トンのCO2削減を見込んでおり、今後、移行検証や効果検証のための拠点として拡充する予定。「まずは2010年末までに3000VMの規模まで増やす」としている。

沼津ソフトウェア開発センターのクラウド化同センターのクラウド化で見込む効果

同センターでのデモ。51種類のサービスカタログから貸出申請し、環境が構築されるまで利用部門が必要な業務サービスを選択すると、カタログで定められた構成でシステムが構築されるシステム配備状況を表示している様子

 新製品の価格は、Resource Orchestratorが20万円(税別)から、Software Configuration Managerが10万円(同)から、Runbook Automationが15万円(同)から、Service Catalog Managerが14万5000円(同)から、Information Integratorが150万円(同)から。6月末より順次出荷を始める。



(川島 弘之)

2010/4/14 16:03